オランダの子どもたちが幸せな理由<それを語るその前に>
先日、ユニセフによる<子どもの幸福度>についてのレポートが発表されました。
noteの記事を書くのが遅れてしまったのですが、実は時間をかけてその英文で書かれたレポートを読み、自分なりに理解しようと努めていました。
私自身、大学で論文を書いたりデータ分析を主な仕事としている立場ではないため、素人分析ですが嘘はないように書いていくつもりです。
(解釈の違いにより誤った内容があればご指摘ください)
今回はそのレポートを読む中で見えてきたことについて、数回に分けて書きたいと思います。
その前に...
「幸福度なんて人それぞれ、比べるものではない」という議論
幸福度に関するレポートが世に出てから様々な議論がされてきました。
「幸福度などどうやって比べるのか」そういった議論や、
「人によって幸福の定義は異なる」などの意見も目にします。
しかし、英語で書かれたユニセフのレポートを読むと「幸福度」はただ単に「幸せですか?」という問いだけにとどまるものではないことが見えてきます。
私はこのレポートの「幸福」とは、
「心身ともに安心して健康的な生活を送ることが出来ている子ども」
という定義であるように感じました。
そしてその「子ども」としての存在のためには、子どもたちを取り巻く環境が大きな役割を果たします。何が幸福かを定義づけることは難しい現代ですが、例えばこの調査では「肥満度が高い」ということは、幸せの定義を少し揺るがすのかもしれません。
ここで定義される「幸福度」は、子どもの生まれた時の体重やその後の健康、保護者の働き方、保護者と学校の関係、周辺地域の環境や、犯罪率...なども含みます。
多岐に渡る質問は、子どもに対する質問だけでなく、
彼らを取り巻く保護者や社会システムの統計からの分析を受けています。
ユニセフの子どもの幸福度調査とは
まず、最初にユニセフが行った子どもの幸福度調査とはどんなものなのかを簡単に説明したいと思います。ユニセフの幸福度調査は3つの要素から構成されています。
その3つとは、
◉精神的幸福度
◉身体的幸福度
◉スキル
の3つです。
この3つの中身を見ると、
◉精神的幸福度
・生活満足度(15歳の子ども対象。生活の満足度を0-10とし、そのうち6以上を選択した子どもの割合)
・15歳〜19歳の自殺率
◉身体的幸福度
・5〜14歳の死亡率
・5〜19歳の過体重/肥満の割合
◉スキル
・学力・・・15歳の段階での読解力/数学的思考力
・社会的スキル・・・「すぐに友達ができるか?」という問いに対して「その通りだ」「まったくその通りだ」という回答をした子どもの割合
となります。
注意したい点
まず、「幸福度」とは主観的に幸福と感じているかどうかだけではなく、客観的指標を含めて多面的にとらえた子どもの幸福度を指します。
また、その「客観的指標」とは、ユニセフだけでなく、国連やPISAなど、他の団体が行った調査結果のことを指しているため、今回のレポートの材料となっている統計やデータはユニセフが独自で調査した内容をもとにしている訳ではありません。
さらに、ユニセフを含めた団体が行った調査対象となっている国はいつも同じではありません。例えば、「家庭と学校で自己決定をさせてもらっていると感じている子どもの割合」というデータの調査対象国にオランダや日本は入っていません。つまり、対象国として調査を受け、その結果がプラスに働くこともあれば、マイナスに働くこともある。という意味を含んでいます。
また、今回のレポートはOECDの加盟国や欧州連合(EU)の国々が対象であるため、「あれ?あの国のデータはないな?」ということが起こり得ます。いずれにせよ、世界の国々全ての調査を行うことは難しく、国によっては調査されていない項目がある、ということは最初に理解しておきたいと思います。
ちなみに、どんな客観的指標(データ)が利用されているのかをちらっと
・日常的に外遊びをしている子どもとそうでない子どもの幸福感(Children's World survey 2017-2019)
・家族との関係とその幸福度(Health Behavior in School-aged Chidlren2017/18)
・ヨーロッパ諸国における保護者と学校との関係性(European Quality of Life Survey 2016)
・近隣地域に遊べる施設が十分にあると感じているか、とその幸福度(Children's Worlds survey 2017-2019)
・就学1年前に何らかのかたちで幼児教育機関に属している子どもの数(UNESCO)
・失業者数(World Development Indicators 2019)
・10万人あたりにおける殺人率(World Bank 2017)
などがあります。参考にされている調査や統計は実に40を超えています。
で、最も安定した数値を持っていたのがオランダ
こんな感じの結果となりました。
主観的な感想で言うと、オランダは全体的に上位層。
日本は身体的幸福度で1位を獲得したため、総合順位を上げている。という感じです。
オランダについて言えば、子どもたちの中で「普通より幸せだ」と感じている人の数は多いということなので、それは逆に言えば「不幸ではない」という意味かもしれません。
「幸せとは言えないけど、まぁ不幸ではないかな」
そんな風に感じて0~10点のうち5点か6点くらいに点数をつける。
オランダには"Zesjescultuur"(6点文化)という独特な文化があります。
私が移住してきた頃、学校視察先の先生に最初に教えてもらった言葉です。
「普通よりちょっと上で良い」
それが教育文化にも根付いていると感じることもあるのですが、そういった意味で「不幸ではないかな」と回答している子どもたちも多いのかもしれません。
もちろん「不幸ではない」というのは「不幸だ」という状況からすると良い状況かもしれません。ただ、この調査結果のことをオランダ人に話した時、
「ふーん」
という反応が返ってくることが多いことを鑑みると、保護者自身も「まぁ、不幸ではないよね」という感覚を抱いているのかもしれないなぁ。と思います。
いずれにせよ、結果では3回連続で「最も子どもたちの幸福度が高い国」となったオランダ。
次の記事ではオランダという国の結果が、その他の国と大きく異なった点について書いていきたいと思います。