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私が物語をつづるとき

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終わってしまった夏

夏の午後8時、 南欧の空は、嘘のようにまだ明るい。 底抜けに澄んだ青空と、昼間より少し柔らかくなった太陽。 空気だけは、少しずつ夜の気配を纏いはじめ、優しく私の肌を包む。 午後のエスプレッソだけのつもりで待ち合わせした彼が、まだ隣にいる。 好きな音楽から仕事のことまで、お互い知らなかった部分を埋めるには、エスプレッソ1杯では到底足りなかったようだ。 ふと会話が途切れた時、はっとした私たちは、次の言葉を手繰り寄せながら時計に目をやる。 さぁ、これからどうしようか。