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光る君へ 旅立ち

 今日は雨。遠くの台風が梅雨の気配を連れてきました。久しぶりの飲み会の帰り、ロングスカートの裾を濡らしながら急いで家へ戻るのは、録画していた「光る君へ」を観るためです。以下、ネタバレを含みます。

 〜春はあけぼの〜からうたわれる、枕草子の物語の生い立ちを、今さらながら知りました。道隆(井浦新)が亡くなってから一年ちょっとの月日で、伊周(三浦翔平)は太宰府へ、隆家(竜星涼)は出雲へ、定子(高畑充希)は出家し、母の貴子(板谷由夏)は一人きりになるという、一家離散の憂き目にあってしまいました。まるで祇園精舎の〜諸行無常の響きあり〜であります。

 
 清少納言(ファーストサマーウイカ)は出家した定子に付き従うのですが、帝のお子を宿しながらも生きる気力を失ってしまった定子を心配してやみません。少しでもお心を安らかにしたいと思い、文(今でいうエッセイ)をしたため、それを定子のいる部屋へそっと忍ばせます。ただただ、定子に元気になってもらいたい一心で。しばらくして、その文を読んでいる定子の姿を目にした清少納言は、嬉しさのあまりうち震えます。ファーストサマーウイカさんの表情がいいですね。
 柔らかな陽射しからこぼれ落ちる桜、闇夜にぼーっと光る蛍など、季節の移り変わりまで含んだ映像が、とても美しいのです。清少納言のことをもっともっと知りたくなるとは、嬉しい誤算でございます。

 それにしても、呪詛は誰が仕組んだことか?女院(吉田羊)と倫子(黒木華)のやり取りは背筋が寒くなりました。
 道長と倫子がいる前で、次の中宮は誰がよいがと女院が話をしていると、倫子が突然笑いだします。
「何かおかしいことを言うたか?」
「女院様があまりにお元気になられましたので」
「もう、呪咀されてはおらぬゆえ」
「あの呪詛は、不思議な事にございましたね。・・・女院様と殿のお父上は仮病がお得意であったとか、うふふふふ」
そのやり取りを見ていた道長の引きつった顔!
 倫子に弱みを握られた女院が、後に道長と倫子の子を中宮に推すという流れになるのでしょう。いやぁ、参りました。優しいぼのぼのとした雰囲気のなかに、得体のしれない牙を隠し持っている黒木華さんの演技の奥深さにしびれます。
 
 さて、越前国へ赴く前に、為時(岸谷五朗)と宣孝(佐々木蔵之介)は祝の酒を飲むことに。失言でまひろに小言を言われることが多くなった宣孝は、怒られなくなるのが、淋しいとつぶやきます。その眼差しには、まひろをひとりの女性として意識する熱がこもってます。いいなぁ、私も佐々木蔵之介さんみたいな殿方に見つめられてみたいと、密かに胸きゅん。まひろは残念ながら、もう一人の父としてしか見ていないため、きょとんとした表情でした。なんと、もったいのうございます。

 旅立ちが近づいたある日、まひろは道長に文を出します。左大臣となった元彼になんと大胆不敵なことでしょう。しかも、奥様は元サロン仲間の倫子なのに。
 昔、逢瀬を繰り返した場所で再び待ち合わせをするふたり。まひろは伊周達が失脚したことを、道長の謀りごとかと問います。そうだと言う道長の顔を見て、つまらぬ噂に惑わされた自分を恥じます。本当は道長がそんな事をするはずがないと、わかっていたのです。事の真偽を確かめたいというのは自分にとっての言い訳で、もう一度道長に会いたかったのです。道長は道長で、疑われてもしょうがないみたいに言います。何故なら、女院の謀りごとも見抜けず、自分で何ひとつ思う通りの事ができなかったから。
「お前と交わした約束は、未だ何ひとつ果たしておらぬ。これからどこへ向かってゆけばよいのか、それも見えぬ。、おそらくおれは、あの時お前と遠くの国へ逃げていっていても、お前を守りきれなかったであろう」と、権力を手にしながらも、まひろの前では弱気モード。
そんな道長に昔の匂いを感じたのか
「彼の地で貴方とともに滅びるのも良かったのやもしれません」と、まひろは道長の胸に顔をうずめます。
「この十年貴方を諦めたことを後悔しながら生きてまいりました。妾でもいから貴方のそばにいたいと願っていたのに、なぜあの時、おのれの心に従わなかったのか。いつもいつもその事を悔やんておりました」
「いつの日もいつの日もそなたのことを・・・」
そこで、ふたりは熱く抱き合います。

 美し過ぎる場面ですが、いつの日も
いつの日もそなたのことを、なんて夢物語ですね。誰にも言えない秘密の恋は、言葉をささやきあい、その言葉に酔いしれてゆくのみ。結局、道長は倫子以上に心強いパートナーはいないと身に沁みて分かっているので、まひろには「身体をいとえよ」としか言えないのです。ずっと想っていたというわりには、自分の身は自分で守りなさい、私には何もできないのだから、と言っているのと同じです。恋は幻とはよくいったものです。でも、そんな言葉だけでも生きる力になり得るから不思議ですね。

 場面変わって、小さな舟で広い海を渡るまひろ達がいました。危なくない?!と思いきや、青く広がっているのは海ではなく、琵琶湖だったのですね。
 いよいよ待望の、松下洸平さんが出ますね。来週からガラリと雰囲気が変わって、また楽しみにうち震える私です。



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