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【Concert】宮本益光が贈るホワイトデーコンサート〜とびきり甘い夜

 オペラのヒーローは何といってもテノールだが、わけもなく惹かれてしまう「イイ男」はバリトンが多い気がする(個人の感想です)。音域からいっても、「オトコの色気」が漂うのはやっぱりテノールよりバリトンだ(重ねて申しあげますが個人の感想です)。ひとくちにバリトンといってもその声質は様々で、例えばモーツァルトが得意な人とヴェルディが得意な人は重ならない。この夜登場した4人のバリトンはほぼ同じような声質の持ち主なので、まず普通のオペラの舞台で共演することはありえない。それを可能にしたのは、ひとえに宮本益光という人のプロデュース能力である。人を集め、コンサートの構成を考え、舞台上では恐ろしく面白いMCをつとめながら、歌う。こんなことができる歌手は、そうそういない。改めて、宮本益光という人の「人間力」に感嘆したコンサートだった。

 それにしても、なんて楽しくて、贅沢な2時間だったことだろう。お互いがリスペクトしつつライバルであるという緊張感がイイ意味で舞台を盛り上げる様は、まるで4人のイケメンが登場する乙女ゲーをプレイするような気分。まさに「とびきり甘い夜」を堪能しました。というわけで、以下、乙女ゲーのプレイヤーになったつもりで4人の「イケメン」についての感想を書いてみようと思う(戦隊ヒーローと「おそ松さん」ネタもつけましたが、意味がわからない方は無視してくださいw)。

 リーダー宮本益光。この人の声にはいつもはっきりとしたサインが刻印されている。それは、どんな歌を歌っても変わらない。「あ、益光さんだ」とすぐにわかる。それでいて役へのなりきり度は他の追随を許さない。表現がドラマティックで聴き手をキャッチする力はピカイチ。(戦隊ヒーローならレッド。F6なら「爽やかジャスティス、松野おそ松」)

 2番与那城敬。いちばん「男」を感じさせる声。声量も抜群で包み込むような広がりがある。コミカルな役もうまいが、やはり何といっても正統派の二枚目がイイ。もっともオーセンティックなオペラのバリトンといえるだろう。(戦隊ヒーローならブルー。F6なら「肉食系肉、松野カラ松」)

 3番近藤圭。もしかすると彼はちょっと不器用なのかもしれない。いつもマジメ。いつも真っ直ぐ。今回の選曲を見てもそれがよくわかる。いちばん有名な「ザ・バリトン」な曲を選んだのが彼だった。その不器用さになんともいえない「愛嬌」が漂う。将来、宮本益光を凌ぐパパゲーノ歌いになるかもしれない。(戦隊ヒーローならイエロー。F6なら「ビューティー・ジーニアス、松野チョロ松」)

 末っ子加耒徹。今回いちばんびっくりしたのは彼だった。日本語、英語、ロシア語、イタリア語の歌を歌ったが、とにかく発音が素晴らしい。そして、それぞれの楽曲のスタイルを把握する能力がずば抜けている。美声で頭が良くておしゃべりも上手で、かつヴァイオリンもうまい。それなんてスーパースターですか?憎らしいほどの才能の持ち主である。(戦隊ヒーロー、というより仮面ライダーの追加ライダーみたいなものか。F6なら「キューティ・フェアリー、松野トド松」)

 忘れちゃいけないのがピアニスト、加藤昌則の存在だ。黙々とピアノを弾き続けているように見えたかもしれないが、これだけバラエティに富んだ選曲の伴奏、凡百のピアニストには絶対できない。コンサートのラストに4人全員で歌った「もしも歌がなかったら」は加藤の作曲(作詞は宮本)だが、元はソロの曲をこの日のために彼が編曲したそうだ。4人が「もしも歌がなかったら」と歌い始めた時、不覚にも涙がこぼれてしまったのは、作品の素晴らしさがそのまま「音楽の素晴らしさ」を語っていたからだ。そういう意味では、この日のコンサートは「5人の共演」だったといえるだろう。

2018年3月14日、サントリーホール ブルーローズ。

※当日のプログラム↓



 

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