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ゲーム理論


ゲーム理論とは「利害関係を持つ相手がいる状況で、自分と相手の利益を考え、最適な行動を決める」ための思考法を研究する学問です。

この学問は非常に奥が深くて、政治、経済などの規模の大きなフィールドにも、個人の意思決定という小さなフィールドにも適用することができます。ゲーム理論を解釈し、実行することは『人生戦略における最強の武器』となることがだんだん分かってきました。なので今回は僕がチューリッヒ大学でブロックチェーンを用いた技術開発に関わる過程で、並行して学んでいるゲーム理論の本質とその応用について紹介します。

ゲーム理論は端的に言えば「プレイヤーが誰で、どんな選択ができて、その結果起こるペイオフはどんなものなのか」を考えるものです。したがって、例えば最近の中国とアメリカの関税引き上げ合戦も、サッカーのシューターとキーパーの一瞬の駆け引きも、恋愛における異性へのアプローチも、結局のところゲーム理論です。

これの面白いところは、プレイヤーが全員「合理的」であるという前提に立っていないことです。「自身を取り巻く環境に対して常に一貫した視点を持ち続ける」ような人間同士が行うゲームに限定したわけではなく、不合理なプレイヤーの存在を潜在しているという点に魅力があります。現実世界では、合理的な思想を持ったプレイヤーしかいないという状況は逆に稀です。

いかなる状況でも、現状を分析して、自分の力で戦略的優位性を獲得することができれば、それは必ず幸福実現に影響を及ぼします。ゲーム理論の最大の魅力は、ビジネスでもプライベートでも、参戦するゲームを自分が主体的に形成していくことで、戦う「前に」勝利できるということにあります。

ピーター・ティールが、
"Monopoly is the condition of every successful business."
「独占は、全てのビジネスの成功の条件である。」

と言うのは、競争によって生まれる利益は、プレイヤー同士が自らの得られる恩恵を削りあっているに過ぎないと言う意味で、結局のところ、この独占状態と言うのは「ナッシュ均衡に陥ってお互いが睨みをきかせているような状態をつくり出すよりも先に勝利する」というゲーム理論の思考が中心にあると僕は解釈しています。

では実際にどういう戦略があるのかについて具体化して話していきます。

ゲーム理論においては、「囚人のジレンマ」というテーマが有名です。
簡潔に言えば、A,Bという2人の囚人に対して

囚人AとBがともに黙秘する → 双方懲役2年
囚人AとBがともに自白する → 双方懲役5年
片方の囚人が裏切る → 自白した囚人は懲役0年、黙秘した囚人は10年

というルールで展開されるゲームです。
他人の戦略を所与とした場合、どちらの囚人も自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせをナッシュ均衡といい、今回においては「両者が自白する」という選択がそれに当たります。しかし、両者とも自白をしてしまった場合に比べたら、両者とも黙秘をした場合の方が刑が軽く、望ましい状況です。これをパレート最適といい、全体にとっての利益が最大となる状況を表します。また、囚人Aにとって、相手が自白しようがしまいが、自分は自白をしておけば最も大きなリスクである懲役10年を避けられます。この状況を支配戦略と呼びます。

これを日常に抽象転用すると、各携帯会社の月額使用料の価格設定や、恋愛における男女の浮気に対する行動の最適化などにも当てはまります。

僕自身は今、これを数学的に、より厳密に測定するうえでどういった計算が必要になるか、そして戦略の1つ1つを確率や期待値やベクトルや行列を用いて計算することで、最適化プロセスを導き出すといったことをしています。(難しすぎて苦戦しまくってます。)

最後にもう1つ個人的な話として、なぜブロックチェーンを学ぶうえでゲーム理論を学ばなければならないのか、考察を書きます。僕の見解では、世界中のノード、マイナー、ハッカー、政治家、法律家、一般ユーザーなどを「プレイヤー」と定義したとき、PoWにおける51%攻撃の問題や、それ以外のマイニングシステムに対して、各々のプレイヤーの性質や、戦略を考慮する必要があるためだと理解しています。また、それだけでなくゲーム理論を駆使してブロックチェーンの中に高度なインセンティヴの設計をしないことには僕の目指す医療分野での応用はまだまだ現実性を帯びないことも最近分かってきたため、今後も試行錯誤を繰り返しながら診療におけるトークン付与のインセンティヴ設計を試みようと思います。

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