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お蔵さんと飲み会を。

毎日、日本酒を酌んでいる。
ここ最近、つくづくありがたいと思うのは、
地元長野の銘柄が、ほんとに
美味しくなったことだった。
世代が変わり、お蔵の跡取りさんや若いかたが
造りに携わるようになってから、
目を見張るように味わいが良くなっている。
日本酒に溺れるきっかけになったのは、
35年前に、友だち宅で供された、
宮城の銘柄を利いたことだった。
それから旨い味を求めて、手あたり次第に
利いてみたものの、
残念ながら、当時、名を馳せていた
県外の銘柄に比べると、長野の酒はあか抜けない
味だった。
ひと口飲んで、金返せの気分になった
銘柄もあって、
その頃は、もっぱら石川や新潟、福島に
宮城あたりの銘柄ばかり酌んでいた。
ところが何年か経ったのち、
おっ、これ旨いという銘柄がぽつぽつ出始めて、
長野県の東西南北、今では両手で数えられないほど、
旨い味が増えている。
酒徒として、長野に生まれて幸せと、
こんにちほど思えるときはないのだった。
中には、いまだ昔と変わらぬ味を
醸し続けるお蔵もあって、飲む機会があると、
昔の長野って、みんなこんな味だったと、
妙に懐かしい気分になってしまう。
長らく酒を飲んでいて、ありがたいのは、
馴染みの酒屋や飲み屋の計らいで、お蔵さんに
会えることだった。
ふだん知ることのない,造りの苦労話を聞きながら
杯を交わしては、丁寧に飲まなきゃいけないと
思いながら、酩酊しては記憶をなくしている。
週末の土曜日、仕事を早く終いにして、
新幹線で上田へ向かった。
馴染みの飲み屋のご主人がたと、小布施町で豊賀を醸す
高澤さんご夫妻と、地元上田で、登水を醸す
和田さんと宴があったのだった。
駅前の、和田さん贔屓の幸村で、
ひさしぶりの乾杯を交わした。
ビールでのどを湿らせたら、
和田さんの登水を皮切りに、長野の銘柄を利いていく。
旨い肴をつまみに、お蔵さんの裏話なんぞを聞きながら、
好い味に酔っぱらった。
この冬はことさら寒さがきびしく、造りに関わる
かたがたもつらい作業の日々だったとうかがえる。
その甲斐あって、この夜酌んだ銘柄は、
どれも素敵な味だった。
幸村のアルバイトの学生さんが、
長野の酒を飲んで、日本酒に目覚めましたと
言っていた。
そうだろそうだろ、長野の酒は好いでしょ。
若者の台詞に、こちらも嬉しくなったのだった。

立夏来る酔いの後半記憶なし。

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