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沖縄タイムス「唐獅子」エッセイ連載2011年7月〜12月

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英国ロンドンから故郷沖縄に拠点を移したばかりの2011年7月〜12月の約半年間の記録です。沖縄タイムス新聞の「唐獅子」というコーナーのために書いた当時の沖縄アートに対する見聞をエ…
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記事一覧

【芸術は産業となりうるか|沖縄タイムス唐獅子⑩ 2011年12月26日掲載】

英国から沖縄に拠点を移し、早くも1年がたとうとしている。これまでの芸術における現状調査をもとに、私が考えていたことをうまく代弁してくれた記述を2008年3月号の「美術手帖」にみつけた。当時のアートフェア東京のディレクターで、現在はギャラリーを経営している辛美沙さんのインタビュー記事である。それには、「芸術を産業として成り立たせていくために、行政ももっと力を入れるべきで、アートが持つ力や可能性をもっと利用するべきだ。人間の創造力は、最後に残された資源で、その創造力が生かされない

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【芸術の秋|沖縄タイムス唐獅子⑨2011年11月28日掲載】

芸術の秋にふさわしく、県内外でもさまざまな展覧会やイベントがめじろ押しであった。11月初旬に、東京と横浜のアート・エリアとマネージメント業務調査のため、美術館やギャラリー、街中のアートを視察してきた。横浜美術館を主会場に行われた現代美術の国際展覧会ヨコハマトリエンナーレは「みる、育てる、つなげる」をテーマに、黄金町バザールや新・港村(BankART)など地域と連携した企画を展開している。

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【アート・マネージメント|沖縄タイムス唐獅子⑧ 2011年11月14日掲載】

英国で沖縄の芸術を紹介することに関わり始めた直後、2008年のリーマン・ショックの影響で当時勤めていた会社が倒産してしまった。いきなりピンチに立たされ、就職活動を始めたが、これまでの経験を生かせる写真関連の専門職は、衰退していく一方であった。ろくに面接すらしてもらえず、自分の真価を問われているようで、落ち込むこともあった。

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【人心同天地|沖縄タイムス唐獅子⑦ 2011年10月31日掲載】

*これまでに執筆した記事を振り返っています。 10月を振り返ってみると、海外からの訪問者が相次いだ月だった。今回で2度目となるフランスからの美術関係者の訪問に始まり、世界のウチナーンチュ大会には、英国沖縄県人会とロンドン沖縄三線会のメンバーが十数人来沖した。その際に、我が家を宿泊先として提供し、英国式B&Bのようなスタイルで迎え入れた。B&Bとは、ベッド&ブレックファーストの略で、寝床と朝食を提供する民宿のようなものである。   これまで英国で開催された沖縄のイベントでは、

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【Photographer’s Gallery|沖縄タイムス唐獅子⑥ 2011年10月17日掲載】

先日、沖縄を訪問されていた写真家の北島敬三さんにお会いする機会があった。6月にフランス・パリで北島さんが捉えた70年代のコザの写真に偶然出合ったばかりであった。訪れた異国の地で、思いもかけず自分の生まれ育った時代のコザの写真を見たことは、衝撃的であった。

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【コザと共に|沖縄タイムス唐獅子⑤ 2011年9月19日掲載】

ロンドンから一時帰省中の友人に「コザと共に37年」というメッセージの入った素敵な誕生日プレゼントを頂いた。 私が生まれた年に、コザ市と美里村が合併して沖縄市になったのだが、今でも「コザ」という愛称で親しまれ、私自身もそちらのほうが、なじみが深い。

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【沖縄ソウル|沖縄タイムス唐獅子④ 2011年9月5日掲載】

神奈川県相模原市の総合写真祭「フォトシティさがみはら2011」のプロ部門で最高賞にあたる「さがみはら写真賞」に石川真生さんが選ばれた。女性の同賞受賞は初めてで、受賞作品の「FENCES,OKINAWA」は、審査員から「土地で生きる人々の内なるソウルを捉えた写真」「誰にも真似の出来ない、特別な表現」などと評価されていた。

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【優しいということ|沖縄タイムス唐獅子③ 2011年8月22日】

ロンドン北部で黒人男性が警察官に射殺されたことをきっかけに発生した英国暴動事件。映像を通して見た、見覚えのある通り、通っていたお店、そこにいる人たちと聞き覚えのあるなまりの英語。私が以前に住んでいた地域で起こった、異常な光景に、言葉が無くなり、心が痛かった。その映像の中で、唯一、救いだったのは、放火された店内に飛び込んで、火を消す1人のおじさんの姿だった。なぜ、ああいう事件に発展してしまったのか、考えることはあるけどもそれを簡単には言い表せない。

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【みーなり、ちちなり|沖縄タイムス唐獅子② 2011年8月8日掲載】

2010年1月、文化庁派遣の文化交流大使に任命されて英国を訪れていた、野村流古典音楽保存会師範の喜瀬慎仁先生のワークショップへ参加する機会があった。その時に初めてお会いした喜瀬先生はチャーミングな方で、その人柄で参加者を多いに魅了した。指導をしながら唄の意味や歴史などを説明していただき、上達の秘訣として語られていた何げない一言から印象に残った言葉がある。

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【身近なアート|沖縄タイムス唐獅子① 2011年7月25日掲載】

1997年に遊学目的で渡英した。当時、英国はまだワーキングホリデー制度がなかったが、学生をしながらアルバイトをして、生きた英語を身に付けた。1年の滞在予定が、気が付くと、あっという間に13年も過ぎてしまっていた。

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