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初バイトの思い出
時期としては完全に外れてしまった話だが、ふと思い出したので、初めてしたアルバイトの思い出を独りごちる。
それは高校3年生の時。
6月のインターハイ都予選で破れて剣道部を引退して迎えた夏休みは、受験勉強以外は暇だった。
学校としてはアルバイト禁止だったが、この先の模試や受験料、あわよくば冬用のコートのお金くらいは自分で稼ぎたい。
そう思って区報を眺めていたら、夏休み中の短期アルバイトの募集があった。
時期限定で区民に開放する区立小学校プールの受付業務。
区のやることだし、期間限定だし、14日間休みなしはなかなかだけど、どうせ暇だしで応募した。
配属されたのは、校区としては3つ離れたくらいの小学校。
ここで8月前半の14日間、ひたすらの受付業務にあたる。
開放前は、更衣室とトイレの清掃、受付の準備として会議テーブルに名簿の準備をし、貸し出し用の水泳帽を用意する。
開放中は、利用者である近隣の方の対応で、名簿に名前と連絡先を記入してもらい、水泳帽を忘れた人に貸し出しをする。
開放終了後は、更衣室とトイレの忘れ物チェックと清掃、受付周辺に片付けをする。
小学生と思しき子どもが多いけど、中には小さなお子さんを連れてくる親御さんや、近所の高齢の方もいらした。
14日間、毎日水着と水泳帽に肌着でやってきて、肌着を脱ぐだけでプールに入り、帰りは着てきた肌着を着て濡れたまま帰るお爺ちゃんもいた。
どのプールもアルバイトは2人で、ボクはアベくんという男子とペアになった。
爽やかで真面目なアベくんは、高専の1年生。
よくよく話すと、同じ中学の出身で、ボクと同級生のアベくんの弟だった。
すぐに打ち解けたボクたちは、なかなかいいペアだったと思う。
プールで監視員を務める職員さんにも、男2人ペアなのは珍しい(大抵は男女ペアなんだとか)としつつも、よくやってくれているとお褒めをいただいた。
ボクとしても、アベくんの爽やかな笑顔に癒され、引っ張られながら、14日間を無事に駆け抜けた。
今ならLINEの交換して、バイトが終わっても連絡取りあって、なんてなったかもしれないけど、当時はLINEどころか携帯電話もない時代。
バイトの最終日に爽やかに別れを告げあって以来、会うことのない思い出の中の人となっている。
後日振り込まれた人生初のお給料は、模試と問題集になって受験勉強を支え、受験料に当てられ、無事冬用のコートも手に入れた。
これで大学に現役合格できていればカッコいいんだが、そうは問屋が卸さなかったのであった。
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