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【Opera】藤原歌劇団『カルメン』

 ようやく記事タイトルに「Opera」とつけられる日がやってきた!ほぼ半年ぶりにオペラ公演の幕が上がった。テアトロ・ジーリオ・ショウワで行われた藤原歌劇団『カルメン』は、2017年に初演された岩田達宗演出のプロダクション。本来4月に上演される予定だったが新型コロナのために延期されようやく上演の運びとなった。何はともあれ1オペラファンとして、公演の幕が無事に上がったことに、日本オペラ振興会はじめ関係者のみなさまに感謝したい。

  客席はこのところのコンサートのスタンダードとなっている1席空けに市松模様配置。入り口での検温、アルコール消毒、チケットのもぎりは自分で行う、のも同じくいつも通り。そのほかに施された「コロナ対策」は以下の通り。  

・オケは舞台上に配置。全員マスク着用。

・合唱は後ろに台を組んでその上で歌い演技 をする

・オケの前にアクティングエリア 

・ソリストは潰した客席前列に置かれたモニターに映る指揮を見ながら演じる 

・歌手は全員フェイスシールド着用 

 岩田演出は4枚の半透明の衝立を上手く使い、歌手たちが直接顔を付き合わせることのないような動きを構築。さらにその衝立で遮られた空間が、人間関係自体の距離感を感じさせるようになっていてコロナ対策のためのソーシャル・ディスタンスを演出の一部とするなど、さすが長年舞台に携わってきた岩田ならではと感じた。初演時も全体的に暗い舞台だったが、照明の工夫によるのか歌手がつけているフェイスシールドは客席からだとそれほど目立たず、違和感はあまりない。一方、声の響き、特に遠くにいる合唱はやはりどうしてもくぐもってしまうのが残念(それにしてもあれだけ響かせることができたのは藤原歌劇団合唱部の力ではあろう)。アクティングエリアが広くないので大きなセットは組めず、その代わりに、例えば第4幕ではフラメンコダンサーがカスタネットを鳴らしながら踊ることで闘牛場の雰囲気を出すようにしていたのも効果的だった。

 歌手も慣れないシールドや動き方、また久しぶりの本番で苦労が多かったのだろう、「オペラ」としてのまとまりに欠けるところもあったが、そんな中、ミカエラの伊藤晴が「歌がドラマを作る」というオペラの本質を体感させてくれる高いパフォーマンスで光っていた。指揮の鈴木恵里奈は、ソリストを背中にする形(足元にモニタはあった)で難しい指揮だったと思うが、大きな破綻なく演奏者全員をまとめ上げた。

 コロナ禍の中、どのような方法で上演していくのがいいのか、これからもオペラ界全体で考えていかなければならないという意味ではまだまだ課題は残るが、まずは第一歩を踏み出すことができたのは非常に大きい。この流れを堰き止めずにいけるように、私たちもできる協力はしていきたいと強く思った。

2020年8月15日、テアトロ・ジーリオ・ショウワ。

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