なんでデンマークなの?と聞かれ続けて

なんでデンマークに留学に来ようと思ったのか。

ということはデンマーク留学する人が聞かれ続けることです。
だって英語がやりたいなら英語母語の国がいいし、ヨーロッパのこと知りたいならもっとEUの中心国のほうがいいし、福祉や多文化共生を学びたいならスウェーデンのほうがいいし。
デンマークである必然性を探すのはすごく難しいことです。

こっちに来てすぐのとき、私はこう説明していました。


「大学で社会学を勉強して、ジェンダー・福祉・移民に興味を持つようになって、日本より進んでる海外で勉強したりその現場を見たりして、日本に持ち帰りたいと思うようになった。
このあたりの分野を学ぶなら、イギリス・アメリカ・スウェーデンが妥当なのかもしれないけど、どの国も将来的に行く可能性がある国だし、日本で研究者もたくさんいる。でもこのあたりの国って研究や社会がだいぶ完成されてて、自分が入る余地はないように思う。日本でも十分学べるし、日本が見習えない限界点も見えてるから。
それに比べてデンマークは、それぞれの分野で進んだ社会を持っているけど、日本で得られる情報も少ないし、社会の中で日本と似ているところも多いと思う。「北欧神話」的な幻想も日本でまかり通っているけど、それも思い込みが作っている部分も大きい。
だから自分で行って見て学んで、持ち帰りたいと思ってる」

今でもこの気持ちは変わっていないんですが、もうちょっと自分の整理のためにも補足しておきたいと思います。

私について


まず、私は大学で社会学を学んで、ジェンダーとコミュニティに興味を持つようになりました。
女性がなぜ社会で男性よりも不利になってしまうのか、その状況はいつからどうやって生み出されているのか、社会のせいなのか生育環境のせいなのか制度のせいなのか。
女性だけでなく、性的マイノリティや性の話題がなんとなく忌避されたり、表面的な理解で済まされてしまう環境に不満を覚えるようになっていました。

また地方創生や地域活性化、そして国際開発に興味があると言い続けた先には、「その場所にあるものが生かされないことがもったいないと思うしストレスである」という感情に行きつきました。そこで多文化共生や地域社会研究といった、地域の中の人や資源がどのようにつながり活用されているかという研究に興味を持つようになりました。

私は大学に入ってから現地を見て学ぶことを優先してきたので、大学で学ぶということの意義だけでなく、その社会に暮らすことの意味も大きいと思っています。そのため、留学に行く国にはその社会に興味を持っていることがすごく重要な要件でした。
また海外に行くことは、日本と相対化して日本といいところ悪いところを整理して、日本や自分の将来に生かせる何かを持ち帰ることも重要だと思っています。

その中でデンマークは、ヴェールに包まれていて自分で解き明かしてみたいと思う国であり、日本や自分の周囲をよくするためのヒントを持っていそうな国であり、これを逃せば長期的に行くチャンスを得ることはないだろうと思いました。


デンマークについて


デンマークなんていう小さな国の何に興味を惹かれたかというと、その社会の先進性と、それと共存する自国愛やアイデンティティの存在です。

留学前の私の日本における不満は、女性の地位と暮らし方、それと不可分な人口減少への無策な社会の在り方でした。
女性の地位が高く母親も働ける社会で人口減が大きな問題となっていない国は世界にいくつかありますが、例えばアメリカのようなすぐシッターを雇ってばりばり働くというのは日本では無理でしょうし、人口増加は移民が担っているという国では日本の出生率の低下の解決策としてはピント外れ感が否めません。

デンマークは一度大きな出生率低下の波を経験したあと出生率が上昇し、現在も人口が増加(自然増)しているという訳ではないですが一定を保っているという点で、何かヒントがないかなと思った次第です。
またデンマークは性別に関係なく働くことが要求される社会で、その代わり日常的にまた必要な時に、しっかりと休息をとって自分の時間や家族との時間を確保できています。実際生活しているとデンマーク人休みすぎだろって思うこともあるんですが、それでもデンマークは1人当たりGDPが世界トップクラスなわけで、それでも社会は成り立っているんです。

移民政策については、制度と実態がちぐはぐしてきています。多文化共生社会と言われる北欧において特に移民に厳しいのがデンマークで、それは植民地を減らしてきた歴史によるものであり、danishness(デンマーク性)という言葉があるようにデンマーク人としてのアイデンティティを大事にするがゆえに、外国人や外国の文化が流入することを恐れているせいでもあります。制度がどんどん厳しくなり世論も表立ってそれに反対することはない一方、全体から見て少数の移民が社会に悪影響を与えているとも言えず、地域社会ではまずデンマーク語で話しかけ通じないと分かれば英語で話し、困っている人がいれば見た目や国籍にかかわらず助ける人がいるという一応の共生が当たり前のように成り立っています。

日本人というアイデンティティの強さ、移民や難民の流入をなんでか不明確なままに恐れている社会情勢、シャイだけど冷たいというよりは温かいという言葉で形容される人々。日本とデンマークには移民問題を(受け入れ国の)人と(移民してくる)人との関係として見たときに、共有している要素が多いような気がします。
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こうやって書いていると、「留学」という机の前での勉強に抵抗を感じていた自分がデンマークにやって来た意味が改めて明確になる気がします。留学すると、海外学生との付き合いから学ぶことや、ヨーロッパ諸国やデンマーク各地を訪れることで学ぶことが色々とあるのは確かです。でも私が何より知りたいのはデンマーク社会がどうやった成り立っているのか、何を私が日本に伝えられるのかということなんだなと。

#デンマーク #留学

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