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猿も木から落ちそうになる

フリーランス写真家のお客さまが、とある噺家さんの写真を撮影された時のお話。
ちょっと変わったシチュエーションで撮ろう
ということで、噺家さんのご自宅のお風呂に浸かっているところを撮る、とあいなって、撮影用のライトのセッティングをしていたところ、昔のことですから絶縁がしっかりしていないため、漏電して、ビリビリビリッと電気が走り、浴槽に浸かって待機していた噺家さんが感電して声をあげられたそうです。

噺家さん当のご本人は笑っていらっしゃったそうですが、奥様からは
「この人はねぇ、先の戦争でも死なずに帰ってきたんだから、
こんなことで死なせないでちょうだいな」
と、なんとも粋な言葉でお叱りを受けたそうです。

そんな話の流れから
「大変だった撮影ってあるんですか?」
と質問したところ、

「大変だったのはねぇ・・・」
とお話しくださったのが、とある舞台を撮影する時のお話。

その舞台は、「日本の喜劇王」と称された方が座長を務める貧乏な旅回り一座が織りなす、劇中劇を柱にした旅先でのハプニングを織り交ぜた喜劇舞台。「日本の喜劇王」を中心に、当時人気を博したコメディアンから、まさにこれからという若手コメディアンが一堂に集結した喜劇で、もう本当におかしくておかしくて、たまらない舞台だったそうです。

「客席からカメラを構えて撮るんだけど、本当におかしくってねぇ。
ついつい、舞台に引き込まれて笑っちゃってね。
あの撮影は本当に大変だったね。

『ちょっと!
 ちゃんと撮ってる?!』
って聞いてくる、隣に座った編集長も目から涙流しながら笑っていてね。」

このお話を聞いた後で、たまたま有料衛星放送でこの一座のストーリーの映画版を観る機会があったのですが、映画で観ても本当におかしくってたまりませんでした。

後日いらした時に、
「たまたま放映された映画で観ました。本当に面白いですね。」
って言いましたら、
「でしょう?! 本当におかしかったんだよ」
って笑いながら、お答えくださいました。



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