チャイメリカ
2月6日 世田谷パブリックシアター
作:ルーシー・カークウッド
翻訳:小田嶋則子
演出:栗山民也
キャスト:田中圭 満島真之介 倉科カナ 眞島秀和 瀬戸さおり
池岡亮介
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STORY:時代は現代、NYマンハッタンのギャラリーで写真展が開催されている。そこでは天安門事件をとらえた、ある一枚の写真が人々の目を引いている。撮影したのは、アメリカ人のジョー・スコフィールド。白いシャツを着て買い物袋を二つ下げた中国人の男が、隊列を組む戦車の前に立つ、それはヒロイズムの写真である。それはある国を、別のある国がとらえた写真である。
10代の時に北京で撮影した戦車男(タンクマン)の行方を追うジョー、彼の中国の友人ヂャン・リンと兄ヂャン・ウェイ、ジョーと恋愛関係に落ちるイギリス人女性テス・ケンドリック。2012年のアメリカ、1989年の中国、時代と国を行き来しながら、彼らは写真が切り取った瞬間の謎に巻き込まれて行く。(チャイメリカ パンフレットより引用)
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観劇後、心にドーンと何かがのしかかっているような感覚だけが残る。
日本では初上演となる「チャイメリカ」を鑑賞。
場面転換が頻繁でテンポよく、映像(写真)も効果的に使われていた。ストーリーは現代と過去、そして北京とニューヨークを行ったり来たりするが北京のシーンでは赤い色を常に配置していた。アメリカ人と中国人、アメリカと中国。二つの国とふたつの国に住む人間の関係を3時間じっくりと描いている。これを作ったルーシー・カークウッドは現在34歳だが、「チャイメリカ」を作ったときはまだ20代だった。20代でこんな戯曲を創作出来るなんて恐ろしい才能だ。(ちなみにルーシー・カークウッド作「チャイメリカ」よりも先に「チルドレン」という福島原発事故を基にした舞台も上演されているが、それも栗山民夫氏演出である)
印象に残ったことだけメモ代わりに書いておくと
今回の舞台で初めて満島真之介の演技をじっくりと観たが、彼なしにこの舞台「チャイメリカ」は成立しなかったであろう。それくらい彼の演じた中国人のヂャン・リンは素晴らしかった。また、そのヂャン・リン(中国)と対照的な人物としてジョー(アメリカ)を演じた田中圭は、このアメリカ的過ぎるある意味憎々しく浅はかにも思えるジョーをうまく演じていた。このジョーがいることによってヂャン・リンの存在も生きてくるのだから、田中圭のジョーの存在もまた大きかった。
日本人として見た、チャイメリカにおける中国とアメリカ。この中国とアメリカのどちらにも心寄せることは出来なかった。ただ、あの日あのとき、あの場所で失われた大勢の若者たちの熱い想いだけは受け止めた。
あの写真のタンクマンの真相はラストシーンで明かされるが、あの驚きと悲しみを背負った後ろ姿が焼き付いて忘れることが出来ない。
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