取引関係 Dr. side

若い頃から自覚はしていた
男も愛する対象になる、と

人生のパートナーとなったのは、女性
妻を、心から愛していた
嘘偽りなく、そう断言できる

だが、
同時に誰にも打ち明けられない
大切な想いも抱えていた

看護学校へ出向いた際
彼を、見つけてしまった
自分の気持ちに確信を持つのに
さほど時間はかからなかった

好きで、たまらない
だが、この気持ちは、隠さなければ

病床の妻に笑いかけながら
彼を想う気持ちが増していくのを
止めることは、ずっと出来ずにいた

ほどなくして
彼女は私のもとから旅立った

数年経った今、
彼は立派なナースとして
自分の傍にいてくれている


ある夜
病棟の飲み会があった

にぎやかな一次会のあと
いきつけの店に移動し
二人でゆっくりと語らっていた
実に幸せな時間が流れた

つい、 …気が、緩んだ

ずっと、自分のものにしたかったと
金をチラつかせ、下卑た誘い方をした
OKする筈無いという判断を酒が鈍らせた

まぁ…当然、彼に、拒絶された

だが、しかし数ヶ月後
思いもよらぬ「チャンス」が訪れた

(ノック音)
入りなさい…あぁ、君か

先ほどのねぇ
カルテを見た限り
恐らく、もって半年…と見立てたが
間違っていたかな?

うむ、お願い、助けて……ねぇ
まぁもちろん
医者として全力は尽くすつもりだがね

ん?あぁ…君の身体を
あの夜の、か
勿論、覚えているよ

ただそれは、君次第だと思うがね

君を、
俺の好きにして本当に…いいのかい?
何をされるか分かってもいないだろうに

それに、彼が目覚め
俺と君の真実を知ってしまった時
一体、どう思うんだろうねぇ

おやおや、随分と『お願い』が多い

ま、良いだろう
精々俺が飽きるまで、楽しませて貰うか

(机に鍵を置く)
これはうちの鍵だ
もちろん、一緒に暮らすのだよ
二人きりで

妻に先立たれてしまってね
独り身になってだいぶ経つ
身の回りのことも少し、頼みたいのだ

それから
(耳打ち)
君は“男を知っている”のかね?
その彼…とは?……そうか、“まだ”か

それは、残念だったなぁ
“あの夜”、拒んだ筈の儂が
君の初めての男になろうとはな

私が一から男を教え込んでやろう
なぁに
すぐに可愛い声で啼くようになる

ところで
儂の条件を知った上でもう一度
君にその覚悟があるのか、確認したい

こちらへ来たまえ
君から儂にキス、できるかね?
おや、それくらいで狼狽えるようでは
この話は無かった事にしてもいいんだが

そうか、では…
(素っ気ないキスをされる)ちゅ

ははっ、あまり経験がないのか?
もっと色気のあるキスをするのかと
思っていたんだがなぁ

こんな風に
ん…んっ…んんっ…ぢゅくっ…ん…

ほぉ……
ふふっ、いい目をになった
これは開発しがいがあるかもしれん

それでは、また夜に

待っているよ


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