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出直し金読本002 金は太陽だった

 考古学の発掘調査によれば、これまでに発掘された世界最古の金装飾品は、通説となっている古代エジプト文明よりも遥か昔、紀元前5000年紀に黒海東岸(現在のブルガリア共和国)辺りで栄えたとされる古代トラキア文明の「ヴァルナ集団墓地遺跡」から出土したものです。そのヴァルナ近郊からは塩の生産設備も発掘されていることから、古代トラキアの金装飾品は、塩の交易で得た富によってもたらされたものだったのかも知れません。

 いずれにしても人類と金との付き合いは7000年にも及ぶことになります。当時の人々の考え方について、21世紀の住人である私たちにはもはや知る由もありませんが、しかし古代文明の遺跡から発掘された金装飾品の数々から、金に対する人類の愛着がいかに深いものであったか、おぼろげながら感じ取ることはできます。

 金は、自然環境下では錆びることもなければ、腐ることもありません。百年の時を経ても、千年の時を経ても、そのまばゆい輝きを失うことはありません。そうした金の物質的な特性が、不死だとか、不滅だとか、あるいは永遠に対する憧れの気持ちを強く喚起したであろうことは間違いないところでしょう。

 そもそも金の元素記号である 「AU」 は、ラテン語の 「AURUM」に由来し、語源的には「光輝くもの」とか「(暁の)輝き」を指しています。金の輝きは、おそらく太陽が放つ光と強く結びついていたに違いありません。

 ですから金を身にまとうことは、強大な生命力を秘めた太陽の化身となることだった。そう考えれば、人類史に最初に登場する金が装飾品であったことも頷けます。

 金の資産価値とか通貨価値について考える際、こうした人類の心の奥底に潜んでいるであろうプリミティブな感情に思いを馳せることが、まずは最初の一歩ではないかと思われます。

 そうでなければ、現代の女性たちが美しく輝くゴールドジュエリーを求める気持ちも、世界中の中央銀行が金を保有し続けている理由も、とうてい理解することは出来ません。金とは対極の存在である仮想通貨(暗号通貨)の愛好家(ビットコイナー)たちが、金に熱い視線を向ける理由も理解することは出来ないでしょう。

 金には理屈を超えた不思議な魅力がある。と、ひとまず理解しておくと良いかも知れません。

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