【ジャズ】メトロノームを使った練習法について

こんにちは。名古屋でベースを弾いている吉岡直樹と申します。

先日、メトロノームを使った練習法について質問がありました。せっかくなので記事にまとめたいと思います。

万能な練習法はない

前提として、万能な練習法というものはないと思います。練習には、取り組むことで期待できる成果があるのはもちろんですが、実は弊害もあると考えたほうが安全だと思います。

弊害のない練習法もない

私の理解では、弊害のない練習というものはありません。したがって、メトロノームを使ういかなる練習法にも、弊害があると考えています。

だから、メトロノームを使った練習をするな、ということではありません。なぜなら、メトロノームを効率的に使うことで得られる成果は決して小さくないからです。ではどうするか。複数の練習を組み合わせて、できるだけ弊害を補うように心がけるのです。

学習段階にもよるのですが、例えば、メトロノームを使うことで、メトロノームやほかの音に合わせる癖がついてしまうという弊害があったとしましょう。そうであるならば、メトロノームなしで練習してみるとよいでしょう。その練習を録音して聴き返すことで、自分の弱点が見つかるかもしれません。それを克服する練習方法が見つかればしめたものです。

その練習が成果になるか弊害になるかは到達段階にもよる

九九をきちんと覚えていないのに、割り算や分数を使った計算を解かせるには無理があります。また、スケートの初心者に三回転半ジャンプを練習させても効果は見込めないでしょう。

楽器の習得にも同じことがいえます。技術や音楽の理解度に合わせた適切な練習方法があります。同じ練習であっても、ある人には成果が見込まれ、また、別の人には弊害となることもありえます。また、ある時期、成果をあげた練習方法が将来に渡って有効であるとも限りません。上達にあわせて練習方法も変化させていくべきと考えます。

メトロノームをどのように鳴らすか

さて、メトロノームのお話です。

基本的に各拍で鳴らす

一番オーソドックスなメトロノームの使い方は、各拍で鳴らすことでしょう。4/4拍子や3/4拍子では4分音符のタイミングで鳴らしましょう。

また、6/8拍子や9/8拍子では、付点4分音符音符のタイミングで鳴らしてもよいですが、ゆっくりのテンポであれば8分音符ごとに鳴らす方法も有効だと思います。

4拍子の、2拍目と4拍目で鳴らす弊害

ある学生ジャズ研に指導にいったときに、4拍子の曲を、2拍目と4拍目に鳴らして個人練習していた人がいました。なかなかスムースに演奏しています。

「なぜ、そのように鳴らしているの?」と尋ねたら、「ハイハットの位置だからです」という明確な答え。

そこで、「試しに、1拍目と3拍目でやってみて」と言ってやらせてみたら、全然できないのです。

そもそも、なぜメトロノームで練習するのでしょう。人によって答えは異なりますが、おおまかにまとめると、

  • テンポがキープできているか確認するため。

  • 安定したリズムで演奏できるようになるため。

といったあたりに集約できるのではないでしょうか。つまり、前者は診断的に、後者は訓練的に(トレーニングとして)メトロノームを使っているのです。

では、2拍、4拍で鳴らす狙いとはなんでしょう。

各拍、すなわち1拍ごとに鳴らすよりも間隔がまばらなので、より安定したリズムで演奏できることが求められるし、またそのチェックになりますよね。

それでは、1拍、3拍で鳴らしてはいけない? そんなことはないはずです。キープさえできていれば、1拍、3拍で鳴らしたとしても、2拍、4拍で鳴らしたとしてもそんなことは関係ないはずです。

私は、ジャズのドラムのサンプル音源を1拍ずらして演奏しろ、なんて無茶を言っているわけではありません。相手はメトロノームです。メトロノームをハイハットの位置である、2拍、4拍で鳴らすことも、また、強拍である1拍、3拍で鳴らすことも、どちらも同じくらい自然なことだと考えています(同時にどちらも同じくらい不自然なことともいえるかもしれないのですが)。

ゆえに、2拍、4拍で鳴らしたらスムーズに演奏できるのに、1拍、3拍で鳴らした途端、演奏ががたがたになるのだとすれば、やはり練習方法にいびつなものを感じるのです。

ではメトロノームどこで鳴らすか

メトロノームを診断的に使うにしても、訓練的に使うにしても、結論としてどこで鳴らしても演奏できるようになればそれに越したことはないと思います。

基本は各拍で鳴らすことです。

次に、4拍子であれば、

  • 1拍目と3拍目

  • 2拍目と4拍目

どちらもできるようになればよいと思います。これは日替わりでチェンジするとか、あるいは、1回ごとにチェンジするなど工夫して、なるべく均等になるよう練習すると良いでしょう。基礎練習であればここまでで結構だと思います。

以下曲のような実践的な場合です。4拍子を前提に書きますが、

  • 1拍目のみ

  • 2拍目のみ

  • 3拍目のみ

  • 4拍目のみ

で練習してみましょう。これも、どれも均等になるように工夫します。速い曲であれば、

  • 偶数小節の1拍目のみ

  • (中略)

  • 偶数小節目の4拍目のみ

  • 奇数小節目の1拍目のみ

  • (以下略)

という方法も有効でしょう。私だったら、テンポを上げるごとに、メトロノームの位置をローテーションさせますね。

各拍のウラで鳴らす

曲の場合は、各拍のウラで鳴らすとよいでしょう。4/4拍子の場合、8分音符を8つ並べたときの、偶数番目の位置で鳴らします。

これも、各拍のウラから始まって、2拍ごとのウラ(2パターン)、4拍ごとのウラ(4パターン)の合計7つくらいの鳴らし方があると思います。

ある高校生のベーシストが、電子メトロノームの3連中抜き(つまり各拍の3連音符の1つ目と3つ目)で鳴らしていて、「へえ」と思ったことがあります。おそらく、メトロノームの訓練的な使い方なのでしょう。

そのときは、3連符の3つ目の位置を学ぶための良い方法かな、となんとなく思っていたのですが、今の私ならおすすめしません。あの位置は、3連符の3つめではなく、ネイティブにとってはどうやら8分のウラという認識らしいということ、さらに、リズム・セクションは、8分のウラからの間合いで拍のオモテの位置をコントロールしていること、などが主な理由です。

各拍のウラで鳴らす練習は、楽器のコントロールがある一定以上のレベルで滞りなくできているということが前提になるでしょう。よってかなりハードルは高いと思います。初心者のうちはできなくても悲観する必要はないでしょう。まずは、楽器のフィジカルなスキルに磨きをかけましょう。

音楽のリズムごとの鳴らし方の工夫

16フィールの場合は、16分音符のそれぞれの位置、すなわち、拍のアタマ、16分の2目、8分のウラ、16分の4つ目、の、4つが当然のことながら視野に入ってくるでしょう。これを、各拍でもよいですが、2拍ごとくらいに練習してはどうかと思います。

また、例えばボサ・ノヴァのような、イーブン(8分音符がバウンスせず均等)のリズムでは、1拍半ごとに鳴らすという方法があると思います。音楽的にはかなり微妙で、否定意見も当然あるでしょうが、あくまでもトレーニングと割り切って少しやる分にはよいと思うのですがどうでしょうか。

また、メトロノームによってはラテンのクラーベのパターンで鳴らせる機能もあります。ラテン音楽は私の専門外なのですが、専門の方に賛否をぜひ教えていただきたいです。

まとめ

以上まとめます。

弊害のない練習法というものは存在せず、どのような練習法にも必ず弊害があります。

メトロノームを使うことにも弊害が当然あります。しかし、メトロノームを使わずに成果を逃してしまうのはよいことではありません。よって、メトロノームの鳴らし方は1つの方法に固定せず、なるべくいろいろな鳴らし方をまんべんなく試すことが重要だというのが私の考えです。

もちろん、たまには、メトロノームを使わずに練習してみることも重要です。その場合は、練習を録音して聞き返してみるとよいでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?