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東京下町に生まれた男の美学

ビシッと決めた姿で買い物する姿
自宅でタバコをくゆらせてくつろいでいる姿
贔屓のお店で愉しい時間を過ごしたことが偲ばれる破顔一笑

戦後を代表する時代小説・歴史小説作家として、戦国・江戸時代を舞台にした時代小説を次々に発表する傍ら、美食家・映画評論家としても著名であったお方。

その御仁の、もっとも華やかな時期のさまざまなシーンを撮影し、ご本人のエッセイとともに1冊の写真集としてまとめられた作品も、フリーランス写真家のお客さまの撮影で出されています。

短気である
時間にうるさい
人の好き嫌いが激しい
などの御仁に関する噂を耳にしていたフリーランス写真家のお客さまは、その御仁と最初にお会いする時はものすごく緊張していたそうです。

ところが
ふとした会話のきっかけで同じ小学校の先輩後輩の間柄だということが判明したことで、一気に間柄が和んだそうで、

「写真はすべてあなたにお任せしますよ」
とまで言っていただける関係が築かれたそうです。

だからでしょう
本当にさまざまなシーンが写真集には撮影されています。

その中の一枚に、御仁の自宅外観の全貌が収められた写真があります。

「小さいお家でしょう?」
とフリーランス写真家のお客さまの問いに私も素直に
「そうですね」
と答えるほどに、言葉が悪いかもしれませんが、どこにでもあるようなお家に意外さを感じました。

売れっ子の時代小説家ですから、広い土地に立派な日本庭園があって・・・
なんて家を想像しようものの、実際には御仁のご自宅は両隣の家とすぐに隣り合うような小さなお家

「なんでもね。
 この方は、隣からの声が聞こえないと落ち着かないそうなんだよ。」

なるほど、いかにも下町育ちの方らしい感覚。
だから、人気の時代小説も、下町風情がしっかりと活き続けた作品になるのだなぁ~、と納得しました。

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