マンガ学校で技術を学ぶと、「結局マンガは技術ではない」と気づくからくりとは…?
マンガ学校の講師をやらせていただいた経験をもとに、マンガ学校についての私の考えを書かせていただいています。
もちろん、私個人の限られた経験の中で考えたことですので、そこはご承知おきください。
マンガ学校は技術を教えるところだ…という話を前回しましたが、それとは矛盾するような今回のタイトルですが…。
でも安心してください、矛盾はしていません(笑)。
学生の側から考えてみると、マンガ学校で技術を学んでいるうちに、「結局マンガは技術ではない」ということに気づいてしまうという話です。
最近はデジタルでマンガを描きたい人が多く、入学前からすでに自分でPCを購入してある程度使いこなしている人がいます。基本設定をし、コマを割って下書きし、レイヤーを重ねてペン入れ、仕上げ…。最後に文字打ちをして出力する、と、そこまで出来ればたいていのマンガは描けますが、3Dモデルを使いたいとか、もっと手間を省くワザはないかとか、より高度な技術を学びたい人も増えてきたようです。
私は基本的なことがギリギリ出来る程度なので、デジタルに詳しい先生や学生はとんでもなく尊敬しますし、デジタル技術を追求する喜びは、知らなかったことを知り、できなかったことができるようになる「学び」の喜びそのものだと思うのですが…。
ただ、その技術を自分の作品のどこでどう使うのか…?
結局そこに立ち返ってしまいます。
もちろん、デジタル技術を使って迫力ある戦いのシーンが描けるようになったことで、今まで手を出せなかったファンタジー系やバトル系が思い切り描けるようになった!というならいいのですが…。
そのレベルの学生はめったにいないと思います。
もっと基礎的なことも同じです。コマ割や構図、ストーリー展開なども、「こうするといいよ」という技術(コツ)があります。
それらを学ぶと、それまで感覚的に感じていたことや、なんとなくうまくいかなかったことが理論として理解できて自分がすごくレベルアップした気がしちゃうのですが…。
じゃあ、それらを踏まえて一本作品を描き上げてくださいと言われると…
「自分は何が描きたいのか」
「読者に何を伝えたいのか」
という根本的なところでつまずいてしまう人がいます。
何を描きたいか分からない、または、描き始めてみたけれどまとまらない、
いじくりまわしているうちにテーマもなにも分からなくなってしまった…。
そうなると当然、技術うんぬんの話ではなくなってしまうわけで…。
そしてもう一つ。どうやっても教えることができない「センス」というものがあります(ああ…私がいちばん聞きたくない言葉)。
教えていても「この子のセンスはすごいな…」と思う学生が確かにいます。
私ごときはもちろんですが、どんなに優秀な先生だったとしても、そうしたセンスを「技術」として理論的に他の学生に教えることはできないと思います(センス良い感じに見せる技術はありますが)。
同じ教室の仲間の、とても真似できないセンスを見せつけられたとき、他の学生は改めて思うのです。「技術ではどうにもできないものがある」と。
マンガ学校はマンガの技術を教えるところです。
でも学生の側になってみると、技術を学べば学ぶほど技術より大事なものがあることに気づかされ、場合によっては打ちのめされる(笑)ところでもあると思います。
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