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何故、私が新学期最初の授業を「自己紹介」だけに費やしてきたか

「人は好きな人の話しか聞かない」

これは、私が最後の赴任校で仲良くなった英語教師が言っていた言葉です。
この言葉を聞いた時、本当にその通りだな。と思いました。

よく考えてみれば、私たちは「自分の好きなこと」しかしません。
そこに選択肢があれば「自分がしたいこと」を最優先します。

では学校の授業はどうでしょうか。

小学校から高校まで、子ども/生徒/学生と呼ばれる人たちが、「自分の好きな教科だけ」を選ぶことはとても難しい環境にあります。

それは私が教科担当してきた授業にも言えること。

これまで、英語の必修科目や学校選択科目などを教えてきましたが、基本的には「学校が勝手に決めた先生」が私であり、その私に1年間授業を習うことは確定事項です。

そんな中で、

「人は好きな人の話しか聞かない」

ということをどのように解釈すれば良いのでしょうか。

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私は自分が教師になってからというもの、新学期最初の授業で教科書を開いたことは一度もありません。

その理由は、

「どんな人間かわからない人の授業を1年間聞く気にはならない」

ということを、学校教育を通して私自身が感じてきたからです。

新学期最初の授業では、私はいつも時間をかけて自己紹介をしてきました。
プロジェクターがある場合は、自己紹介スライドを作ります。

・どこで生まれたか
・小学校時代何に興味があったか
・英語との出会い
・中学校の時の話
・高校の時の話
・高校を辞めたこと
・どんな気持ちで生きていたか
・大学受験と大学生活のこと
・アメリカに1年間留学したこと
・就職活動をほとんどしなかったこと
・フリーターで大学を卒業したこと
・起業しようとしていたこと
・教師になろうと思ったきっかけ
・教師という仕事が大好きな理由

こういったことについて、話をします。

私の記憶に間違いがなければ、この「自己紹介」の時間中に居眠りをした生徒は教員生活の中で1人もいませんでした。
もちろん、新学期最初の授業は緊張感もあるからだと思います。

しかし、その理由の一つには、私自身が「私のことを知って欲しい」と熱を帯びた状態で話をしてきたことがあるかもしれません。
もしくは、関西人特有の「ネタ」的にいろんな話をしてきたかもしれません。笑

出来るだけ教室の空気を温め、
「これから一緒に授業を作っていこう!」
と話をします。

授業を作るのは「私だけ」の仕事ではなく、主役はあくまで「私たち」であることを伝えます。一つのクラスに居合わせた私たちはチームなのです。

生徒たちは目の前の大人が誰なのか、どんな人間なのかを知ることで、今後どうやってこの人と関わっていこうか。と考えています。

だから、私は思う存分自分の話をします。
私に関する無数の情報の中にこそ、
「あ、この先生とならやっていけそう」
と思える何かが転がっていると信じて。

そしてその小さな「好意」や「共通点」をきちんと生徒が私のところに届けてくれるように。
私は自分を飾らず、両手を広げてそこにずっと立っていたいと思うのです。

もちろん、私という存在が生徒全員に好かれることはないとは思います。
それでも、それを諦めていてはいけない。と思うのです。

両手を広げて「私はずっとここにいるからいつでもおいで」と立っていること。
その安心感だけをずっと生徒たちに伝え続けていたいのです。

もちろん50分全てを自己紹介に費やす訳ではないのですが、
「質問がある人!」
と問いかけて、
「質問がなかったら授業でもするか...」
と言えば、生徒は必死に質問を考えます。笑

そうやって、生徒との関係を築いていく。
それが私のやり方でした。

生徒との対話も含めて、自己紹介はいつも30分程度はかかります。
残りの時間は、これからの授業の説明や、用意して欲しいものなどを伝え、「事務連絡」のようなものになります。

そして、その事務連絡も終われば、5分くらい早めに授業を終えることもあります。

「人は好きな人の話しか聞かない」

これをわがままだと捉えてしまう教師は意外にも多いような気がします。
でも、大人になった自分のことを考えてみてください。

テレビ番組だって、
ラジをだって、
交友関係だって、
何だって、

大人は好きなものしか選んでいないのです。

「嫌なものは選ばない」という選択肢が子どもたちにないのであれば、
せめてこちらから歩み寄り、両手を広げて立つくらいの対応は必要ではないか。今でもそんな風に思います。


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