見出し画像

抱腹絶倒の和風ロッシーニ〜Vivid Opera Tokyo第6回公演『アルジェのイタリア女』

舞台を日本、しかも昭和!「アルジェ」は「亜流滋ェ」というヤクザの組!という奇想天外抱腹絶倒のコメディ。歌唱はイタリア語、セリフは日本語というスタイルは、この手の「お話を面白くする」のにはピッタリですね。演出は太田麻衣子さん。いつもながらの「麻衣子仕立て」に大いに笑わせていただきました。そしてこのびっくりの脚本は、タッデオを演じたバリトンの塙翔平さん。文才あります。

さて、このVivid Opera Tokyoという団体、私は初見でしたが、若い歌手たちが集まって活動をしているようです。で、音楽的にはやはりまだまだ課題はあります。ただ、第2幕になると全体的に歌が良くなっていました。おそらく「歌う」ことと「舞台で演じる」ことが自身の中でうまく噛み合い始めたのだと思います。歌は歌で研鑽を積みながら、舞台の経験も重ねて、今後もっともっと伸びていってほしいと思います。期待してます。

そんな中で、客演(?)のおふたり、ムスタファのバス・バリトン後藤春馬さん、イザベッラのメゾソプラノ山下裕賀さんはさすがでした。ムスタファはバスなのに低音域から高音域まであり、しかもロッシーニ一流の早口のアジリタ満載ですが、後藤さん軽々と(と聴こえました)歌っていらっしゃった。ヴィジュアル的にもスラッとしたイケメンで、深紅のシャツにピンストライプのスーツを着たお姿は「ザ・昭和のヤクザ」でした(笑)

山下さんは、柔らかく奥行きのある中低音で、どんなパッセージでも決して揺らがない安定した音程。表現力もあり、これは良いメゾだと思いました。11月の日生劇場『カプレーティ家とモンテッキ家」でロメーオを歌われるとか。非常に楽しみです。

ソファをひとつ置いただけのシンプルな舞台でしたが、映像をうまく使い、また衣裳(AYANOさん)もセンスがよく、見ていてチープさは感じませんでした。ホールの規模にも合っていた。このあたりはやはり一流の舞台から若手のチームまで、幅広く演出を手がけている太田麻衣子さんのお手柄でしょう。指揮の谷本裕基さん、ピアノの天日悠紀子さんもしっかりと歌い手をサポートして好印象でした。

2021年6月29日、渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール。


皆様から頂戴したサポートは執筆のための取材費や資料費等にあてさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします!