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<視察記録①>Amstelveen College

こんにちは!さて、11月の下旬に行ったオランダの視察ツアーを振り返ります。1つ目の学校は、Amstelveenにある中高一貫校です。

カラフルな建物はまさに"Dutch Design"

1日目の午後から訪れたこの学校はAmsteldamにも近いAmstelveenという地域にあります。オランダでAmstelveenと言えば、日本人の駐在家庭が多い地域でも知られていますが、ここに勤める教職員によると、この地域は比較的裕福な家庭が多いということでした。

学校に着いた時、参加者が声を合わせて言った一言、それは、「かわいい!」でした。そう、この学校の外観はとても可愛く、カラフルです!毎日足を運ぶ学校は「カラフルで明るいところ」だと生徒や教職員に思ってもらうことはとても大切なことなんだな〜。と、オランダに来てから学校という場所のデザイン性の高さと重要性を実感しています。

晴れた日の校舎の外観

外観だけじゃない、カラフルな職員室と校内!

外観も素敵なこの学校ですが、入ってみるとカラフルなのは外観だけではないということに気付かされます。

廊下とロッカー: 参加者提供
休憩時間に過ごすホール: 参加者提供
ジェンダーニュートラルトイレ: 参加者提供
教室前: 参加者提供
とある教室 :参加者提供

もちろんこれには「学校」という役割がその国や社会にとって異なるというという理由もあるでしょう。日本においての学校とは、災害時に人々が集まるところとしての役割も大きく、デザイン性だけを重視できません。一方でオランダにおける学校は日本のような役割をほとんど担っていません。地震もほとんどないオランダにとって、建物を建てる時の基準は日本ほど厳しくないという点も忘れてはいけません。

職員室(休憩ルーム)の心地よさと「職員が全員集まる場所ではない」働き方の違い

最初に案内された職員室(休憩ルーム)を見て、多くの参加者が驚きました。そこにはカラフルかつ、カフェのようなテーブルやソファーがあり、とても居心地が良さそうな場所なのです。

職員休憩所: 参加者提供

この学校には200名以上の教職員が在籍していますが、職員室(休憩ルーム)には多く見積もっても50名くらいしか座る場所がありません。それはつまり、職員全員が集まるような会議が行われることがないことを指します。もちろん、本当に教職員全員が集まる必要がある場合は、生徒が昼食時や空きコマなどに利用するカフェテリアを使うことができます。

休み時間には生徒で溢れる

要するに、教職員が集まって会議をする必要性が重視されていないということです。この学校に限らず「教職員全員で会議をする時はどうするのですか?」と聞けば、まず「そもそも、何故教職員全員が集まる必要があるのですか?」と聞き返されます。「オンラインではダメなんですか?」と。

オランダはワークシェアリングも盛んで、フルタイム(月〜金出勤)で教師をしている人はそこまで多くないと言われています。…ということは、そもそも「全員が集まる」ということ自体不可能なことも多いのです。そしてそうなると「全員、身体的に集まらないといけないの?」という疑問が生まれてきます。目的を果たすためなら、オンラインでも構わない。というのが教職員の考え方なのかもしれません。

1人1台のラップトップ、WiFiは当たり前、ICTコーディネーター常駐も当たり前

中高一貫校に限らず、オランダの学校でWiFiが飛んでいない学校などほとんどありません。私が訪れたこれまでの学校のWiFi普及率は100%で、中高一貫校に限っては、生徒たちは自分のラップトップを所有し、授業中はそこにあるデータベースにアクセスしたり、課されたオンラインのクイズを受けたりしています。

教科指導教員も学校からラップトップとアカウントを貸与されたり、自分のラップトップを学校のデータベースにアクセス可能にするなどして対応しています。

冒頭でも書いた通り、この地域は比較的裕福な家庭が多く存在するエリアのため、中学校入学時にラップトップを購入することが難しいという家庭は少ないそうです。一方で、ラップトップの購入が難しい家庭に対しては購入のためのサポートもあります。自治体と学校がタッグを組んで、子どもたちの学びに必要な支援を行っていると聞きました。学校推奨のラップトップは存在しますが、原則的にどのブランドのラップトップを購入するかは家庭の判断です。CPUの性能など、どの程度のスペックを備えたラップトップの購入が必要かは明示されるので、おじいちゃんから引き継いだおんぼろのラップトップを使うことはできません。笑
学校から必要なデータを受け取り、学習するためには適切な性能を維持していることが求められます。

教科指導教員はICTのプロではないため、オランダの中高一貫校には必ずと言っていいほどICTコーディネーターが常駐しています。それも1名ではなく数名いるのが一般的です。各クラスでオンラインクイズなどを受験するにあたってエラーが出たり、テクニカルプロブレムが発生した場合、生徒だけでなく教師もICTコーディネーターのところへ行くことができます。教科指導教員はあくまで教科指導に集中できるためのシステムがあるのです。

ICTコーディネーターがトラブルシューティングを行う様子

学びの責任は「生徒半分、先生半分」

教室で学ぶ様子を見ていて思うのは、「学ぶかどうかは生徒自身次第」という少しドライな考え方でした。特に教科指導を行う教員からはラップトップを開いている生徒たち一人ひとりが何をしているかは見えません。

実はこの視察の前に、学校を2日連続で見学していた私は、教室の後方から合計10以上の授業をしました。そこで見えてきたのは「学びの責任にはバランスが必要だ」ということです。教室を見渡していると、50分間終始アディダスの靴を探している生徒もいます。笑 教師が近づいてくると、サッとタブを変えて、まさに課題をやっているかのように装うのです。笑
「こういった生徒はどこの国にでもいるんだな〜」と学力が高いと言われるクラスの授業を見て少し安心しましたが、実のところ教員は警察ではありません。そして、教員にその全てを100%監視する必要もないことだと思います。

ICTが教育環境で当たり前となった今、生徒ひとりひとりに求められるのは"より強い自制心"です。そして、その自制心は言われることだけを忠実にやり続けてきた生徒にとって「履き違えた自由」にもなり得るということを感じます。要するに、抑制されすぎている生徒は授業でその自由を違った方向に爆発させることになるということかもしれません。

一方で、その責任は生徒だけにあるのではなく、SNSなどの登場で生徒たちを取り巻く環境が変化する中で、教師がどのように教授法を変化させ、生徒にとって魅力的な授業を作るかどうかという力量にもかかってくるでしょう。私たちが見学した授業を行う教科指導教員たちは、何とか工夫を凝らしていましたが、もちろん全員が満足するような授業を行うことはいつも可能だとは限りません。そして、その責任を教師だけが担うことは不可能だとも感じます。

自分とは誰なのか、どこへ向かうのか

教科指導の授業以外に今回は中学1年生のHRクラスの授業にも少し入らせてもらいました。とは言っても、オランダのHRは1週間で見ても1〜3回しか行われません。毎日担任に会うこともなければ、朝礼や終礼も特になく、「○年△組で団結して学校行事を…」と言えるくらいクラス単位で時間を過ごしていない学校がほとんどだと聞きます。よって、全校生徒が集まって同時に行う学校行事などもほとんどないと教職員や生徒たちは言います。

この学校では担任は「メンター」と呼ばれ、日本の中高の担任のようにHRクラスを持っています。LRHでは主に、授業計画の話や、クラス単位でのイベントなどについて話し合ったりするようです。私たちが訪れたこの時間はちょうど12月に行われる三者面談(担任、生徒、保護者)で生徒が発表するプレゼンテーションの話から始まりました。生徒たちは、学校生活についてのプレゼンをそれぞれ作り始めていて締め切りの確認などを行っていました。生徒が保護者に話す内容としては、現在どんな授業を受けているかや学問として興味があること、今後はどのようにコース選択があると理解していて、今現在の自分はどういった進路計画を検討しているか…など、今の自分とこれからの自分について話すのだと理解できました。

また、12月に控えているシンタクラースパーティーをどうするかということについても担任を含めクラスで話し合っていました。私の記憶が正しければ、クラスでお菓子を食べながら映画を観ることに決定していたように思います。

個人的には生徒自身が「今の自分」を捉えるために自ら担任と保護者に向けてプレゼンを作っているのが興味深く、それぞれの生徒が自分の好きなデザインを使って「自分らしさ」を表現しているのも面白かったです。また、あくまで生徒発信で学校生活を振り返るよう成果物を用意するのは良いなと思いました。

だんだん大人に近づく中高一貫校

オランダの中高一貫校での過ごし方は、どちらかというと日本の大学生にも近く、自分のスケジュールを確認して自分の学びに責任を持つという練習をしているようにも見えます。もちろん、全ての生徒がこのシステムについて行けているとは言い難いようにも見えますが、初等教育での過ごし方とは明らかに違い「誰かのせいにしていられない」というような雰囲気を感じます。

そういった意味で、オランダの子どもたちは「自分の学びに責任を持つ」ということを中学生から少しずつ練習しているようにも見えました。これが高校生にもなるともっと状況がシビアになっていくようにも見えますが、それもまた生徒の発達状況や、どれくらい内面が成熟しているかにもよるのだと思います。

この日は一通り授業を見学した後、視察を担ってくれた先生とフィードバックの時間を設けて終わりました。制度の面でまだまだ細部まで理解するのは難しいのが教育ですが、おおよその雰囲気は感じられたのではないかと思います。

参加された日本の現場で働く教職員の方々を中心に、学びが皆さんの中に落とし込まれ、日本の教育をもっと良くするためのヒントになっていたら嬉しいなと感じました!

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