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馴染みの処があれば。

定期購読している長野県の情報誌、
Komachiの今月の特集は、松本と長野。おおきな街の
店の紹介だった。
ぱらぱら眺めていたら、古くからの店に混じって、
ずいぶんと新しい店が載っている。コロナが蔓延して
みんなが外出を控えるようになり、長野の繁華街も、
いくつか店がなくなった。飲食店を営む
友だちも口をそろえて、以前のような活気は戻ってこないと
嘆くのだった。その反面、ぽちぽち新しい店を見かけるときがあり、
ありゃ、こんなところにこんな店がと驚いている。
長野市の善光寺からほど近いところに、西鶴賀、東鶴賀という
かつて色街だった地域がある。盛りをすぎたこんにち、
昭和で時間が止まったような佇まいを見せている。
つぶれた店が並ぶなか、今でも商いをつづけている、飲み屋に
旅館にスナックなどが在る。
そこに加えて、最近になって若い子たちがポチポチ店を始めて
いるのだった。
若い子たちにしてみれば、廃れたような街並みが、
逆に新鮮なのかもしれない。
20代30代の頃は、新しい飲み屋が出来たと聞けば、いそいそと
足を運んだものだった。
蕎麦屋の昼酒を覚えた20代後半の頃などは、はしからはしまで
蕎麦屋巡りをしていた。
酒と食に欲があって徘徊していた若いときが、
もうはるか昔のことになってしまった。
コロナ禍になって飲み屋詣でが減ると、気持ちの通い合う、
大事な店にだけ足を運ぶようになった。
この先どれだけ酒が飲めるかわからぬが、飲み屋も蕎麦屋も
馴染みの処が数件あればよいのだった。
土曜日の夕方、久しぶりに近所のイタリアン、こまつやに
出かけた。
扉を開ければすぐにご主人の、元気でしたか~の声に迎えられる。
ご主人夫婦の、奥さんの実家の荒物屋を改築して開店したのが
14年前のことで、開店して間もないころから世話になっている。
ワインの品ぞろえが好く、野菜や肉がほんとに旨い。
品書きを開いたら、気に入りの宮城のジン、欅が載っていて
嬉しいことだった。ジントニックをなめながら、
見慣れた厨房の景色に、
イタリアンはここ一軒でじゅうぶんですとなるのだった。

品書きにジントニックの立夏かな。


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