お金×愛情

お金と、愛情は、等価値だと思う。
愛はお金で買えないと言うけれど、お金が無ければ愛を感じる事も難しいと思う。
生きていく余裕が無ければ、愛なんて感じている場合じゃないのだ。
「それ、食堂のラーメン食べながら聞ける話?」
常に煩い大学内でも、その声は良く通る。
目の前に座ってるから、という理由を除いてもだ。
「だってそうだろ。生きてくのに必死だったら、他人にかまう余裕ないじゃん」
「人が一人生きるのって、それだけで周囲に影響やら迷惑やらかけてると思うよ。それ全部無視するの?」
「この場合、他人からの視点は必要ない。そんな余裕もない」
「ふ~ん」
興味が薄れたように、セミロングの茶髪をおさえてラーメンをすする彼女。
彼氏が取ってきた牛丼は、口を付けられずにそのままだ。
「俺が大学行ってレポート出して、優雅に昼飯を食べられるのも、お金を出してるからだ。
そして、それを愛と呼ぶことも出来る。親にお金出して大学行かせて貰ってる、教授にレポート出して単位を貰ってる、食堂のおばちゃんに愛情こもった手作り牛丼を出して貰ってる」
「3つの内、2つは愛情の使い方間違ってると思うよ」
「お金イコール愛、ならこの世界は愛にみちあふれてるという感じかな」
「ふ~ん」
ごちそうさま。
見れば彼女のラーメンはスープまで飲み尽くされ、お箸も綺麗に揃えられている。
「で、愛にみちあふれてる世界で、彼女に対しての愛情の示し方は?」
「…その心は」
「いやだってこんな話する時は決まってるもん。
んで、明日は私の誕生日だし。そっちは急にバイト増やしてたから一緒に過ごせなかったし。
もう答え出てるでしょ」
「…察しの良い彼女を持てて幸せだよ」
「愛とお金が同じ価値っての、分かりづらい彼氏を持つと有り難い考えかな。
ま、お金かけてもらって、物理的に愛情を感じられる分、彼女としては結構幸せですけど?」
「じゃあ更に分かりやすく幸せにしてやる。
…バイト代のマックス分まで」
「はいはい。前言撤回、やっぱ分かりやすいよ」


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