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大谷選手通訳一平さん賭博問題で考えるアメリカの「zero tolerance」カルチャー

衝撃のニュースが入ってきた。
大谷選手を公私に渡って支えてきた通訳の水谷一平さんが、違法賭博に関与し、大谷選手が一平さんの借金肩代わりをしていたかもしれないと。

現時点で出ているニュースを見る限り、大谷選手の口座から、賭博関係者に送金された記録があるようだ。
そして、一平さんはインタビューで大谷選手が借金肩代わりをしてくれたと言及したそう。
ただしこのインタビューはすぐに公開取り下げになり、一平さん自身が発言を撤回、大谷選手の弁護士より大谷選手は”massive theft"(大規模な窃盗)にあったと発言した。

要は、大谷選手が送金したわけではない、ということを大谷選手側は主張し始めたのだ。
もし大谷選手が、借金の肩代わりをすると申し出て、ご自身で自分の口座から違法賭博関係者に送金したとなると、大谷選手もなんらかの罪や罰則にさらされる可能性を懸念してるのだと思った。

このニュースを見て懸念したのが、アメリカの「zero tolerance」というカルチャー。
toleranceとは、許容範囲・寛容という意味。
それがzero(=0)なので、要は、全く情状酌量しません、許容範囲は全く広げませんよ、というのが「zero tolerance」の概念。

この「zero tolerance」カルチャー、アメリカの至るところにあるんです。

例えば米系外資系企業で働いていた時。
会社のルールに反した人は情状酌量の余地なしで即クビ、というのが「zero tolerance」ポリシー。
実際に、昨日まで普通の顔して働いていた同僚が、急に次の日から出勤しないというのを何回か見かけた。
これは、この同僚が何かしら会社のルールに反することをして、解雇されたということだ。

反したルールや状況は、解雇された従業員ごとにバラバラだが、それにしても非常に厳しく取締られていた印象だった。
白黒はっきりしないようなグレーなものは、ほぼ黒、つまり解雇になっていた印象だった。

留学していた大学先でもこの厳しさを感じた。
論文で参考文献を引用する際のルールなど、めちゃくちゃ厳しく、ちょっとでも引っかかるとすぐに学校の事務部みたいなところに報告が入っていた。

疑念が非常にグレーな時に、その内容を検討して場合によって白判定が出る幅がほとんどないのだ。
白じゃなければ黒、グレーは黒、みたいな雰囲気。
まさに寛容さなしの「zero tolerance」だった。

私が思うに、アメリカにこの「zero tolerance」カルチャーが強いのは、多様性が強い国だからだと思う。
一つの国の中に、あらゆる人種や世界中から移住してきた移民がミックスして住んでいる国、それがアメリカ。
価値観や考え方がとにかく多様で、「普通」や「常識」がない。
一人一人が違いすぎる。

だから、ルールを作ったら、それに対して情状酌量する幅を大きくできないのだと思う。
色んな人がいる国だからこそ、作ったルールはみんな平等にきちっと守ってねと。
そうすることで平和や秩序、平等を保つ国なのだ。

今回の大谷選手の件。
もし大谷選手が、違法賭博はやっておらずただ借金の肩代わりをした際に賭博関係者に送金しただけとしたら、これはグレーな話になる可能性がある。
送金先が違法賭博関係者とは知らなかったとしても、送ったという事実がどの程度ルールに引っ掛かるのか。

彼が違法賭博に関係していないのならば、「zero tolerance」が施行されて、彼が野球を続けられなくなるようなことだけはなんとか避けてほしい。

この「zero tolerance」の文化は、アメリカに長く住まないと実感できないのだ。
悪気はなくても、知らなかったとしても、それで許されない圧倒的な厳しさや平等さがルールにあるのがアメリカだと私は思っている。
アメリカはこの辺の厳しさがすごいのだ。
一度この厳しさを知ると、絶対なめちゃいかんと身が引き締まったものだ。
そのくらい怖い。

やはり一日本人としては、大谷選手の活躍をもっともっと見たい。
なんとかいい方向に話がおさまることを願うばかり。








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