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気苦労を思うと。

日曜日、屋根をたたく雨音で目が覚めた。
梅雨どきというのにさっぱり降らず、六月の下旬を
迎えて、ようやくそれらしい天気になったのだった。
客商売をしているから、天気によってその日の客足が
変わってくる。お客はお年寄りが多いから、猛暑や
大雪、大雨の日は、ぱたっと途絶えてしまう。
今日は一日この降りというから、仕事をそこそこ終いに
して、馴染みの蕎麦屋で昼酒でもと思っていたら、
夕方四時にうかがいますと、近所のおばあさんから電話が
きた。
早々に当てが外れてしまったのだった。
冷蔵庫の中が空っぽだったので、仕事を終えてから、
スーパーのツルヤへ出かけた。
ふだんの食材は、近所のセブンイレブンと、毎週
木曜日にやってくる、生活協同組合で補っている。
セブンイレブンは、中学校からの友だちが営んでいて、
ほぼ毎日世話になっている。働いているスタッフも感じが
良くて、ありがたいことだった。
生活協同組合の配達員のお兄さんは、職場の移動があって、
ときどき顔触れが変わる。前任のお兄さんは、元気が良くて
いつも明るく挨拶をしながらやって来た。
代わって来るようになったかたは、やや中年の男性で、
声も小さく、いつも憂いを帯びたお顔でやって来る。
会うたびに、心配事があるんですかと気になってしまうの
だった。スーパーで買い物をするのはときどきのことで、
これまで会計のことなど気にも留めたことがなかった。
ところがこの頃は、思ったより支払いが多かったな
と思うときがある。
食材がなんでもかんでも値上がりしていると、テレビの
ニュースで言っていた。気楽な男やもめでも
気になるのだから、育ち盛りの子供を抱えたご家庭の
親御さんはさぞかし大変なことだった。
おまけにここへきて、米が不足しているというのだった。
昨年の猛暑の影響や、観光客の増加の影響で、
需要に供給が追いつかないという。
テレビのニュースで、スーパーのガラガラの米売り場の
様子が流れ、米の値段が高騰しているという。
インタビューを受けていた寿司屋のご主人は、五十キロで
二千円の値上がりといい、飲食店のかたがたは、コロナ禍
以来、材料や光熱費の値上げに、さらに米の値上げと、
気持ちの休まる日がないことだった。
馴染みの店のご主人がたが、愁いを帯びた顔にならぬよう
願ってしまうのだった。

値上がりの知らせばかりや梅雨に入る。





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