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ある受刑囚の手記5

身体を許した多くのオスたちとともに、今でもよく思い出すのはジーマのことだ。
私がもっとも多くやりあったメスだと思う。

ジーマというのは今適当につけた、もちろん仮名だ。
受刑者になった時点で名前などなくしたも同じなのだが、やはり受刑者A、受刑者1などでは話しづらい。
以後これと同じと思ってもらいたい。
何の目的もなくホテルの立ち並ぶ区画へ迷いこんでしまうことが多かった。
私自身も人間だった頃に宿泊したホテルのあるあたりだ。
かつての自分を懐かしむ郷愁などあったとも思えないが、帰巣本能めいた習性だっただろう。

よほど高級なホテルのある辺りだと、金づるの観光客たちに薄汚い受刑者など見せまいとして、電気柵までつかって私たちをしめだしていたが、それより下のランクになると事情が違った。
外国人観光客の中には物好きも多くて、あわれな受刑者たちをわざわざ見物に訪れる者もいたから、私たちはちょっとした「観光資源」でもあった訳だ。

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