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超築古マンションで高速なネット回線が使いたいだけの人生だった #1 (挫折編)

これは、とある超築古の分譲マンションで「高速なインターネット回線が使いたい」と願った一介のソフトウェアエンジニアによる奮闘を綴った記録です。


はじまり

2023年11月某日、妻のおかげで引越し先の新居が決まりました。

いまの住まいは定期借家なのでいずれ引越す宿命でした。家族構成は、夫である私と妻、保育園に通う娘、そして猫。物件選びの絶対条件は、ペットが飼育できること、保育園を転園せずに済むこと。特にペット飼育可の物件は少なく、物件探しが大変なことは明白でした。

そんな中、熱心に物件を探していた妻が一念発起。賃貸物件だけでなく、分譲物件も検討し始め、あれよという間に住宅ローンを組んで分譲マンションを購入。この行動力は本当に素晴らしい。

新居となったのは、東京23区内に建つ二棟からなる大規模集合住宅。一棟あたりおよそ300戸。築年数は何と40年以上と超築古。こういう場合に気になる修繕積立金は、管理組合がちゃんと運用できているようで、潤沢らしいので一安心。あと耐震性も問題なさそう。

新居が決まって一安心…と思ったのも束の間、妻はリノベーションで大忙し。仕事と育児の傍で業者との打ち合わせを続けている。そんな妻から「電気、ガス、水道とインターネット回線の契約。あと鍵の交換もやって欲しい。」とインフラ整備の任を仰せつかりました。お任せあれ。やりましょう。なんせこう見えてもエンジニアの端くれ。この物件にベストなインターネット回線を用意してみせましょう。

インターネット回線は生命線

東京在住の我が家、ご多分に漏れず、夫婦ともどもインターネットが生活に欠かせない現代人であります。仕事は共働きかつ共に在宅勤務。故に、打ち合わせのほとんどがGoogle Meetなどのビデオ通話。主なコミュニケーションもSlackなどでのチャット。プライベートでもNetflixやYouTubeなどの動画配信サービスをよく視聴しています。もちろん夫婦ともにスマートフォンを所持しています。外出時だけであれば通信容量も通信速度も十分です。しかし、自宅でもとなると全く足りないのは明白です。やはり自宅には高速で安定したインターネット回線がなくては生活に支障が出てしまいます。

望ましいインターネット回線(=接続サービス)を選ぶ上で押さえておきたい点を通信速度の観点で整理します。

最大速度と実効速度

インターネット接続サービスを選ぶときに目にする通信速度ですが、知っておくべき重要な点があります。

具体的に見ていきましょう。NTTドコモが提供する『ドコモ光』の通信速度についての説明を抜粋しました。

『ドコモ光でできること』

ここには大きな文字で『最大1Gbps』と記載されています。ただ、よく見ると『※』が付いており、小さな文字でこう注釈されています。

※「ドコモ光」はベストエフォート型サービスです。記載の通信速度は技術規格上の最大値であり、インターネットご利用時の速度は、お客さまのご利用環境(パソ コンの処理能力、ハブやルーターなどのご利用機器の機能・処理能力、LANケーブルの規格、電波の影響など)、回線の混雑状況、ご利用時間帯によって大幅に低
下します。また、マンションにお住いの方については、当該建物の伝送方式によって最大100Mbps(技術規格上の最大値)でのご提供となります。

『ドコモ光でできること』より

少々回りくどいですが、要は「記載の通信速度は、あくまで最大値なので、実際の通信速度はそれより遅いですよ」と。これは『ドコモ光』に限らず、ほぼ全てのインターネット接続サービスで同じように注釈されています。

この通信速度の最大値は『理論値』とも呼ばれます。一方、実際の通信速度は『実効速度』と呼ばれます。

下りと上り

通信速度を評価する指標はいくつかあります。その中に『ダウンロード速度(下り)』と『アップロード速度(上り)』の2つがあります。

多くの場合、インターネット回線の通信速度は『ダウンロード速度(下り)』を指します。これまでは、テキストをはじめ写真や動画などのコンテンツをサーバーからダウンロードすることがほとんどだったため、ダウンロードする速度だけが注目されていました。

しかし、いまでは、Zoomなどのビデオ通話が一般的に使われるようになったり、個人で動画配信することも増えてきました。こうした場合、ダウンロードする速度だけでなく、アップロードする速度も重要になります。

ビデオ通話に必要な通信速度とは

ZoomとGoogle Meetのシステム要件を具体的に見ていきましょう。

どちらも通信速度は、下りも上りも4Mbpsほどあれば良さそうです。

夫婦ともにビデオ通話することが多い我が家としては、実効速度で下りと上りとも、ちょっと余裕を持たせて15Mbpsを下回らないことを条件します。動画配信サービスを4K画質でも楽しみたいので、欲を言えば、下りの実効速度は100Mbpsぐらいあると嬉しいです。

ちなみに、いま住んでいる物件のインターネット回線は光回線で、通信速度はこちら。このぐらい速度であれば、支障は特にありませんでした。

引越し前のインターネット通信速度

築古マンション、侮るなかれ

管理会社からは「この物件のインターネット回線は、フレッツ光、J:COMネット、Fiber Bitが選べます。」と伺っていました。

「ふむふむ。Fiber Bitは…ちょっと存じ上げませんが、フレッツ光とJ:COMが選べるなら、なんの問題もないでしょ。」と、当初は安易に考えていました。

まずは、フレッツ光から調査。どんなプランがあるのか、初期費用と月額費用も気になります。

物件の郵便番号から提供エリアを調べてみると、選べたプランは『フレッツ 光ネクスト マンションタイプ プラン2B』。サービス詳細のリンクから内容を見てみると…

『フレッツ 光ネクスト マンションタイプ プラン2B』のサービス詳細

…ん? フレッツ光だけど、下り最大200Mbps?? 👀「みんなでいこう、光10ギガ時代。」は何処吹く風ですか。

みんなでいこう、光10ギガ時代。

どういうことなのかさっぱり分かりません🤷

自分はエンジニアであるものの、物理的なネットワーク層についてはクラウドコンピューティングの普及によって触れる機会がめっきりとなくなったこともあり、知識不足が否めません💦

埒が開かないので、とりあえずと思い、とある業者にWebから申し込みました。申し込みを済ませると、すぐさま先方の担当者から電話が☎️

契約するつもりで話を聞いていると…

📞「お申し込みの建物はVDSLとなりますので、通信速度は最大で100Mbpsとなります。」

😯「あー、そうなんですね。」
(え?💦VDSLって何だっけ⁇ 🤔 ってか最大100Mbps⁈😵‍💫…ダメだ。もう話が全く入ってこない😇)

…と、仕切り直すべく契約を保留して電話を切りました😓

『VDSL』、みなさんはご存知ですか?

VDSL とは

そもそもインターネット通信に使う光回線がマンションの各戸にどう配線されているのでしょうか?

ちょっと技術的な話になりますが、少々お付き合いください。

調べてみると、その配線方式は3種類ありました。

  • 光配線方式

  • LAN配線方式

  • VDSL方式

集合住宅のフレッツ光の配線は、3種類あります。
共用スペースに引き込んだ光回線を各戸で共有する「共同利用方式」には、マンション内の配線によって「光配線方式」「VDSL方式」「LAN配線方式」の3つの方式があります。

『集合住宅の導入工事と配線方式について|フレッツ光公式|NTT東日本』

簡単にいうと、光ファイバーケーブル以外に途中で電話線を使って配線しているのが、VDSL(Very high speed Digital Subscriber Line)方式です。ポイントは、通信回線として電話線が用いられるところです。ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)って覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、VDSLはそれと同系統の技術です。

この配線方式で用いられるケーブルによって通信速度の最大値が大きく異なってきます。各ケーブルにも種類があるため、一概には言えませんが、概ね次の順で通信速度が高速になります。

  1. 光配線方式: 光ファイバーケーブル

  2. LAN配線方式: ツイストペアケーブル

  3. VDSL方式: モジュラーケーブル(=電話線)

このように光回線では、本来ならマンションの各戸へも光ファイバーケーブルで配線することが理想です。しかし、既存の建物の場合、後から光ファイバーケーブルを各戸に配線することが難しく、その代わりとして電話回線を流用するのが、VDSL方式です。

この方式は、各戸への工事が不要という手軽さがありますが、最大のデメリットはその通信速度の遅さです。本来、光回線であればGbpsクラスの高速な通信速度が見込めるのですが、途中で電話回線を使うことで最大100Mbpsと通信速度が10分の1以下にまで下がってしまいます。

もしかしたら、あなたもVDSLかも

マンションなどの集合住宅にお住まいのあなた、「光回線を契約してるのに、なんだかネットが遅い気がする」と思ったことはありませんか?

もしかしたら、その物件もVDSL方式かもしれません。

VDSL方式であるかを見分ける簡単な方法があります。それは、室内の壁にある配線パネルの差し込み口を確認する方法です。

この写真のように電源のコンセントとテレビアンテナのコンセント以外に電話回線を繋ぐモジュラージャックしか見当たらなければ、恐らくVDSL方式です。

差し込み口が『モジュラージャック』

「最大100Mbpsならそれなりに速いのでは?」

こうお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは仕様上の理論的な最大値なので、実際にはその何割か程度の速度でしか通信できないのが現実です。特に、マンションなどの集合住宅では、配線方式に限らず、通信回線を各戸で共有するため、利用する戸数が多くなるほど、通信速度が遅くなる可能性が高くなります。

この『最大100Mbps』という最大速度の理論値、参考にモバイル通信と比較してみましょう。みなさんがお使いのスマートフォンは、4G LTE(もしくは5G)で通信しています。その最大通信速度は、総務省が公表している『令和2年度 情報通信白書』によると、次のとおりと言われています。

  • 4G: 下り最大1Gbps程度 / 上り最大数百Mbps程度

  • 5G: 下り最大20Gbps程度 / 上り最大10Gbps程度

ご覧のとおり、VDSLの『最大100Mbps』は、理論的に4Gよりも劣る通信速度です。

通信速度を測ってみよう

みなさんがお使いのご自宅のインターネット回線ならびにスマートフォンは、どのくらいの通信速度が出ていますか?

通信速度を計測するのは、とても簡単です。世の中には、測定サイトや測定アプリがいくつもあります。

今回は『Speedtest』を使って通信速度を測定しています。

使い方は、通信速度を測定したい回線(Wi-Fiなど)に接続したPCやスマートフォンからSpeedtestのサイトにアクセスして、[GO]を押すだけです。

測定が終わると、その結果が表示されます。

ここでご紹介した方法をスマートフォンで試した場合、ダウンロードの通信速度のみが計測できます。アップロードの通信速度も測定したい場合は、Speedtestのアプリを利用してください。

振り返ってみると

過去賃貸マンションを探す時、新築ないし築5年以内の築浅を条件にしていました。築浅であるほど設備が新しいのは当然で、それが住環境としての快適さに影響していました。

それ故、いままでの住んだマンションは各戸までの配線も光回線だったのです。それがもはや当たり前でした。光回線は普通に手に入れられると勘違いをしていました😮‍💨

次回に続く

話はまだ始まったばかりですが、随分と長くなってしまったので、今回はここまでにします。

次回の奮闘ぶりもお楽しみに👋

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