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私の仕事

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北カリフォルニアの田舎で日本食レストランをしています。そんなあれこれ。
運営しているクリエイター

#エッセイ

レストランという場所

テイクアウトのみの営業を続けて1年以上も経ってしまいました。カリフォルニアは6月15日以降、コロナ防止のための規制を全面解除して、現在多くのレストランは食事を楽しむ人々でいっぱいです。 うちもぼちぼちと、店内を開放していますがテイクアウトのみの営業にすっかり慣れてしまって、始めはちょっとあたふたしていました。 ああ、テイクアウトだけのなんて楽ちんな日々だったことでしょう! 店内サービスがないというのは、本当にシンプルな営業形態で、キッチンはまず皿洗いが大幅に時間短縮され

おひとり様のお客様

金曜日の夜。 その日は、なぜか、おひとり様のお客様が多かった。 仕事帰りだったのか、30代くらいの女性がドアを開けて入って来た。 「Hi, How are you?」 挨拶すると、 「Tired」(疲れた)と一言、 にこりともせずに私を見つめた。 「じゃあ、リラックスしてくださいね」、 そう言って、私は彼女を4人掛けの大きなテーブルに通した。 ふつう、おひとり様は、カウンター席か、もしくは二人掛けのテーブルなのだけど。 ハーフボトルの赤ワインを開けて、食事を待って

どこへ行っても大丈夫な人の特徴とは

これまでたくさんの人と一緒に仕事をしてきた。 人生の、次のステップに進むために、うちの店を辞めていく人の中には、私にこんなことを、最後に言わせる人がいる。 「あなたなら、どこへ行っても、何をやってもきっとうまくいくわよ!」 そう言って、送り出させてくれる人がいる。 このように、 「この人は、どこへ行っても、そこでどんどん成長して、うまく仕事をやっていけるだろうな」、 そう思わす人の特徴を、考えてみたとき、次の事柄があげられると思った。 自分から笑顔で元気よく挨拶をす

人は自分の聞きたいことしか、聞きたくないもの

お客様の中には、 様々なことをリクエストする人がいる。 食べ物について言えば きりがないので置いておくけど、 例えば、営業時間前にも関わらず 店内に入れて欲しい、とか、 リザベーションでいっぱいで 席が空いてないことを注げると 不快を表す人、 席に着くなり、青島(チンタオ)ビール、タイティーや、春巻きを注文して、 ないとわかると、ずいぶんがっかりされる。 (アジアをひとくくりにする人は多い)。 こちらはその都度、丁寧に説明する。 きちんと準備を整えて、 お客様を迎

単純作業に祈りを込める

15年も前に、店のダイニングで働いていた人が、戻ってきた。 彼女は私が店を始めた、初期のころのスタッフだ。 5年ほどうちにいた後で、他の町に引っ越し、10年ぶりに家族の暮らす地元に帰ってきた。 今回、店で再び働き始めて、すぐに彼女が言ったこと。 「ねえ、キャンドルはどうしたの?」 それで思い出した。 そうだった、以前はパティオ席にある、小さなエンジェルのそばにキャンドルホルダーを置いていて、開店前にお祈りをしてからキャンドルに火を灯すのが恒例だった。 それは、基本

たったひとつの関係性を現す言葉は。

彼の大好きなキャロット・ケーキにたくさんのキャンドルが灯された。 その日、シフトに入っていた店のスタッフ、全員からのHappy Birthday の歌に包まれて、いつもは座ることのない客席で、彼が家族と一緒に食事をした後の、バースディ・サプライズ。 彼は23歳のときに、うちに来て、その日40歳の誕生日を迎えた。 彼の奥さんが撮った、そのときのビデオがSNSに上げられていて、私はそれを仕事から戻った夜に、何度も見返して、胸が熱くなる。 ずっと一緒に、仕事をしてきた私の相

頭の中の引き出しと、まっさらなアイデア

商売も長くやっていると、その時その時の決断がずい分やりやすくなった。 これまでの経験値があるので、 どうすればいいのか、頭の中の引き出しからいろんなものが出てきて、 掛け合わせて、答えが出てくる。 ちょうど、冷蔵庫の中を見て、 そこにあるものでちょっと洒落たディナーが出来上がるような・・・。 何でも長く続けるというのはこういうことなのかと思う。 けれど、同時に既存の引き出しだけに頼らずに、 新しい可能性にも心をオープンにしておくのは大事なこと。 それなしには面白さも、発

起こることが起こる。誰のせいでもないよ。

6年間、うちでシェフとして働いていた人が 隣町で店を出すことになりました。 店舗を借りて、それを修繕、アレンジしたり、お役所へのペーパーワークなど、たびたび私や夫に質問してきますが、明るい人柄で料理の腕もいい、センスもあるし、情熱的。きっとうまくいくだろうな、と安心して見ていました。 途中、市役所とのやりとりがスムーズでなかったり、規定に沿っていなかったことが判明したり、色んなことがあって、本人は頭を抱えていた時期もありました。予定していたオープンにも間にあいそうもありま

喜ばれて、怒られて、お願いされて。

夜、仕事を終えて家に戻ると、Facebookにお客様からのメッセージが入っていたのを見つけた。それをメッセージしてくれたのは、今日、ディナー営業の真っ最中だったよう。 「電話がずっと通話中ですが、この電話番号であってますか?」 合ってるよ~、と一人言を言いながら、遅い返事をお客様に書く。 「申し訳ありませんでした。テイクアウトの電話オーダーが多くて、ずっと話し中だったんだと思います。できればこれからは、早い時間に予約オーダーを入れて頂ければ助かります」、と。 地元で作

仕事で大切にしていること

カリフォルニアでレストランを始める 北カリフォルニアの小さな町でレストランを始めてから17年が経ちます。 立ちあげたときには7人のスタッフでしたが、一時期は40人近くのスタッフがいました。言い出しっぺの夫は4,5年前から徐々に店から退き、現在は自分が新たに興味のあることをやっています。 小さいながらビジネスをしてきてある日気づいたのは、夫と私はこれまでずっと「波動経営」でやってきたのだ、ということでした。それがこれまでのレストラン経営を支えてきた軸だったのです。 「波動