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15歳-18歳 成人間近 / 0歳-18歳の性教育

このマガジンでは「世界一」と称されるオランダの性教育において、この国で紹介されている性教育の資料を日本語にすることで、多くの方々に性教育の大切さをお伝えしています。

シリーズ最初は、Rutgersというオランダの性教育のシンクタンクとされる団体が提供している「0歳-18歳の性教育」というパンフレットの「15歳-18歳」のページについてご紹介します。

"付き合う"という恋愛関係の練習

多くの若者はこの年齢にさしかかると"誰かと恋愛関係"になるようなことを経験します。いわゆる恋愛対象の人と"付き合う"という関係になっていきます。イチャイチャしたり、付き合ったり...破局を迎えた時には、その感情とどう向き合えば良いのかということを学びます。この年齢の若者の中にも、そういった恋愛関係を望まない人たちもいます。本当に好きな人が現れるのを待つような人もいれば、単純に誰かを好きになるという気持ちにならない人もいるのです。

この年齢に至るまでは「好き」という気持ちがあっても、その感情と行動が結びつかない場合もあったかもしれませんが、この年齢に達すると行動範囲も広がり、自分の意志に従ってしたいことが行動で示せるようになってきます。子どもに恋愛対象が現れ、その人との恋愛関係が始まった時、それを知っていてほしいと思える先に保護者がいることが理想的かもしれません。

「自分のしたいこと」と「相手のライン」

この年齢の若者は、交際相手に対して自分がしたいことを相手に伝えたり、付き合った相手とイチャイチャするにしてもどこまで相手がそれを許容してくれるのかが分からなかったり...ということがあります。こういった戸惑いなどは時にお互いの誤解を招くことにつながったり、予期せぬ性的な経験につながってしまうこともあるのです。

自分にとっても初めての経験が相手がどこまで受け止められるのか、どこまでが「してもいいこと」で、どこからが「してはいけないこと」なのか。そういったことを学ぶのが恋愛だとすれば、そこに至るまでに自分のボーダーがあることや、同じように相手にも超えてはいけないボーダーがあることを理解しておくことは大切に思えます。まさにその時に「嫌だ」と言えること、また「良いよ」と言えることも、健康的な恋愛関係を築くために、この段階までに身につけておくと良いことかもしれません。

セックスの体験

多くの若者(ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルなどLGBTQを含む)は、最初のセックスを、この年齢で体験します。それには自慰行為や、セックスに至る前戯、性器に指を入れる行為なども含まれます。17歳やそれ以上の歳を迎えた若者の約半数がこの年齢で性的関係を持つと言われています。

日本では少し早いと思われるかもしれませんが、このパンフレットでは上記のように書かれています。これらの行為もまた、年齢に応じた好奇心からと言えるかもしれません。だからこそ、この年齢に至るまでに性に関する正しい知識を身につけ、避妊具の使い方やどういった方法で望まない妊娠を避けることができるか、また、お互い同意の上で行うセックスとはどういったものかを学ぶ必要があると考えられているのかもしれません。

他者とは異なる性自認

自分自身をゲイやバイセクシャル、レズビアンなどとして認識する若者は、自分の性自認を認めるようになっていきます。ただ、他人にそういった事実を言うことに関して、時間がかかる場合もあります。大切なことは、自分の性自認をカミングアウトしようとする時に、保護者の理解やサポートがあること。また、友達の理解やサポートも大切です。自分自身の性自認をカミングアウトすることは、当事者にとってとても大変なことなのです。

日本でも昔に比べればかなりLGBTQの認識は広がっているように思いますが、世界的に見ればまだまだでしょう。しかし、自分自身が「世の中の大多数と異なる」と感じる孤独とその辛さは本人しかわかりません。だからこそ、社会で生きる全ての人々がその辛さの存在を知る必要があります。特に保護者を苦しめることを子どもは嫌います。その子どもながらの「気遣い」を受け止めてあげる懐の深さが保護者には必要かもしれません。

質問①:14歳の娘が彼氏に自分の性的な身体の写真を送っているようです。私はこの行為に対してどういった反応をすれば良いのでしょうか?

性的な写真をネット上の人々に送ったり、SNS上に掲載することは、"セックスメッセージ"として知られています。性的な写真や動画を送ることの危険性は、送った先の人だけでなく、自分がその写真や動画を与えたくない人までもがそういった写真や動画を見たり保存したりすることができる部分にあります。お子さんには、もしそういった写真や動画を相手だけでなく、他の人にも見て欲しくないと思うのであれば、今すぐやめるように伝えましょう。そして、彼女自身も(自分自身のものに関わらず)性的な写真や動画を他者とシェアしないようにすることも重要です。

オンライン上に何かを掲載するという行為の先にある「掲載されたもの」は半永久的に消えないものであるということを認識しなければいけません。これらは時に「デジタルタトゥ」と呼ばれます。本物のタトゥであれば消し去ることができますが、ネット上のものはタトゥよりも深刻です。相手が好きだという気持ちは認められますが、自分の身を危険に晒すことは愛情とは受け入れ難いことを伝えることもまた保護者の役目かもしれません。

質問②:16歳になる娘にセックスをしてほしくありません。どのようにして彼女を止めればいいのでしょうか?

「禁止すること」はいつも最善の策とは言えません。禁止すればするほど、本人は自分自身がきちんとセックスに備えて準備できているかできていないかに関わらず、保護者に隠れてセックスをするようになります。保護者としてできることは、何故あなた自身がお子さんにセックスをして欲しくないと望んでいるかを伝えることです。もしお子さんがその理由をきちんと理解できれば、その考えに則るようになるかもしれません。むやみに禁止するのではなく、話し合いを続けることが大切です。

こういったド直球の質問が掲載されているところにも好感が持てます。保護者として子どもを危険から守りたいと思うことは自然なことかもしれません。ただ、禁止することが最善の策ではないと答えるところに「対話」を中心とした文化の考え方が見えます。保護者がその立場から一方的に禁止するのではなく、何故そう思うのかを伝える必要がある...無論、それを話しても阻止できない場合もあるでしょう。ただ、少なくとも人間として対等な立場として、子どもに素直な気持ちを伝えることは大切です。

次は家庭で性教育を行う時のポイントをご紹介

さて、0歳から18歳までの発達に応じた年齢別の性教育をご紹介してきましたが、次の記事では家庭で性教育を行う時のポイントについてまとめられたラストのページをご紹介します。


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