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上田わっしょいへ。

七月さいごの土曜日、新幹線に乗って上田へ出かけた。
夏祭りの上田わっしょいの日なのだった。薄暮どきの
駅を出ると、そろいの法被のかたたちが、ぞろぞろ通りを
上がっていく。同じ職場や地区のかたたちが集まって、市街地を
わっしょいわっしょいの音頭に合わせて踊り歩くのだった。
踊り手と見物客で、すでに通りはたくさんの人があふれている。
踊りを見物する前に、馴染みの寿司屋の萬寿に立ち寄ったら、
入り口に、本日は予約のお客様で満席ですと貼り紙があった。
祭りの夜はどこの飲み屋も混んでいる。
ほっ、あらかじめ予約をしておいて正解だったと暖簾をくぐった。
店内には先客がカウンターにおじさん二人と、後ろのテーブル席に
おじいさんが六人とおばあさんが二人。四人掛けのテーブルを
くっつけて盛り上がっている。旦那さんと若旦那さんが
せっせと寿司を握りながら、いつもの笑顔で迎えてくれた。
サッポロの黒ラベルで乾いた喉を潤せば、この日のお通しは、
とうもろこしのジュレで、さっぱりと冷たい甘みが美味しい。
ビールを飲み干して、日本酒はなにがあるかと冷蔵庫を覗いたら、
東飯田酒造の弦戯が有った。おっ、珍しい。
長野市内のお蔵さんで、若い兄妹が仕込む味わいは、ここ最近
評判が上がっているのだった。生牡蠣と鰹の炙りをつまみながら、
柔らかな旨味を味わった。杯をかさねながら、後ろの八人の会話を
耳にすれば、皆さんかつて学校の教師をしていたとわかる。
勤めていた学校の思い出話や、今の教育現場のこと、
今でも交流がある教え子の話など、賑やかに話されている。
見知らぬかたの和やかな話を聞きながら酌む酒も、また
好いものだった。
新子と小肌と鯵の握りで杯をかさね店を出れば、通りはまさに祭りの
真っ盛り。列を連ねる踊り手たちの熱気が伝わってくる。
ときどきおじゃましているフレンチのル・カドルのご夫婦が
店の駐車場で、アルコールとつまみを販売していた。
白ワインをもらおうと寄って行ったら、日頃世話になっている、
蕎麦屋の東都庵の若女将夫婦に遭遇した。
気配りの良い若女将にワインを奢ってもらい、恐縮しながら、
また伺いますと挨拶をして別れた。
ワインを飲みながら、楽しそうな踊りのかたがたを眺め、
駅へと戻ったのだった。
次週には、千曲川河川敷の花火大会がある。夏は上田詣でに
気もそぞろになっている。

夏祭り旬の新子を勧められ。







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