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「放っておいたらうまくいく」楽になろうよ②
ぎゃあ、ぎゃあ、という大音量で目が覚めた。
いったい何が起こっているのか、寝ぼけた頭には理解できなくて、その後、
渡り鳥だ、と分かった。
我が家の上空を 覆い尽くしているんじゃないかというくらいの音量だ。
ベッドから文字通り飛び起きて、窓に駆け寄るが、残念、過ぎていったらしい。
時計を見るとまだ5時。
それでも、空はすでに明るかった。
私の寝室には朝日が差し込む。
白いコットンのカーテンしか窓にはかかってないので、朝は容易に目が覚める。おまけに窓を開けて寝るのが好きだ。
すっかり明るくなっていた部屋のベッドの上で、このまま起きようか、二度寝に入ろうか迷いながらも、こんな時のために、ベッド脇に置いてあるアイマスクをかけて寝る体制に入った。
眠りの中から、電話が鳴った。
長女からだった。
出ようか、それとも出ずにこのまま眠っていようか迷いながらも、私の指は電話を取った。
最近、よく思うことは、こんなふうに二者選択のうちにあって、アタマの中では迷ってはいても、カラダ、この場合、私の指が勝手に動いているのに気がついている。
朝、飛び起きて窓に駆け寄る。
アイマスクを取る。
電話に出る。
カラダ、って面白い。
アタマは、全部を手柄にしたくて、さも自分が考えて行動しているように私を錯覚させようとするけれど、実際にはカラダのほうが、選択するより先に動いているのを最近は見逃さない。
アタマで「こうしよう」と思う前に、実はカラダの方が先に動いている、という研究結果があるのをどこかで読んだけれど、それでだったか、私がそんなことに気づくようになったのは。
考えることは、健康的。
でも、考え、それが「思い悩む」にまで発展すれば、それは、大変なエネルギーを使い、私たちを疲弊させる。
考えて行動する、
当たり前のことのように言われるけれど、
考えたあとは、カラダに任せておく。
カラダは私たちが思う以上に賢くて、叡智に満ちている。
だって、この肉体を生まれてこのかた、淡々と生かしてくれている。
すべての臓器を機能させてくれるのは、アタマじゃない、͡このカラダだよ。
それに初めに気づいたのは、長女を出産したときだったのに、そんな真実を長い間、私は忘れていた。
時が満ちればカラダは動く。
必要な言葉が発せられる。
会うべく人に会いに行く。
今はそんなふうに思っているから、暮らしはずいぶんシンプルになった。
仕事も楽になった。
思い悩むストレスがずいぶんと減ったのだから。
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まあ、思い悩むのが好きな人も世の中にはたくさんいる。
私の母がそうだった。
日々のこと、買い物、近所付き合い、仕事のこと、、、
いつも思い悩んでいる姿を、子供の頃から見てきた。
買い物に行っても、思い悩んでさんざん幼い私を待たせたあと、結局何も買わずにデパートを後にすることなんてしょっちゅうだった。
私がある程度大人になってからは、深刻な面持ちで暮らしていた彼女を心配して、相談に乗っていた時期も長くあったけれど、ある日、ピンときた。
思い悩むことは、母の趣味だったんだ。
だから、そっとしておけばいい、と。
母の趣味を私が奪おうとしてはいけないし、それに奪うことなんてとうてい不可能だった。
そして彼女がどんなに思い悩もうが、その悩みは、時がくれば紙吹雪のように、散り散りに飛んでいくのだった。
目の前に現れてくる出来事が、彼女の思い悩みをいとも簡単に散り散りにしていったのだ。それは幻想だったんだよ、と言わんばかりに。
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娘からの電話で、彼女からの要件を聞いた後、私たちはお互いの近況を報告しあった。その頃には私の眠気もすっかり覚めていたのだ。
私も彼女も商売人とあって、共通の話題は尽きない。
商売をしていると、お金のこと、従業員のこと、メニューや仕入れ、メインテナンス、様々な要因が絡んで、たくさんのことを考えるはめになる。
「でもね、考えてから、必要だと思ったら、すぐ行動ってなるけど、放っておく事柄も多いのよ。だって、全部はできないし、答えが出ないこともある。でも、ある日、気が付くと、うまくいってる。あれ、何だったの?っていうくらい。笑っちゃうわよね。」
娘が言うのに私もたくさん覚えがある。
深刻になんかならなくていい、
まあ、なりたかったらなればいいけど。
「放っておいたらうまくいく」
それって名言よね、
と言って二人で笑った。
行動しなければならないとき、カラダはそれをちゃんと教えてくれる。
日々仕事をしてきて、それがよく分かるようになった。
カラダがちゃんとやってくれているのに、アタマで考えたごちゃごちゃで、私は邪魔をしてはいけないな、と思うようになった。
アタマはもちろん考える。それが仕事だから。
でも、考えすぎて、思い悩まない。
思い悩む重さは、私をまったく違うところへ連れて行ってしまうのだ。
まあ、長く商売してきたけど、
「放っておいたらうまくいく」なんて、言い出して、
商売を始めたばかりの、20年前の私に聞かせたら、きっと真剣に怒られるに決まってる。呑気すぎるって。
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