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ショートショート「噛ませ犬ごはん」

たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」に参加しました。(とても久しぶりに参加させていただきました)

https://note.com/tarahakani/n/nb6d2c80c8cbc

今回のお題は「噛ませ犬ごはん」

「噛ませ犬ごはん」

私は、新潟の美しい大地で育てられどのレストランのどのシェフも太鼓判を押す、超一流の米だ。

だが、問題が生じた。

えみこの父が、彼女の恋人の太郎が作った米と私を食べ比べて結婚を認めるか決める、と言ったのだ。

太郎は米農家だ。
だが、彼は若く経験が足らぬ。

彼の作った米は、まだ「それなり」の味なのだ。

私が勝ってしまう、と思っていた。

だが、えみこが太郎の米を心をこめて炊いたからか、私の炊き方を特にへっぽこにしたのか、太郎の作った米が勝った。

良い気持ちではない。
しかし感動の涙の人間たちを見ると、まあ良いか、と思う。

愛の成就に力を貸せるなら、このような噛ませ犬の役割でも…。

「もし」
声がする。

ここはえみこの父の胃の中。
食べられた私に声をかけるのは誰だ?

「私は太郎が作った米でございます。あなたの凛としたつや、誇り高い味わい、とても素晴らしく、お慕い申し上げます。共に消化されることを嬉しく思います」

…うむ、悪くない消化である。

***終わり***

読んでくださってありがとうございました。

なぜ新潟という単語が出てきたかというと、私は新潟の人間でして…米はとても美味しいのでございます。