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ナンバーワンは達成するもの?

こちらの記事の続きです。

成功と幸せの間には何の因果関係もなく、

ACT心理療法で言う所の「自分の価値に合った行動」を継続することで、気づいたら目標としていた地点にたどり着いていた

ということが成功者と呼ばれる人たちがフォーカスしていること、だと言う話でした。


ここで僕の体験談をシェアしたいと思います。

小さい頃から僕の父は「誰もやっていない分野でナンバーワンになりなさい」と言うことをよく教えてくれました。

そして僕はこの言葉を信じ「常に自分がナンバーワンになれるようにするにはどうしたら良いか」について考えるようになりました。

実際のところ、父が言いたかったのは「自分だけの価値を大切にしなさい」と言うことだと思います。


しかし、子供時代の僕には、その違いがわからず、1番になるために人と違うことをしなければいけないと言うことを自分に行か言い聞かせてしまったのです。

ですから、自分のポジションについて常に考えるようになりました。

小学校でも中学校でも高校でも、勉強の成績も運動神経もクラスや学年でいえば常に「真ん中」、悪くは無いけれどもよくもない、努力すれば少しできるようになるけど1番にはなれない、そんな学生時代を過ごしました。


「一番になれないんだったらいいや」と中学、高校と勉強することを諦めました。

そして部活(マーチングバンド部)に明け暮れたのです。
僕はスネアドラムの奏者をしていました。


吹奏楽部と違い、マーチングバンド部がとてもニッチな分野なのであまり競合はいません。「これだ」と思い、毎日毎日学校でも家でも必死に練習しました、唯一のライバルは先輩でしたが3年生となり先輩がいなくなると、

今度はもっと活躍したい、挑戦したいと思い、アメリカ留学を決意。マーチングバンドの世界大会を目指すことにしました。


その当時、高校生の時から、プレイすることを夢に見ていた「チーム」があります。そのチームは、世界大会で優勝回数が最も多いチームです。

このチームのメンバーは毎年オーディションによって決まります。


1年に1回だけのチャンス。


「このチームになんとしても受かりたい」、そう親に伝えて、頭を下げ、留学する費用を捻出してもらい、何とか留学を実現します。


留学後、オーディションにすぐに受かるわけはなく、2年連続で不合格になってしまいましたが、3年目「最後のチャンス」となる年に、何とか合格することができました。


留学してから4年目のことです。


合格発表の瞬間、僕はたまらなく嬉しくて、何度も何度も喜びを噛み締めました。

なぜなら、このチームにのオーディションに受かることだけを考えて、家族の元を離れ、友達と遊ぶことも出来るだけ控え、ただただ練習を繰り返し、ご飯を食べる時も、夜眠りにつく時も、合格することを夢見ていたからです。

実は、アメリカでは友達がほとんどいませんでした。


友達と言えば、ドラムをしているルームメイト。そして、目標としてチームでプレイしたことがあるOBのアメリカ人を捕まえては、一緒に練習しよう、一緒にドラムしよう!と言って、スキルや知識をとにかく盗んでいました。


オーディションに受かった時は、両親や家族、先輩や先生、これまで一緒に歩んできた仲間たち、みんなへの感謝が溢れてきました。


でもなぜでしょう。僕の中にあった、世界トップチームのオーディションに受かると言う夢が達成された瞬間。僕のやる気は一気になくなっていきました。


大会に向けた練習は毎日あります、常に撮影部隊がついていて練習や本番の様子を収録されているような、環境でしたので、プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、必死に練習に明け暮れました。

気づけば、精神的なやる気だけではなく、体力もどんどん衰えていくことに気づきます。世界大会までのツアーの中で何度か体調崩してしまいました。チーム戦なのでチームメンバーにもその分、負担がかかります。

「オイ、NAOHIRO、ダイジョウブカ??」とアメリカ人のチームメートから頻繁に言われるようになりました。


こんな大変な状況ながらも、実は僕は同じ大会のソロコンテストでも優勝できたらと、思ってソロコンテストの出場エントリーをしていました。

このソロコンテストは任意による参加なので、団体種目の練習(8時から夜9時)が終わってから、みんなが就寝した後(22~23時)に睡眠時間を削って、オリジナルのソロ曲を作りながら、その練習を繰り返しました。


一番になりたい、と言う思いで、団体種目とソロコンテストの両方の練習を心身ともに疲れきるまで、ほぼ毎日3カ月間続けました。

所属していたマーチングバンドはメンバーが150人ほどいるため、一人ひとりにトレーナーやコーチがつくわけではありません。

個々のメンタルやフィジカルの管理、パフォーマンスを最大限に発揮するための自己管理は、誰も助けてはくれません。


そんな中、僕は、「目標達成したにもかかわらずなんでこんなにもやる気が出ないんだ」と思いながら、そのことを頭から遠ざけるかのごとく、ひたすらドラムの練習ばかりをしました。チームメートとも距離を置くようになりました。


正直なところ練習しても練習しても上達してる感じにならず、むしろやればやるほどうまくいかず、イライラが募るばかりでした・・・


ソロコンテストの当日、僕は緊張と疲れからか全く集中ができず、演奏はボロボロでした。スティックを2回も落とし、僕の目の前で座っている審査員の人が下を向き首を振る様子が見えました。観客にはもちろんチームメイトやチームのディレクターもいました。


演奏しながらいますが早く終わって欲しい。と言う気持ちが湧いてきました。演奏終了後、またすぐ1人になり悔しくて、悔しくて涙しました。


続いての団体種目では、「しっかりと心を切り替えよう」と思い、何とか大きなミスもなく演奏を終えることができましたが、優勝の最有力候補であった僕たちのチームの結果は3位でした。


世界大会のシーズンが終わり、後から振り返ると、ちゃんと疲れを取らなかったから、もっと息抜きをすれば集中もできただろうと思うようになりました。

できるだけ長時間の練習を避け、心も体もリフレッシュしようと思いました。


ちょうど現在の妻とアメリカで一緒に暮らし始めたのもその頃で、毎日が楽しく感じました。

毎日楽しくて充実していましたが、やはり「ナンバーワンになる」と言う考えが、頭から離れず、次の目標を定めます。


そして帰国前、アメリカでプレイする最後のチャンスとなった、「打楽器だけの世界大会」への挑戦を決めました。

今回もチーム戦となり、チームに入るためのオーディションが毎年行われますが、何とか合格することができました。

ここでの僕の目標は当然「優勝すること!」。そしてチーム全員も絶対優勝する!と言う覚悟でいました。そしてその大会で念願の金メダルを獲得することができました。


ハッピーエンドと言う話かといえばそうではありません。僕は金メダルを手にし、「これでやっと終わった。よかった。」と言う気持ちになりました。

それは苦しいことに我慢して、目標を成し遂げた後にある達成感ではありましたが、どちらかと言えば本心は「終わってよかった」と言えるものでした。


日本に帰国して、プロミュージシャンと呼ばれる方々と少しだけ演奏を共にしたことがあります。

世界で活躍されるような方々です。そこで僕は圧倒的なマインドの違いを思い知らされます。

僕のマインドは、何とか本番を成功させたい、何とか一番上手に演奏して喜びたい。と言うものでした。でもプロのミュージシャンの方は違いました、彼らは皆さん「演奏自体」を超楽しんでいたのです!!


・・・僕は腹の底から納得しました。「なるほどぉぉぉぉぉぉぉぉ!そういうことか」

これが僕が長く続かなかった理由か、これが僕が目標達成するとやる気がなくなってしまう理由か、これが僕が練習で得た実力を本番で発揮できない原因か。とです。


これは、あらゆる分野で言えることです。

収入を伸ばしたい起業家、お客さんをたくさん集めたい経営者、事業を大きくしたいオーナー、会社で良い成績を収めたい営業マン、ミスなく仕事を終えたい事務員、

そして当然アスリートや芸術家にも当てはまることでしょう。


ここでの教訓は、
ゴールや目標達成が、優先順位の「1番」になってしまうと

・慢性的な不足感や不満足感

・精神的なストレスによるパフォーマンスの低下

・達成後の空虚感

・人間関係の欠如

が引き起こされる可能性が多いと言うものです。


目標達成やゴール思考はとても大切なことですが最も優先すべきものではありません。

このことを理解することがとても大切だと思います。


もし「自分もナンバーワンになることに重きをおいている」という人がいれば、
次の点を意識しましょう。

→ナンバーワンは達成するものではない、肩書として名乗るもの。「なる」ためのものではなく「在る」ためのもの。


それではまた!






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