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よくばり近畿の旅②奈良・長谷寺と室生寺

天候に左右されるのは、交通と気分。
この旅の2日目は雨。

朝食を食べながら確認すると、交通に乱れは無いようです。

雨は憂鬱ですね。テンションが上がらずに、「今日は楽しみきれないかな。」という気持ちがよぎります。

地図を見ますと奈良県に隣接する府県が4つありまして、北は京都、西は大阪、でどちらもサクッと往来できる距離です。
車でも電車でも、1時間かからずに通行できるんですね。平地や低山のエリアでアクセスしやすく、奈良・大阪・京都の3都市地域を中心としてこの国が発展していったわけです。

残された隣接2県はと言いますと、東側を三重、南側を和歌山と接しているわけですが、都市エリアの奈良盆地とそれぞれの県のあいだには、広大な森林山岳地帯が存在していて、その奥深くに県境も設定されています。
ようするに「通行困難だから迂回してね!」ってわけではあるんですが、このあたり一帯はまるっと「吉野熊野国立公園」に指定され、見どころ盛りだくさんエリアなんですね。

今回の旅では、この"吉野エリア"の一角にも足を踏み入れたいところです。

八木町の"ビジネス観光ホテル河合"の朝食。
おいしく、元気が出る。
町並みそのものも風情があって素敵な八木町。

まずはトーストとバナナで腹ごしらえをしまして、「大和八木」駅から近鉄線に乗り、東へ向かいます。
窓を打つ雨をちらちら様子見しつつ、電車で揺られること約15分、たどり着くのが「長谷寺はせでら」駅です。

雨はやや強まってきましたが、これはこれで雰囲気あって良いかも。
と、はやくも"雨も有り"寄りに傾きはじめたくらいに、高めてくれる光景です。

親切だけど、華美ではない。
という"ちょうど良い歓迎感"が迎えてくれる気がします。

「長谷寺」駅前のようす。
ここから長谷寺までは歩いて20分ほど。

このあたりの地域は「初瀬はせ」といい、「泊瀬」とも書いたそうですが、長い谷がつづくこの地形が転じて"長谷"と書いて"はせ"と読むようになった、という説もあるようです。

車での対面通行はやや困難かな、という門前町の通りをてくてくと歩いていきますと、表れる仁王門。
仁王像に挟まれた奥には階段と登廊のぼりろうがつづき、その光景がこころを昂ぶらせます。

そう、門は昂揚感を呼ぶんです。

門前町を抜けた参道。奥に仁王門が控える。
昂ぶるこころで、門をくぐる。

「花の御寺」とも呼ばれるこの長谷寺の敷地内では美しく配置されたお花を楽しめます。
この季節は牡丹、シャクナゲ、がきれいで、階段をのぼる足をとめて、しばし観賞。じっくり味わう春の花々。

なんですが、この登廊に踏み入ったあたりで雨が勢いを増してどしゃ降り模様となりまして、はからずも花々の可憐さとは別に、雨にも負けない力強さを目撃することになりました。
ぼくはというと、登廊の庇に守られびしょ濡れを免れたもので、「風情があって、雨降りも悪くないな」と感じる余裕ぷりです。
"雨は憂鬱"というのは杞憂でした。

登廊の両脇を飾る牡丹と、石楠花しゃくなげ

階段をのぼりきると、視界にあらわれるのは懸造かけづくりの本堂。清水の舞台みたいな、崖に張り出す形の造営方法ですね。国宝です。

雨に打たれる長谷寺本堂の舞台。

雨音激しく本堂の屋根や舞台を打ち、水煙に浮かぶ五重塔や山々。
ここまでけっこうな段数をのぼってきた足を休めつつ、壮観な景色を眺めます。

美しい。

雨だし、早朝だし、ぼくの他にひとがほとんど居なかったのも、特別感があって良いです。
雨ぎらいのぼくが、「雨に感謝!」レベルで情景を楽しんでいましたので、ひとの好き嫌い感情なんてアテにならないな。

この時点ですでに相当な満足感でしたが、実は本当に圧巻だったのはここからでした。
本堂に入ると、正面奥には本尊の十一面観世音菩薩像がそびえ立ち、その威容に圧倒されるばかり。

像高10m以上にもなるこの観音さまは、"木造"の仏像では日本最大となるそうです。
通常の拝観では上半身をのぞかせているのみで、やや遠めから「大きいなー。」と感じる形なのですが、特別拝観の期間には、地下というか床下というか、に入りこの立像の足元まで近づくことができます。

しかも、触れます。
べたべたベタベタ、触りまくってきました。

口を閉じるのを忘れたまま、しばらく見上げますが、とにかく"すげぇ存在感"です。
右手に錫杖を持つのが、『長谷寺式』だそうで、室町時代の1538年造立です。

ひととおり拝み終えて口を閉じた頃には、小腹が空いてきましたので、境内のカフェにてぜんざいをいただきます。

窓からの眺めも良いお店でした。

OPEN時刻とほぼ同時に入店して、ぜんざいをいただく。

さて、"初瀬"の地を後にして、つぎに目指すのは"室生むろう"。
この室生を含む"宇陀エリア"には「龍神伝説」が伝わってまして、各地に"龍"の字を含むスポットがあります。
多くの川が入り組む山あいのこの地で、かつてはその川が龍のように荒ぶって氾濫することも多かったのだと思われます。

ふたたび近鉄大阪線に乗り、約10分。
「室生口大野」駅で降ります。
目的の"室生寺"までは、さらにバスで約15分。
室生川沿いをのぼっていきます。
川辺りでは藤が咲き、緑と紫の配色が見事な景色が続いていました。

藤と緑。
きれいだけど、藤は木々を枯らすので、怖いんですよね。
室生寺。「女人高野」の碑とともに、
朱塗り欄干の太鼓橋が迎えてくれます。

816年に空海が開いた高野山は女人禁制が長く続き、1872(明治5)年に明治政府によって全国の女人結界の廃止が発布されるまで女性の参詣は禁じられていました。
その1000年余りの間、女性はというと限られた寺院のみの参拝が許されていたわけですが、そのうちのひとつがこの室生寺だそうです。
"高野"なので真言宗の場合のおはなしですが。

女性差別の甚だしいこの"結界"ですが、当時の山道の整備状況や治安を考えると、安全の面からは合理性もあったかもしれません。

こけら葺き屋根の金堂。

雨に濡れ、艶光る石楠花に囲われた、建物たち。灌頂かんじょう堂、金堂、五重塔、どれも国宝なんですね。
積み重ねた歴史を薄ピンクの花たちが彩り、より神秘性を増した様子に演出されています。
いやー、良い季節に訪れました。
"シャクナゲ"とても好き。

都市部の寺院と違って、山中に展開されたこの室生寺の伽藍は、各建物が横並びになるようなことは無く、石階段で各エリアをつなぐような、縦の配置になっています。
美しい五重塔のさらに奥の、うねうねと続く階段の先に奥之院が控えます。

しかし心惹かれつつも、奥之院探索はまたの機会に。
バスの本数も限られてますので、室生寺をあとにして、つぎの目的地を目指します。

本堂(灌頂堂)と五重塔。
五重塔は法隆寺に次ぐ古さだそうです。

戻りのバスに揺られながら、このあとの行程を考えます。

電車やバスだと、どうしても時間的な制約が多く、僕みたいに複数のスポットをたくさん回りまくりたい人間には合わないよなぁ。

今回行きたかった"吉野エリア"は室生より南、さらに山奥を目指すことになりますので、なおさら。

ということは、、、、、車だな!!

こんな風に考えたぼくは、レンタカーを予約し、車で"吉野"を目指すことにしました。
その後の京都行きを見据えて、アクセスしやすい奈良駅ちかくの店舗です。

はじめての奈良ドライブを楽しみに、近鉄電車からJR桜井線(万葉まほろば線)に乗り換え北上します。


丸山直己

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