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【Opera】東京二期会『トスカ』GP

最初の音が鳴った瞬間、ダニエーレ・ルスティオーニと都響のタッグが並々ならぬレベルに達していることを痛感する。

それから幕が降りるまで、通常よりかなり速めのテンポで音楽を進めながら、ひとつひとつの楽器の表現が際立って聴こえてくるような細やかさと、全体の流れの緩急の心地よさ、そしてロマンティックな旋律美を存分に聴かせる指揮者の手腕にため息が出るほどだった。もちろん、その要求に完璧に応えていた都響のレベルの高さは十二分に評価すべきだろう。

ルスティオーニが、『トスカ』という作品になにを見、そこからなにを感じ取り、そしてなにを表現したいのか。

彼は事前のインタビューで『トスカ』を「いちばん好きなオペラ」であり「イタリアのアイデンティティが表現されている」と語っていたが、イタリア・オペラにおけるひとつの最良の表現、すなわち「音楽によって愛を描く」ことがこれほど成功した作品はないのかもしれない。そして、この若きイタリアのマエストロは見事に「音楽によって愛を描きだしてみせた」。これは、近年体験したオペラの中でも抜きん出た悦楽である。

プロダクションについて。

演出のアレッサンドロ・タレヴィの演出は良い意味で演劇的、それも非常にオーセンティックでオーソドックスな芝居を感じさせるもの。ひとつひとつのシーンが舞台画を見るように洗練されていて、これは是非オペラグラスで細かい演技まで見ておきたい。

1900年初演時のデザイン画を元にしたという舞台美術も荘厳でスケール感たっぷり。特に第3幕、実際のサンタンジェロ城と同じ大きさに作られているセットは一見の価値あり。

衣装デザインも当時のものが採用されているとのことだが、やや古めかしいながらも大変クラシックな美しさがあって、私は好きだった。第2幕のトスカの衣装が「白」なのは意表を突かれたが、彼女のピュリティを表現しているのだと思うと、よくある赤いドレスよりもずっと印象に残る。

主役のトスカを歌う木下美穂子は、さすがの堂々たる歌唱力・演技力。これぞ「プリマ・ドンナ」という貫禄を見せつける。

そして、カヴァラドッシの樋口達哉が素晴らしくいい。おそらく彼は、今絶好調なのではないか。声の重心が下がって安定感が増し、そこに持ち味である声の艶と色気が加わり、これはもう男の魅力全開だ。

公演の詳細はこちらを参照。

2017年2月13日 東京文化会館



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