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エッセイ

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2021年8月の記事一覧

おまえこそが月なのだ

すべての暖かい夜 月光の下で眠れ その光を、一生かけておまえの中に取り込むのだ おまえはやがて輝き始め いつの日か 月は思うだろう おまえこそが月なのだと。 クリーインディアンの詩 「森と氷河と鯨」(星野道夫著) 私は北カリフォルニアの山奥で家族と暮らしていたとき、ときどき寝袋を持って、住んでいた小さな小屋の外で寝ることがあった。 風が土の匂いを含み、ゆっくりとそこらじゅうを散歩しているのを肌で感じながら、幾つもの月夜に眠った。 それからしばらくして、日本に戻った

森の中で眠る

夜、仕事を終えて家に戻る。 外に備え付けてあるホットタブに入り、お酒かワインを飲みながら、星や、月を仰ぎながらカラダ中にお湯の温もりが浸透していくのを感じる。 日中はときには40度近くにもなるのに、夜になると涼しくてほっとする。どこかで鹿か、小動物が枯れ葉を踏む音が聞こえてくる。 ふと、今年はまだ1度しかキャンプに行ってないことを思い出した。 お店が忙しくて、休みがほとんど取れない。でも、今年はきっとそういう年なんだとあきらめてるし、それで不満があるわけでもない。

山火事のあとで

北カリフォルニアは毎年この時期、山火事が多く発生する。森や町がわらわらと燃えている。それを近年、ま近で見てきた。 火事を発生させないために、計画停電があって店を営業できないこともあった。毎年、火事のためにあちこちで避難警告がなされて、それが嫌で夏のあいだは予め、他州にバケーションに行く人もいる。けれど、その間に家が燃えてしまうことだってある。どこにいようとも、火事は防げるものではないのだけれど。 去年、娘の家が燃えた。ちょうど彼女はその時、他州に狩りに行っていた。彼女と、