正社員と非正社員の均衡処遇


正社員と非正社員の均衡処遇
一 住宅手当や扶養手当について
 有期労働契約者と無期労働契約者の賃金格差について、諸手当の格差是正を求める訴えに対する裁判例において、住宅手当や扶養手当について格差是正が認められているのは、これらの手当が職務の内容等により差異が生じるものではないと判断されているからである。すなわち、労働契約法20条を、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違がありうることを前提に、職務の内容及び配置の変更の範囲そのほかの事情を考慮して、その相違が不合理と認められるものではあってはならず、職務の内容等の違いに応じた均衡の取れた処遇を求めている規定と解したうえで、住宅手当や扶養手当は生活費補助の趣旨で支給されているものであるから、有期労働契約者と無期労働契約者との間で格差があってはならないとしている。
二 基本給や賞与、退職金について
 これに対し、基本給や賞与、退職金は、長期雇用を前提とする正社員に対し、その支給を手厚くすることにより有為な人材の人材の獲得・定着を図ることを目的とし、賃金の後払い、功労報償などの性格を有することから、有期労働契約者と無期労働契約者との間に一定の格差があっても不合理とは言えないとするものである。
 もっとも、有期契約であるからといって、契約が原則更新され、定年が定められ、事実上無期契約と異ならない勤務状態であった場合には、退職金支給を認める裁判例(東京高裁判決・H31・2・20)も認められ、一概に有期と無期の契約内容から一義的に処遇格差を肯定しているわけではないことに注意を要する。
三 まとめ
 以上のように、裁判例はそれぞれの労働契約者が負う職務の内容や配置変更の範囲などを細かく検討し、一方で、賃金等に関する労働条件についても、職務の内容におよび配置変更の範囲等を詳細に検討することで、経営者側にバランスが取れた処遇をとるよう求めているように評価できる。

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