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夫、バラバラ遺体事件

 読者様へ、前回投稿の「僕とF3」が何故か僕のnoteシリーズでも好評!?だったのでもう一つ過去の事件を記述してみようと思います そんな今回はストックイラストでは無く、ストックフォトでもなく「写真」と言う事にフォーカスした内容となっておりますので、ご了承お願い致します。

 ただし今回の内容はノンフィクションによる備忘録の記述となるのでグロテスクな内容がかなり含まれておりますので、読むのが怖い人や心臓に何らかの疾患を抱えてる人には些か厳しい内容となっている文献なので、ココで画面を閉じるのも一つの手段と思われます。若しくはそれでも知りたい!と言う怖い物知らず・物好きの方はそのまま続けて読んでくれても構わないです。

 そしてこの事件は当時あまりのインパクトに当時映画化された事件でしたが、飽くまでも映画なので内容に結構な「演出・盛り」がありました。そんなココからは当時の編集部員の話と僕が実際に立ち会った事等を含め赤裸々の記述となります。しかしチョッと年数の経っている事件だから僕自身もかなりうろ覚えです。

 よくテレビドラマなんかでも事件記者や新聞記者にフューチャーした映像って結構ありますが、撮影班をフューチャーした映像ってのは少ないと思います。しかしリアルではそんな撮影班も陰の立役者的ながらに結構エグい場面に出くわしています。

 どんなに陰で結果を作ろうが、お手柄は記者に全部持っていかれ、会社ではペーペーだけど外に出ればスター扱い。僕は光を浴びるなんて事は一切なかった、ま、元々スター願望は無いタイプで、寧ろ裏方の仕事が好きだった自分としては当時その立場を微塵にも思いませんでしたが。

 そんなリアルを伝えれたらな~と思っての記述となりますので、それでもよければよろしくどーぞーと言った記述ですのでよろしくです。

 以前の文献でも記述した思いますが僕の職場はローカルな報道関係の職場、そして僕は撮影・現像部員と言う括りでの業務だった。基本記事内容の撮影は編集部員が撮影し、その後の現像処理を僕が一手に引き受けると言った形ではあったのですが、どうしても人手が足りない時は僕も撮影に駆り出されると言った現像7時々撮影3と言った割合での日々の業務でした。

 そんな僕らは職業柄のせいか仕事以外の時でも、何処かで何かの事件に遭遇したらせめて現場写真だけでも押さえれる様にと上からの指示で自家用車に日々何らかの撮影機材を積んでおくように言われていた。その時編集部員はともかく何で僕までそうしなきゃならんのだ?と疑問を抱いていました。

 プライベートな時間まで仕事に拘束されたくない!休日くらい写真から解放されたい!!と言う事から複雑な胸中でしたが、とは言え上からの指示である以上逆らう事も出来ず、かと言って鵜呑みにする事も出来ず、そんな複雑な気持ちがブレンドされた拒絶反応を示すも、この職場にいる限りは避けては通れない事なのか?と思い結局自家用車のダッシュボードにコンパクトカメラを忍ばせてましたわ…。

当時の定年退職する某支局長から譲り受けたコンパクトカメラ

 そうこうしながらある程度の月日が経った時でした、当時交際し始めの彼女との休日デートの時でした。その時ばかりは仕事の事を忘れて木漏れ日の様な安らぎに包まれる空間でした。そうしてドライブしたりランチをしたりしながら、お互いイイ感じの雰囲気だったので街からチョッと郊外にある、所謂アダルトな大人が良く利用する休憩施設と言う所に行った時でした。

 その彼女と交際してから初めての行為?所作?儀式?となる為、お互いに気分はルンルンと高揚していました。そして車庫に車をぶち込んで室内へイン!そこの休憩施設は大人の休憩施設と言う事もあり、受付を通さずに部屋に入れる仕組みとなっており、部屋に設置されている精算機に前金としてお金を投入しなければならないと言う仕組みの場所でした。

 勿論アダルトな大人の休憩施設と謳っているだけあって部屋の内装はエロくゴージャスでした。まるでデヴィ夫人が寝泊まりしているかのような西洋風の内装。確かうろ覚えだけど2時間休憩で6千円とかだった気がするのですが、ベッドは勿論ダブルベッド、しかもその当時流行った回転する丸いベッド!今思うと何故ベッドが回転していたのか謎…。

 そうしてお互い身体も軽く汗ばんでいたので、彼女を先にシャワー浴びさせて、僕はその間備え付けのジュースなんかを飲みながら煙草をふかしてました。しばらくして彼女が火照った顔つきでガウン姿で上がり。次は僕の番と言わんばかりに選手交代でシャワーを浴び始めていると、まぁお風呂の湯船も大きい事!しかも〇〇ローションまである!!!エロいやんけ!と、興奮するも一本の携帯電話が鳴った…それは奇しくも僕のガラケーだった。

 そうして彼女が僕に、携帯電話なってるよー!と教えてくれて、僕はびしょ濡れになりながらもバスタオルを巻いて携帯電話を取り上げた。そしてその相手は職場の編集部員の某先輩だった。

僕━ハイ、モシモシ
先━おー北街か
僕━あ、お疲れ様です、
先━お前今どこにいる?
僕━ハイ!?いや、何処って(言える訳ないじゃん!)
僕━……………〇〇近辺の外にいます!!
先━おぉなら丁度良いわ、どこそこの丁字路で交通事故起きたからさ
僕━!?
先━お前チョッと行って絵だけ取って来てくれ、記事はコッチで明日書くから
先━ガチャ、プープープー

 僕はその言葉に絶句した…何でなん!今?はぁぁぁぁっ!そんな遣り取りを不思議そうに見つめる彼女、僕は彼女に事情をかくかくしかじかと説明をするも目に眉間にシワを寄せながらいる彼女、すぐ戻って来ると約束をして半乾きの髪もそのままに、急いで着替え休憩施設の係の人に事情を説明して、サンダーバード号が出動するかの様に休憩施設の車庫の電動ガレージが開かれ、急いでその足で事故現場に向かった…。

 その車中一人きり大声で「何で今なん!?どーせただの物損じゃろ!!」と叫びながら、そこで初めてダッシュボードに忍ばせていたコンパクトカメラが発動した時だったわ…。

 そうして現場に辿り着き警察官が二人で事故処理を行っている最中でした。自分の職業を伝え、取り敢えず事故現場の様子をあーハイハイと言ったやっつけ仕事の如く数枚撮影し、その後ワイルドスピード並みの速さで大人の休憩施設に戻った。気が付くと外はすっかり夕焼けに包まれ、場所が郊外と言う事もありそうこうとナンダカンダで1時間半は時間を取られる始末となっていました。

 そうして部屋に戻るや否やそこにはポツンと一人きりの冷めた顔の彼女の姿、少し温くなったミルクティーが何かを語るように…。僕はすかさずゴメンゴメンと謝るも、「もう時間ないよ、すぐ帰って来るって言ってたくせに、北街君の嘘つき…」と言い放ち、そしてお互い何だかモチベーションも下がっていたので、結局何事も無くその場を後にした。会計の6千円は勿論僕の自腹…遣り切れない思いと釈然としない忌々しい思いをフル充満させながら、彼女を自宅前で落として僕は車内で一人カオス状態だった。

 そうして翌日、編集長に昨日の事故現場の現像したフィルムを渡すも、窓ガラスにフィルムを当ててジッと観察し、んーただの物損だし絵力弱いな~やっぱ電柱二、三本倒す位の勢いでないと、な!北街お前には悪いけどボツだな!。僕はその言葉に愕然とし言葉を失った…頭が真っ白になり、当然言い返せる訳も無く言い返すとしたら昨日の顛末を話さなければならい事になる…。

 そんな遣り切れない思いを僕は工場でひっそりと昨日の編集部員の某先輩に愚痴った。すると某先輩は「くわぁははっ!そうかそんな事が昨日あったのか、お疲れちゃん!」と慰めなのか馬鹿にするかのような高笑いかのようなテンションだった。その某先輩は元々笑い上戸な陽キャなキャラクターの先輩、しかしその後先輩は真顔で僕にこう言い放った。

先━なぁ北街、お前の気持ちは分かるけどこれが大きなネタだったらどうする?同じ現場は二度と無いんだぞ!
僕━はぃ…確かに…
先━状況的にはお前が一番近くにいたんだから、お前が行くのがマストだったんだぞ、その彼女とは次、二度目あるだろう?
僕━……………(あるかどうかなんて分かんねーよ)と胸中を巡らせながら
僕━先輩はそんな昨日その時間何してたんですか?
先━あ、俺?チームの野球の最中よ!だからお前に頼んだんだよ!

 僕は返す言葉が見つからず「タヒねや、アンタが行けよ!」と思いながら、静かに先輩の元から去って行った…だったら6千円返せ!と言う気持ちが拭いきれないケチな奴だった。とまぁ少し話はズレたのですが話を少し戻して、本題に入りたいと思います。それから数ヶ月が過ぎようとした頃に起こった身の毛もよだつような猟奇殺人事件がこの街で起きた。その時は殺人事件だなんて誰もが知る由も無く…。

 この街にもようやく暑さが訪れようとしていた頃、確かうろ覚えだけど、当時の編集員との話と自分の体験を元の話で記述したいと思います。2002年~2003年頃の事件、この街の閑静な住宅街の一軒家で起きた事件だった。当時その一軒家に住んでいた妻が以前から夫が帰ってこない!と地元の警察(所轄)に家出人として捜索願いを出している事から始まる事件だった。

 数年前妻が警察に捜索願いを出している時、最初の内は行方不明として警察も捜査に乗り出していたが、ただ時間だけが過ぎる中、一向に行方不明と呼ばれていた旦那の様子や影は見つかる事無く、捜査はオミヤの様に打ち切られようとしていた。因みにオミヤとは、犯人を特定できず、迷宮入りすること。最も田舎の警察官ばかりだから、捜査の手が温かったのも否めない件だった。そんな旦那の年齢は50過ぎの中年男性との事だった。

 唯一の手掛かりは自宅にあった何かの記念写真に写る男性(夫)の姿だけだった。どうやら旦那の捜索願いは約5年前から始まっていたらしく、そしてその近所の住人たちにも妻が旦那の行方を声掛けをしながら、何か分かったらすぐに教えて!みたいな体を取っていた…そんな妻はその旦那との年の差婚と呼ばれる14も離れた年齢差の夫婦だった。

 当時妻は19歳、旦那は33歳、地元の飲み屋で知り合って結婚はしたものの常に喧嘩が絶えない夫婦で、次第に夫はDV妻は倹約と言う言葉を知らない浪費家・散財屋さんだった。

 それからその妻は数年前に捜索願いを出してからと言う物、何故か分からないが割と贅沢な生活をしていた。地元で人気のある百貨店のスーパーマーケット行くにもタクシーで向かい、タクシーを待たせながら買い物を済ませて又タクシーで帰宅すると言った事を始め、生活に困った様子を微塵にも見せる様子はなく寧ろ綺麗な洋服を着飾ったりと若干贅沢気味な生活を送っていた。ただタクシー会社にツケが貯まっていてタクシー会社と揉めていたとの事だった。

 そんな旦那の姿を最近見かけない事に周囲の住人は一部不思議がっている人もいたけど、かと言って他人の家の事だから深く詮索する事もなく、他人事して捉えていた。どうせ別居や愛人を作っていなくなったんじゃないの的な感覚で。

 そうしてその事件は情報量も少ない事や、何の手掛かりも掴めないことから日を増すごとに完全消滅と言った形で希薄な件になっていた。そうして時は流れ約5年が過ぎた頃、もう一度その妻から捜索願いの連絡があった。そんな声に地元の警察官もやれやれと言った重い腰を上げてもう一度その妻に事情を聴きに行った。

 勿論最初の捜索願いを出した頃に立ち会った警察官達は異動や転勤により殆どが入れ替わっていた面子。しかも田舎の警察署だからいるとしたら自動車警ら隊(自ら隊)と呼ばれる交通整理や事故処理をする連中や後は(ハコ)交番勤務と言った巡査と呼ばれる警官だったりと、温い環境満載。

 その内の警官一人が「一応道警にもヒアリングしておきますね」と言った事でその場は一旦切り上げとなった。それから数日後、道警のから数人の捜査員がこの街にやって来た。それはテレビで見るような背広姿にカーキー色のロングコートを羽織った人達が二人位と言った感じで。その中でも特にインパクトあったのが俳優の伊武雅刀風の道警の人(刑事)だった、所謂「デカ」みたいな。

 当時の道警としても、まぁまぁ職務の怠慢だと泥を付けられるのも何だから一応我々が一度来たと言うポーズを取ると言う事で、しかももう数年も経つ訳だから、これで手打ちにしましょうよ。と言った事件性の様子は一切見せる事も無く、そうして道警本部の連中はその奥さんの元に向かい、まるで過去の何等かの行方不明の事件のテンプレートをなぞるかのように、おごそかな儀式的な質疑応答を繰り返しながら終わりを告げようとしていた事件だった。

 一応周囲の住宅の人達への地取り(聞き込み)的な所作は行ったものの、それはとても緩い形だった。そんな旦那が行方不明になってから数年が過ぎようとしていた事もあり、事件に関する情報は日を増すごとに希釈されながら、一人の道警(伊武雅刀)風がタバコをふかしながら、その妻に自宅で問いかけた。

道━奥さんアンタね今一体どうしたいの?
妻━私はただ旦那の行方が知りたいだけです…
道━まぁ~…ね、こういう事件と言うか話はよくある話だからさ、もう少し旦那の帰り待ちましょうか?それとも一応警察犬でも出しておきますか?でもアレ引き出すとなったら色々な手続きや金や日数が掛かるんだよね、ワハハ。
妻━後はそちらにお任せします…

 そうして旦那の行方不明による捜索はピリオドを打つように終わりを告げようとしていた、そうして翌週になり道警本部から警察犬とそれをリードする飼育員がワンボックスに乗ってこの街にやってきた。それは当時の道警としても一応ココまでやりましたよ!と言った大義名分と言ったポーズを作る為の所作だった。

 そしてその警察犬に夫の私物の洋服や靴下の匂いを嗅がせて暗記させ、飼育員のリードにより自宅周辺をウロウロと徘徊するも警察犬はウンともスンとも言わず、時間だけが悪戯に過ぎて行く。日も夕方に差し掛かり暗くなりかけた頃、もうココには何も無いねと捜査員や警察犬をリードする飼育員も捜査を切り上げようとして時だった。

 そもそも当時から警察犬や盲導犬と言うのは日本でも数が少なく貴重な存在だから余程の事が無い限りそう簡単に引き出すと言った事は出来ない事。そんな警察犬は特殊な訓練を沢山受けているので嗅覚は人間の約6.7倍と言われるドーベルマンの様なでけえ犬だった。

 そうして捜査が打ち切られようとしていた寸前の出来事だった…

 警察犬が妻の自宅の基礎とも呼べるコンクリートに向かい吠え出した!!!そんな警察犬に飼育員は、もうココには何もないよ!と言わんばかりに犬をそこから引き剥がそうとした。しかし警察犬もその場を一歩も譲らず吠えまくる始末。そうしてその自宅の基礎と呼ばれるコンクリの場所を凄ーく良く見ると何だか隣の基礎のコンクリとは違い若干の歪さを醸していた。

 そうしてその状況を妻の一軒家で待機している道警の連中に伝えに行くも気怠そうな動きで現場に向かい、はぁ~んココに何かあるんかい?と不思議そうな表情を浮かべながら、そんな基礎のコンクリを撫でてみるも一軒家を支える基礎のコンクリだけあって人の手では簡単には開かなかった。

 そして一応奥さんに許可を取って警察犬が吠えたコンクリの箇所を数人の力でこじ開けた。そうして何枚かのコンクリの壁を破り真っ暗な中を覗くもホラ、なぁ~んもないじゃん!数人の道警や警察官が代わりばんこに覗くもなんにも見当たる様子はない。

 そうして皆が住宅基礎のコンクリを元に戻そうとした時だった、勢いがあり過ぎて隣で並んでいるコンクリよりも前に押し出し過ぎて、それを元にもどそうとした時だった。薄暗いグリーンのランプらしきものがちらりと光った、最初は⁉と思いつつもコンクリの向こう側から小さく「ブゥゥン、カチッ」と言う微かな無機質な機械音みたいな音が聞こえた。

 それを不思議に感じた所轄の警察官は、はぁ~ん何‼どれどれと言わんばかりにコンクリの奥を覗き込むと、確かに薄暗いグリーンの光がポツンと点灯している…。そこで狭いトンネルを潜るかのように進んでいくと、とにかくそのコンクリのトンネルは距離こそ短いながらに狭苦しい道程だった。

 埃まみれになりながら辿り着くと、そこにはよく鮮魚店なんかで設置されている業務用冷凍庫(ストッカー)が一台埃まみれの状態で設置されいていた。それを見た所轄の警官は直ぐに引き返し伊武の元へと走った。そうして伊武も基礎のコンクリの洞窟の様なトンネルを潜って確認すると、確かに
何かある、と確認して妻の元へ駆け寄り確認を取った。

 そんな奥さんとの会話で了承を得た後、その基礎の奥まった所に潜んでいるストッカーを引き出す事にした。しかし場所が場所なだけにストッカーを引き出すにはある程度の家の基礎を更に崩さなければいけないと言った事態に陥った。そこで警察は地元の建設会社に要請を頼んで必要最低限の基礎の破壊を早急に依頼した。

 そうこうしてしばらくして建設会社の作業員数名がトラックでやってきて幾つかの工具を使いその住宅の基礎を壊し始めた。その時の道具は削岩機と言われる手持ちの工具だった。ガガガガガと音を立てながら家の基礎は徐々に破壊され、大人数人によりその奥まったストッカーは引き出しに掛かった。

 そうして埃まみれの被ったストッカーを目の前に、奥さん立ち合いの元ストッカーを開ける、すると黒いゴミ袋で何十にもグルグル巻きになった大きな人の様な物が入っていた。そうして伊武が、何だこれと言った様子でその黒いビニール袋を軽く撫でるも一部破れかけていた箇所から人の足の指の様な物が見え隠れしていた。

 そうしてその黒いビニール袋の中身を妻立ち合いの元、確認をとるも妻は終始黙秘を貫く始末。そこでテレビドラマなんかでは中身を直ぐに開けて確認するシーンが数多く見られるが、それはテレビドラマの話。実際の検体確認の場合は鑑識と呼ばれる相棒に出て来る米沢守の様な特殊な能力を持った人が検死が立ち合いで無いと触れないのが実際の所だ。そうして伊武は直ぐに鑑識を呼ぶように緊急に要請を掛けた。

 それまで温かった現場は180度に変わり、緊急でブルーシートが家全体に張り巡らされ、バリケードテープと言う黄色い立入禁止のテープで家全体がグルグル巻きになった。そして家の玄関前には所轄の警官が二人ほど警備するように立っていた。そして周り近所の人達も何事かと興味津々な様子で窓から眺める始末と言ったざわつきが喧騒へと変わりながら。

 そうして道内中部から数時間かけて鑑識員が二人ほど緊走(緊急走行)で現場にやって来た。そしてその件は当時僕が勤めていた報道関係にも連絡が入った。そしてそれが編集部員にも入電で伝わり、警察(サツ)担当の番記者(専門箇所への担当の記者)の携帯に連絡が入った。その時僕はと言うと、前回の彼女とのリベンジとして夜の食事のレストランを予約を呑気にしている状況だった。今日こそは!と軽く意気込みながら。

 そうして編集長が「北街、お前暇そうだな、お前も付いて行けや!」と言い放ち、「はいっ!?」と思いながら、僕は何が起こったのか分からないままひょこひょこと編集部員の先輩について行った、その番記者とも呼ばれる先輩はあの野球先輩だった。僕は呑気なテンションで野球先輩の車に乗ろうとするも野球先輩が「お前馬鹿か!カメラ持って来いよ!」と言い放ち僕は直ぐに撮影機材一式が入ったジュラケを取りに行き担いで野球先輩の車に乗り込んだ。

 そうして野球先輩との車内の会話が始まり

僕━何かあったんですか?
先━何か事件あったみたいだぞ
僕━はぁ事件…交通事故ですかぁ?
先━詳しくは分からん、何か人身事件みたいだぞ
僕━人身!?

 そうして現着(現場到着)するにはそう時間も掛からなかった。現着後、野球先輩は僕に外観だけでも押さえて置けと言い残しサツの元へ事情を聴きにと走って行った。そんな警察の遣り取りは割と難しい、先ずは警察用語を沢山覚えなきゃ話にならない。だからこそ特定の番記者が必要不可欠とされていたのだが、僕はジュラケからカメラを取り出し、事件現場の自宅や現場周辺をウロウロと撮影していると、玄関前で警備にあたっていた警官に「何だ君は?」と質問をされ。

 僕は慌てて自分の存在を証明するように野球先輩の車に戻り、報道関係特有の「腕章」と言う物を取り出し、警備の警官にホイッと言った感じで見せた。

 報道関係による腕章の威力は効果絶大だ、国会議事堂であろうとどんな壮絶な立ち入り禁止の現場であろうとその腕章を見せる事でオールフリーパスで現場に立ち会える魔法の腕章だ。そんな自宅の外観を適当に撮影後、玄関前で警備している所轄の人がバリケードテープを剥いでくれブルーシートを捲って僕を家の中に入れてくれた。

 家の中は至って普通のどの家庭にでもある温かみのある風景だった。そこにいた伊武が僕を見て、「誰だ君は?」と声を掛けて来たので腕章かざしてかくかくしかじかと説明すると、ぶっきらぼうな口調でさっさと済ませろよな、と言った雰囲気満載だった。

 基本報道関係のカーストとしては一にも二にも記者はいつだってどの場所でもスター扱いだ、どんな若造であろうとも取材を受ける側の人間は年齢問わず記者にヘコヘコと頭を下げる。何故ならばその記者が機嫌をそこなえば記事にされないからだ。

 それと相反して撮影班なんてのは割かしぞんざいな扱いだ、ただ現場写真撮影するだけだから、サッサと済ませろよな!と何とも因果な商売だと当時は溜息交じりの吐息をはくのが精一杯だった。そして気が付くと自宅周辺は一台の覆面と数台のパトカーによって他人がたやすく入れない様に封鎖されていた。

 因みに余談になりますが、覆面パトカーの見分け方は至って簡単だ、

・ナンバープレートが8ナンバー
・車の屋根部分に展開式のパトライトが装着されている
・車のグリルの奥に赤橙が二橙、スピーカーが装備されている
・トランクを開けると赤橙が二橙装備されている
・社内のルームミラーが二つ付いている
・車内無線用の車外アンテナが付いている

 そしてその情報を聞きつけた報道関係のブン屋さんが何人か集まり、(ブン屋さんとは新聞社の記者の事)そしていよいよ鑑識が埃の被った冷凍庫(ストッカー)に白い手袋をはめて手を掛けた。ストッカーの中を改めて開けると、黒いビニール袋に何十もにグルグル巻きの大きなものに手を掛けると、徐々にビニール袋は剥がされて、中身を御開帳となった。それは紛れもなく人による腐乱しかけた遺体だった。

 そんな遺体からは軽く腐敗の異臭が放つも、鑑識は毅然とした様子で黙々と作業を進めて行く。マスクをした鑑識の手によりビニール袋を静かに剥いでいくと、目を閉じたままとは言え真っ白くなった男性の遺体が確認された。鑑識達は毅然とした対応で、白い手袋をはめながらぼんぼりの様な綿花にアルミニウムの粉をパタパタと付けて現物のストッカーの指紋採取等を獲ったり、遺体の入ったストッカーをパシャパシャ撮影したり。

 因みにその当時は写真界隈でもデジタルカメラが普及し始めの頃ではあったものの、画素数は100万や200万画素と言った低画質だった事も加え、報道関係や警察、広報関係ではデジカメの撮影はご法度だった。何故ならばパソコンでの加工やレタッチによって加工がたやすい理由からNGが大きな理由。まだまだ35㎜フィルムでの撮影・暗室現像と言った手焼きが主流となっていた頃でした。流石に令和現在はデジカメオンリーなんだろうけど。

 その頃、時計の針は夕方を差し掛かっていて鑑識が作業を進めるもその作業は難航を極め、モンを獲ったり(因みにモンとは指紋の事)血痕や髪の毛、手足の爪等からあらゆる物を採取するも直ぐには答えが出せず、その続きは専門的な解析が必要と判断され、あらゆる現場での採取は研行きとまで発展した。そんな研行きとは何かと思い野球先輩に聞いてみた。

僕━ケンイキって何ですか?
先━あ!?あぁ科捜研だよ、
僕━かそうけん?カソウケン?カソウケン?
先━ぉおん、科学捜査研究所!
僕━あの科捜研!?
僕━マジィィイィーー!

 そんな鑑識からの判断で専門的な解析が必要とされ科学捜査研究所に遺体の血痕やストッカーに付着している指紋、遺体のDNA鑑定分析による依頼が始まった。
 
 そうして僕はこの事件、まだ長引きそうと判断したので、野球先輩の車に戻り、予約していたレストランに事情を説明して予定をキャンセルしてもらった。そうして次に一緒に行くはずだった彼女へも連絡を興奮と驚きが入り混じった気持ちで一本入れた。

僕━あーモシモシ、俺だけど
彼女━どうしたの?あ、最近新しいワンピ買ったから今晩それ着て行くね!
僕━あーちょっとその事なんだけど、今日の仕事長引きそうだから今晩予定していた食事一旦帳消しにして!
彼女━は!?どう言う事?
僕━あ、ゴメン詳しくはまた連絡するわ!ガチャ…

 そう告げて急いで現場に戻った。そうして野球先輩がサツや会社の編集長と電話繰り返しながら、僕の携帯にも電話が鳴った。それは編集長からの電話だった。咄嗟に電話に出ると、「おい北街、タマの絵撮って来いよな」との連絡だった。「タマ」とは報道用語で被害者の命の事を示す隠語だ、そうして電話をガチャ切りされて、その瞬間背筋がゾッとした。

 ウソだろ…そんなん撮ったって、どうせ紙面には使わないだろうに…「ファッツ!」そう建前は念の為の今後の資料との大義名分だったが、実のところは編集長の悪戯!?な悪趣味とも言える理由が大半だった。確かに今後の参考資料の一端と言えば一端なんだろうけど…。過去の凡例からそんな絵は使った事が殆どないのが現実だった。

 僕は現場にいた鑑識にその事を伝えて撮影の許可を得た、とは言えストッカーの外観全体をザックリと言った感じでの撮影になったのですが、流石に遺体の足が見えた時は背筋が凍った。そうして撮れるとこまで撮っていると刑事の伊武が妻に再度確認を取った。

伊━奥さんこの冷凍庫の遺体、貴方の犯行ですか?
妻━ハイ…
伊━間違いないですね
妻━ハイ…
伊━どうしーてまたこんな事を!ま、詳しくは署の方で事情聴取しますか?

 そうして事件の真相は牛(容疑者)が完落ちし、(因みに完落ちとは容疑者が全面自白する事を言う)そして遺体の検出は鑑識に任せて、伊武は直ぐに署に連絡をし、「牛の爪割れました」と連絡を取り、(因みに牛の爪とは牛の爪は“割れている”ことから、容疑者が特定されることを指す意味、又は「ホシ(犯人)割れ」ともいう)そうこうと遣り取りが行われ所轄の警察に囲まれながらパトカーへと乗り警察へ連行された。

 よくドラマで見るような、被疑者確保ー!と言いながら手錠をガチャリ!なんてのはドラマの話。リアルは意外と粛々としていて「そのまま」刑事に誘導されてパトカーに乗るのが現実です。そしてあまりにも突発的な事件へと展開した内容なので、深々としたフードを被ったりもなくそのままの姿での連行。

 そうして僕は野球先輩の車に乗り込み野球先輩との車中で

僕━マジっすか!?
先━はぁぁん~長引きそうだな…

 そうして僕だけ会社前で落としてもらい野球先輩はその足で事件の内容を詳しく知る為に警察署へと向かった。そうして急いで暗室へと向かい撮影してきたフィルムを現像に掛けた。現像から上がったフィルムを急いで待機していた編集長へ持っていくと、時間も夜だった為、編集長はフィルムを蛍光灯の両手で広げて照明に近づけて撮ったコマをジロジロと確認していた。

 そうこうしている間に編集部員の取材により各資料が集められ、刑事事件や殺人事件となると、僕が先ず最初に覚えなきゃならないのは相関図だ。事件が複雑化すればする程登場人物は増えるので、処理するコッチ側もそれを短時間で覚えなきゃならない。今回の場合はそれほど複雑な事件(ヤマ)ではなかったので、そんなに難しくは無かったのですが。

 そう言った資料の写真ってのは大概が何らかのスナップ写真や被疑者の自動車免許の様な証明写真が用いられたりする。とは言え僕が撮ったのは家の外観や中の様子、そして犯行現場に使われたストッカー程度だったので、指して大したものでは無かった!?

 編集長からフィルムの指定のコマを暗室で数枚焼き進め、因みにそう言った大きな事件性の場合の写真のサイズはキャビネと呼ばれるサイズで一端仮焼きして(キャビネとは通常のL版の二倍のサイズ)犯行現場の自宅やストッカーの絵を焼いていると、現場の雰囲気が脳裏で蘇り雰囲気負けしてチキンな僕は敢え無く暗室の水道で嘔吐…自分で撮っておきながら。今まで色々な事件や事故を見て来たけど、殺人現場の絵だけは別、いつだって嘔吐コース。

 そうして時刻は定時を回っていたので社内の人員も必要最低限の役者のみ残ると言った形で事態は進行された。僕はもう用が済んだので他の社員と共に帰ろうとしたとき「お前も残れよ」と言われた。何で僕も残んなきゃ?と思い、イヤチョッと、今日…あの…は!?となって

ココで記述している内に割と長文にもなって来た事や古い記憶が少しずつ蘇ってきたので、この先の展開も多くなりまだ長くなりそうな件ですから、続きは次回に持ち越したいと思います!アクセス数が多かったら書くかも…(謎)それでは今回はココまで!さよならー。

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