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出直し金読本011 時間を味方に

 「出直し金読本」は、金をヘッジ資産(=将来の万一に備える保険的な役割をもつ資産)と考える立場に立っています。ですからここで想定しているのは現物取引に限り、先物取引は扱いません。なぜなら先物取引は一般個人向けとは言い難いからです。

 先物市場は、将来の価格変動リスクをヘッジする(保険をかける)大切な役割を担っています。とはいえ、先物取引というものは、(金を売買するものではなく)将来の金価格を売買するものであり、決済期限のある取引です。投機的な色彩が強いことも否めず、また業者の強引ともいえる営業手法にも疑問があります。

 金価格は日々刻々と上がったり下がったりします。金と云えども価格変動リスクと無縁ではありません。投機マネーの動きによって急騰急落する局面も見られますし、ドル円為替相場の影響もストレートに受けます。そのため決済期限のある先物取引では、価格が予想に反して大きな動きをした場合に、安穏としていられなくなります。

 そうなると本来味方となるべきはずの時間が敵に回ってしまいます。それでは安心のために保有しているはずの金が、不安の種になってしまいます。

 先物の短期売買で利鞘を稼ぐ行為は、それを生業(なりわい)とするプロたちに任せておけばよろしい。あるいは豊かな経験を持つ個人向けです。不用意に足を踏み入れると大きな損失を被りかねませんから、一般個人は敬して遠ざけておくのが賢明というものです。

 対する金現物は、いつ買っても、いつ売っても、まったくもって自由です。金現物を保有している人に「決済期限」なるものが迫ってくることはありません。将来の年金の足しに保有しているのであれば、仮に価格が急落しようと急騰しようと、高みの見物でやり過ごしていれば済みます。

 金現物は価値が破綻して紙くずになることはありませんから、将来必要になる時まで気長に保管しておけば良いだけのことです。20年、30年保有しても、税金がかかることもありません。

 一般個人にとっては、時間を味方につけることが何より大切です。金投資は、誰かと勝ち負けを競う類いのものではありません。時間と争うものでもありません。これから金を買ってみようかと思う人は、このことをけっして忘れないようにしてください。


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