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端境期

「オオカミ少年•ハマダ歌謡祭」を見ている。昔はクイズメインの番組だったが、今は「芸能人が年の差ヒット曲バトル!ベテラン対ルーキー」という副題があるように、歌がメインの番組である。
 ベテランと言っても、その境目は西暦2000年なので、驚くことにSixTONESのジェシーや田中樹さえもベテラン組なのだ。 

 コロナが五類に変わり、アクリル板がなくなった。病気の回復期には胃に優しいお粥が良いように、他人(親子ですら)と近づくことを忌み嫌う日常生活からの脱却に、歌番組のゆるくて感情移入できる番組を見ることは、心にちょうど良い。ベテランもルーキーも全力ではしゃぐ姿を見ていると、どんどん楽しくなってくる。歌を共通点に、世代間の距離を縮めていくのが、世代の分断に風穴を開ける過程にも見えてきて、(ちょっと大袈裟過ぎる)チャンネルを変えようと思っていた指が、とうとう最後まで動かなかった。
 
 それでも番組の中、スタッフが走っている姿を見てハッとした。一度使ったマイクを交換する場面がチラリ映り込んでいたのだ。番組ではどうだったのかわからないけれど、昔カラオケは同じマイクを使い回していたよね?見せないようにしているけれど、気づかないふりをしているけれど、もう昔には戻れない、そんな端境期。


 今日はベテラン勢で、麗しの早見優が出ていた。自身のヒット曲「夏色のナンシー」を歌うシーンがあり、なかなか感慨深かった。昔行ったフェスで生•早見優を見たのを、走馬灯のように思い出す。メインCHAGE&ASKA。他に早見優、C –C−B、(トムキャットもいたような)。若かったあの頃は。長蛇の列に並ぶことなど何でもなかった。今はその情熱はない。



 今夜聴く歌は、人生の端境期のころ聴いていた一曲。

背で見るあの明日が
悲しみを彩ってみせたら

永遠と刹那のカフェ・オ・レ
冬の空を満たす

迫りくるあの明日が
消えてゆく昨日より魅せたら

テンポの乱れた風、風
冬の宇宙も焦がす
ほら、もう空が開く

キリンジ「アルカディア」


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