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上田のお蔵さんと。

休日になると、たいていどこぞの蕎麦屋で
昼酒を酌んでいる。
上田の町が好きでときどき出かけている。
かつて上田の原町に、太平庵という蕎麦屋が在った。
酒肴の品ぞろえが好く、ことに自家製のおぼろ豆腐が
旨くて、冷や酒を酌みながらつまんでいた。
好んで足を運んでいたのに、閉店して、店の在った
場所もすっかり更地になってしまい、さみしい
ことだった。
その太平庵で、地元の真田六文銭という酒を、
初めて飲んだことがあった。
この酒が見事に不味かったのだった。とても一合
飲み干せないとあきらめて、別の酒を注文した。
上田市の真田町に長野の地酒だけを扱う宮島酒店が在る。
日本酒愛にあふれたご主人が営む店で、誠実なお人柄は、
お蔵さんや飲食店さんや個人のお客さんから深い信頼を
得ている。春のはじめ、宮島さんのブログを拝見したら、
真田六文銭を醸す、山三酒造と取り引きを始めたと
載っていて驚いた。
ブログによると、長らく休業していたお蔵を、
異業種の会社が買い取って、新たな体制で造りを
始めたという。
宮島さんが扱うなら味に間違いはない。
上田にはすでに、互、亀齢、登水、瀧澤、月吉野と、
銘酒の誉れ高い銘柄が存在している。
ここに真田六文銭が加わって、、かつて上田の地を
治めていた真田家の家紋の六文銭よろしく、
六蔵揃い踏みとなったのだった。
7月最初の土曜日、宮島さんを含む上田の日本酒愛好家
のかたたちが、駅前のホテルで酒の会を開いてくれた。
六つのお蔵さんが勢ぞろいして、お話をうかがいながら
それぞれの味を楽しんだ。
ずいぶん久しぶりに利いた真田六文銭は、かつての味とは
うらはらに、旨い味わいだった。
宮島さん曰く、これから益々、信州上田の地酒はおもしろく
なるという。
ほんとにねえ。
日本酒を飲み始めて35年になるから、上田の酒の昔の味も
知っている。どのお蔵さんも上等の味を醸すようになり、
上田の酒に外れなしなのだった。
お蔵さんの努力と、宮島酒店さんや、地元の愛好家の
みなさんの支えがあってこその味わいと、
しみじみ感じ入ったことだった。
宴の前に利き酒大会が行われた。六つのうち正解したのは
ふたつだけ。さんざん杯を重ねているのに、味覚は
さっぱり疎いままだった。

夏夕べ上田の酒に惚れぼれと。





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