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出直し金読本006 金に利息はつかない

 世の中には利子とか利息と呼ばれるものがあります。利子あるいは利息は、元金が産み出す子供のようなもので、こういうものが存在しているということは、「未来は現在よりも価値がある」あるいは「未来は現在よりも進化あるいは発展している」と、人類が考えてきた証しと云っても良さそうです。

 云い方を変えます。「時には富をもたらすチカラがある」という信仰があるからこそ、利子や利息が生まれたはずです。もしも「時には富を奪うチカラがある」という信仰が世界に蔓延したとしたら、利子や利息は死に絶える運命を辿ることになりそうです。

 ここまではあくまでも仮定の話です。ただし、このような観点で利子や利息を眺めてみると、一部先進国の中央銀行がマイナス金利を採用したことは、金融当局やマーケット関係者が想像している以上に、計り知れない衝撃を世の中に与えているような気がしてきます。

 現在はわずかなものとなっていますが、銀行預金には利子が付きます。株式には配当という名の利息がきます。いわゆる金融商品には、おおむね利子なり利息が付くものと相場が決まっています。それにもかかわらず銀行預金に利子が付かず、株式に配当がなければ、その存在価値の半分は失われるでしょう。しかも社会のなかに張り巡らされた血管をお金が回らなくなり、社会生活や経済活動に大きな支障が生まれる可能性さえあります。

 ところがここに利子とか利息とは無縁のお金がひとつあります。もともとお金であり、現在は通貨価値の拠り所とも見なされているゴールド(金)です。ゴールド(金)は社会のなかをぐるぐる動き回って利子や利息を生み出すことがありません。

 社会や経済のなかで流通するお金とは異質なものですから、ゴールド(金)は本来、投資とか運用から遠く離れた存在です。ある意味、お金としては基本性能に欠陥を持つ歪んだ存在と云うことも出来るかも知れません。しかし、だからこそ金は信用とも信用リスクとも無縁の資産と云うこともできます。

 最後に今回も仮想通貨(暗号通貨)が登場します。

 ビットコイナー(仮想通貨愛好家)の間では、仮想通貨(暗号通貨)をデジタルゴールドと呼ぶ向きがあります。その背景に、そもそもビットコインが現物ゴールドの持つ特性を模倣して作られたという見立てがあるためようですが、仮想通貨(暗号通貨)も、現物ゴールドと同様、利子とか利息とは無縁です。ここでも両者の特性は似ています。ただし、もちろん両者に違いもありますから、そこは間違わないようにしてください。いつかガッツリ比較してみたいと思います。


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