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「日本大好き」少年少女が日本の未来を救う

日本に住みたい

海外に住んでいると、日本のいいところと悪いところが日本にいる時よりも目について、時に最高に鼻高々の気分になったり、時に「ダメだこりゃ!」と情けない気分になったり、その浮き沈みは結構激しい。なかでも政治に関して言えば、オランダとの比較で日本は完全に発展途上国だと感じることが多く、コロナ禍ではそのビジョンのなさと、決断の遅さと不透明さをまざまざと見せつけられた。

一方、オランダ人の間で、日本に対する評価は結構高い。特に旅行で日本に行ったオランダ人は、その素晴らしいおもてなし精神や安くて美味しい料理、伝統とモダンが入り混じった興味深い日本文化などに魅了されて、大抵は「大の日本ファン」になって帰ってくる。その評判がさらに日本への旅行者を増やし、コロナ前には「バカンスに日本に行くんだ!」という声を何度も聞いたものだ。

さらに行ったこともないのに「日本が大好き!」という子が多いのにも驚かされる。10歳の息子のクラスメートはことごとく日本が好きで、なぜか「日本に住みたい」とか「将来は日本で仕事をしたい」と言っている子も多い。うちの子の友達だから、特別日本に興味があるということもあると思うが、それがなくてもゲームやアニメ、寿司やラーメンが子供たちに「イケてる国」という印象をもたらしているらしい。息子は鼻高々で、調子にのってクラスメートに日本語を教えているらしく、ある日オランダ人のママ友は私にこう言った。

「わたし、日本語が話せるのよ。ウンチ、バカ、オナラ!」

息子の友達が日本ファンでいてくれることは、私にとっても嬉しく、彼らがうちに泊まりに来たときなどには、張り切って寿司やカレーやラーメンを出している。彼らは箸を使い、ラーメンをすすり、食後にはYouTubeで『NARUTO』を見る。息子と一緒にいつか日本に同行することも、すでに約束しているらしい。私はそんな日が本当にくればいいな、と思っている。

次世代の彼らがこんなに日本を慕っていることに、私は明るい日本の未来を感じている。日本が彼らを受け入れればの話だが……。入口はなんであれ、日本が大好きで、日本に住みたいと思っている彼らが受け入れられれば、彼らが日本で仕事をし、税金を納め、日本社会や文化を発展させてくれる。高齢化が進む日本はお先真っ暗……みたいな予想も多く語られるが、私はこういう子供たちを受け入れる国であれば、十分に未来が開けると思っている。

その根拠は、私が今見ているオランダの現状にある。

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移民を受け入れて進化するオランダの前例

オランダは人口1700万人の小国にも関わらず、年間20万人以上の移民を受け入れている。アムステルダムやロッテルダムといった大都市はもちろん、私が住んでいる人口20万人強の中堅都市であるアイントホーフェン市でも移民の流入が激しく、周りは外国人で溢れている。なかには政情不安定な国や地域から逃れてきた亡命者など、経済的にオランダ政府の保護を必要とする人々もたくさんいるのだが、オランダの経済成長を支えているテクノロジー系の人材流入も非常に多い。

こうした知的労働者には、オランダ国民の9割が英語が達者なことや、寛容でオープンな社会であることがウケている。ヨーロッパは全般的に多くの移民を受け入れているが、オランダは中でも外国人が住みやすい、人気の移住先なのだ。オランダで起業する人や個人事業主にはビザが出やすいという事情もあり、最近は日本から移住する若い人たちも増えている。

そして、2020年にオランダ国籍を取得した外国人は、4万9000人に上った。(ちなみに日本に帰化申請し、許可される人は毎年1万3000人~1万4000人)。周りを見渡すとインドや中国といった新興国のみならず、EU内やアメリカからの移民もいろんな便宜上から次々とオランダ国籍を取得しており、オランダ生まれのオランダ育ちでない「オランダ人」がどんどん増えている。当然、移民の祖父母や両親を持つ、2世、3世のオランダ人も多く、本当に何世代も前から生粋のオランダ人というのはどれほどいるのかな……と思うほど、「移民系」の割合は高い。

移民の増加により文化的摩擦や犯罪、住宅価格の高騰といったデメリットもあるのだが、街は国際的になり、若い活気が満ちて、経済的に潤うというメリットも大きい。私はオランダに住んでもうすぐ17年になるが、この間にどんどん国際化が進み、オランダの食生活や文化もその影響を受け、どんどん進化して、どんどん楽しくなっている感がある。オランダで数々のイノベーションが生み出されているのも、いろんなバックグラウンドを持つ人材が良い刺激を生んでいるという背景がある。

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日本は「日本人」のものか?

新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普通になってしまった今、世界中で「住みたいところに住む」という動きが活発化している。国が人を選ぶのではなく、人が国を選ぶ時代になってきたなあと感じる。子供たちが就労するころには、この傾向はもっと強まるのではないだろうか。

仮にビザ取得とか、いろんな規制を取り払った上で若者に移住先を選ばせたとしたら、世界中でかなりの人数が日本を移住先として選ぶのではないかと思う。アニメ、ゲーム、寿司、ラーメンの威力は意外と大きい。働く企業がアメリカやオランダの資本であったとしても、従業員が税金を払うのは居住地だ。彼らは日本経済を支えてくれるだろうし、日本が大好きだから、きっと頑張って日本語も勉強するだろうし、日本文化をさらに盛り上げてくれるだろう。

伝統文化だって、「生粋の日本人」が担わなくてもいい。すでにそれは相撲の世界にも表れているし、酒の醸造や日本の伝統工芸を熱心に学ぶ外国人もいる。外国人を受け入れる方が、日本の伝統を守りやすくなるという矛盾した結果が生まれるのではないだろうか。もしかしたら、伝統は外国の文化と融合し、ちょっとした変化を見せるのかもしれないが、それはそれで楽しい。

息子の友達みたいな若い「日本大好き人間」がラクラク日本に移住できるようになると、きっと日本はもっと面白くなる。そのためには、政策的にも社会的にも、もっと彼らを温かく受け入れる姿勢が日本には必要だ。私も、将来はそんな日本のために何かできないかな……と考える今日この頃である。

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