見出し画像

秋酒をやりながら。

平日の午後6時になると、BSフジの植野食堂を観ている。
料理雑誌dancyuの編集長、植野広生さんが、
あちこちの飲食店を訪ねて、その店の看板メニューの
作り方を教わる番組だった。毎回旨そうな料理を作るさまを
観ながら、こちらは焼いた油揚げなんぞをつまみに、
酒を酌んでいる。
せっかく観ているのだから、まねをして、気を入れた
酒の肴を作ればいいものを、不精な身は、塩か醤油で
肉や野菜を炒めるだけで、あとはナスの塩もみでも
あれば充分の、晩酌生活なのだった。寒さが増してくれば、
鍋で一杯の夜がつづく。ひとりの鍋は具材はせいぜい
一つか二つ。
手間をかけずにすぐ飲めるのが好い。
仕事柄、仕事場に雑誌を幾種類か置いている。
dancyuも、以前定期購読をしていた。
ところが、デザートやら韓国料理やらラーメンやら、
毎回いろんな特集が載っているものの、
甘いものは食べないし、手の込んだ料理も作らない。
買ってもさらっと読むだけだった。
今は、毎年3月号の日本酒の特集と、たまに載る、
焼酎やワインの特集の時だけ買っているのだった。
この頃、パソコンを開いてdancyuのホームページを
覗いたら、大竹聡さんという作家が、
東京界隈の飲み屋を紹介する記事を連載していた。
いろんな店を巡って飲み食いする様子が、
まことに楽しそうに描かれていて、読んでいると、
もう仕事やめて飲むかの気分になっていけない。
著書も読んでみたいと思い、先日、
「ずぶ六の四季」という随筆を取り寄せた。
自らの酒にまつわる様子を綴った内容で、
読んでいくと、まあよく飲むかただった。
酒ならなんでもござれなかたで、日本酒は本醸造で、
焼酎は宝で、ウイスキーなら角と、手ごろな値段の
銘柄を好んで飲んでいる。
自宅はむろんのこと、馬券握って競馬場に
いるときも、旅先や、沖釣り船に乗ったときも、
ずっと飲んでいる。まだ子供が
よちよち歩きだった頃、公園で遊ぶ姿を見ながら
飲んでいたというからあきれた。
痛風で、もがき苦しんでいても飲み、
ひどい二日酔いに苦しんでいるときも飲み、
お前はバカかと自問しながらはしご酒をしていると
いう。そしてよく食べる。
あんかけ焼きそばシュウマイもつ焼き刺身焼き魚に、果ては
クマの肉まで、なんでもつまみにしてぐいぐい飲む。
正月には、雑煮を食べながら飲むといい、
餅、つまみにするか?とまたあきれた。
同世代のかただけど、このかたの酒に比べると、
我が身の酒などまだかわいいもんだと、つくづく
恐れ入ったのだった。

新酒酌むその勢いのはしごかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?