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『問題発見プロフェッショナルー構想力と分析力』

 この本をお薦めしたい人は以下の3名である。
①問題ばかりが山積みしたまま、次のステップが見えない人
②筋の良い解決策を生み出したい人
③『問題解決プロフェッショナル ー思考と技術』を読了した人


1, 書籍情報

 今回は書籍『問題発見プロフェッショナルー構想力と発見力』の解説と見解に関して記述している。

・タイトル:
問題発見プロフェッショナルー「構想力と発見力」

・金額
   
 > 紙  :2,640円
 > Kindle :※無し

・ページ数:p.284
・刊行年月:2001年12月
・備考  :『問題解決プロフェッショナルー「思考と技術」』の続編(と捉え良いかと)




2, 著者情報

 著者は齋藤 嘉則(サイトウ ヨシノリ)氏である。以下に簡単な略歴を記載する。

氏は東大を卒業後、ロンドンの大学で経済学修士を取得、その後マッキンゼーに入り、米国のメーカー企業を経て、株式会社ビジネスコラボレーションで代表をされている。




3, 解説と見解

 本書は問題発見力・分析力に関して言及されている。ざっくりではあるが目次は以下の通り。


第1章 問題発見力が問題解決のクオリティを決定する
第2章 戦略的問題発見の構想力を高める
第3章 仮説思考と分析力は車の車輪
第4章 「拡がり」の中からギャップを生む重要要因を見出す
第5章 「深さ」をとらえ、問題を構造的に把握し、具体化する
第6章 「重み」づけを行い、取り組むべき問題の優先順位をつける



● 第1章:問題発見力が問題解決のクオリティを決定する

 この章では問題発見の重要性について言及されている。

 大きく取り上げられているのは以下の2つ。
良質な解決策は的確な問題設定に起因する
良質な問題が発見できないことには4つの理由がある

良質な解決策は的確な問題設定に起因する
 
そもそも、"問題"とは"目標と現状とのギャップ"である。逆に言うと、現状とギャップのない目標からは問題は発生しない。
 目標、つまりあるべき姿を明確化することが重要で、そこがぼや〜としていると現状とのギャップが分からなくなり、正しい問題が設定できなくなってしまう。

良質な問題が発見できないことには4つの理由がある
 
問題が的確になれば解決策の精度は上がる。が、それは"問題が見つかること"が前提となっている。しかし、その問題を見つからないから上手い解決策が出てこないのである。

 問題が見つからないのには以下4つの理由がある。

①問題を定義する前提となるあるべき姿を的確に描けていない
②現状の認識・分析が低く、正確な把握ができていない
③ギャップの構造を解明して、問題の本質を具体化、そして優先順位づけすることができていない
④実行可能な解決策から逆順で短絡的に問題をとらえるために、拡がりを見失ってしまっている

問題を定義する前提となるあるべき姿を的確に描けていない
 
あるべきが姿が描けていないのには2つ理由がある。
ビジョン構想力、目標設定力が欠如しあるべき姿をイメージできていない
パラダイム変化の認識力が欠如しあるべき姿が間違っている
※パラダイムとは問題をとらえる前提となる構造・枠組み

現状の認識・分析が低く、正確な把握ができていない
 
あるべき姿が明確に見つかったとしても現状の捉え方が浅いor間違っていると誤った問題設定がなされてしまう。
現状の正しい把握を阻害する要因としては2つ理由がある。
現状を直視する問題意識の欠如(WILLの欠如)
現状を把握する分析スキルの欠如(SKILLの欠如)

ギャップの構造を解明して、問題の本質を具体化、そして優先順位づけすることができていない
 
問題のとらえ方が表面的であるがために問題を深堀りできない。そうすると、具体的な問題解決のステップに進めることができない。また、問題を具体的レベルに掘り下げてもギャップの原因の優先順位づけができていないと解決策が散漫になってしまう。

実行可能な解決策から逆順で短絡的に問題をとらえるために、拡がりを見失ってしまっている
 
簡単な解決策から逆順で問題をとらえるため、その後のすべてが行き詰まってしまう。実行することばかりに目を向ける。実行、つまりアクションをガンガンすることは良いとされている。が、問題の本質から遠ざかってしまう行為となる可能性がある。



● 第2章:戦略的問題発見の構想力を高める

 この章では戦略的に問題発見を考える力について言及されている。

その力とは以下の2つである。
あるべき姿を構想する戦略的問題発見力
あるべき姿を構想する戦略的の4P

あるべき姿を構想する戦略的問題発見力
あるべき姿を構想するには統合力、判断力、分解力、観察力の4つのスキルが必要とされており、これはビジネスリーダーの条件とされている。
統合力:限られた現状認識・把握から全体像を組み立て構造化・構想する力
判断力:ビジネスの責任者当事者として主観を含め選択・判断・決定する力
分解力:具体的レベルまで論理的に分解・分析する力
観察力:事実をもとに現状を客観的かつ正確に認識・把握する力


あるべき姿を構想する戦略的の4P
あるべき姿を構想するために役立つフレームワークがある。4つのPだ。

Purpose(目的軸):そもそもなんのためにかを考える
Position(立場軸):誰にとっての問題なのかを考える
Perspective(空間軸):問題を俯瞰して考える
Period(時間軸):どの時点での問題とするか考える



● 第3章:仮説思考と分析力は車の車輪

 この章では現状分析から仮説をつくり、その仮説を分析により検証する"仮説と検証のサイクル"について言及されている。

 仮説思考は問題解決にあたって重要な手段である。その仮説思考の後、分析を進めるわけだが、それはチャートで数値化・可視化する必要がある。そして、可能な限りビジュアルなチャートを作成したい。その際、ポイントとなるのは以下の3つである。

2次元でとらえる(X軸・Y軸の意味をよく考える)
分析から導かれる意味合いを必ず引き出す(SO WHAT?だからどうした?を考え抜く)
定量分析と定性分析を使い分ける(問題の構造やメカニズムを解明する)

データがでたらそれをもとに新たな仮説をつくり、その後新たなデータを算出する。それが終わったら、、、という形で仮説-検証のサイクルを繰り返す。そうすることでより純度の高い仮説が出来上がるのである。


● 第4章:「拡がり」の中からギャップを生む重要要因を見出す

 この章ではギャップの拡がりを正確に捉える方法について言及されている。

 これまでに読み進めてきた「あるべき姿と現状の"ギャップ"」。この"ギャップ"の拡がりを正確に把握することこそが、それを生み出している重要な原因を発見するきっかけになっている。

 筆者は以下のように説明している。

「拡がり」を押さえるということは、ビジネス上の課題を捉える時に、まずどのように枠の大きさや切り口を設定し、問題を見つめるのかということだ。(中略)まず、拡がりを押さえることが分析の第1ステップである。

齋藤, 2001, p.130

 方法は以下のとおりである。
MECE:問題の拡がりを押さえるための基本
トレンド分析:時間軸の拡がりから構造変化をとらえるキッカケを掴む
+/−差異分析:ギャップを生み出す+/-の変化・発生要因を特定する
集中・分散分析:ズレとバラツキからマネジメントのコントロール力をシェックする
付加価値分析(コスト分析):顧客視点からコストを正当化できるか
CS/CE分析(バリュー分析):顧客にとっての現在そして将来の価値を高める 

※CS…Customer Satisfaction。顧客が製品・サービスを利用した後に実感として持つ満足度
※CE…Customer Expectation。顧客が実際に製品・サービスを購入または利用する前に持つ期待値


● 第5章:「深さ」をとらえ、問題を構造的に把握し、具体化する

 この章ではギャップの深さを正確に捉える方法について言及されている。第4章では"拡がり"に、本章では"深さ"に焦点を当てられている。

 深さの重要性について筆者は以下のように説明している。

しかし、数字だけ見ても本質的な問題が見えなければ解決は図れない。したがって、問題の「拡がり」を押さえると同時に、問題の本質となる根本を探らなければならない。そのためには、結果として表面化している数字の本質を探るために、分析の「深さ」が必要となってくるのだ。

齋藤, 2001, p.188

 方法は以下のとおりである。
ロジック:深さを追求する論理の基本回路により、因果関係を掌握する
コーザリティ分析:悪循環の中から解決すべき真の原因を捉える
相関分析:相関関係からビジネス上の因果関係を推定する
シェア分析:ロジックと定量化の連動により構造を深堀りする



● 第6章:「重み」づけを行い、取り組むべき問題の優先順位をつける

 この章ではギャップの重みを正確に捉える方法について言及されている。
第4章では"拡がり"に、第5章では"深さ"に、本章では"重み"に焦点が当てられている。

 拡がりと深さ以外に"重み"がなぜ重要となるのか?筆者は以下のように説明している。

 「拡がり」と「深さ」を押さえることによって、解決すべき問題の全体像とその構造が明確に見えてくる。しかし、「解決すべき問題」といえども、すべてを同時に解決することはできない。なぜなら、解決に必要な経営資源であるヒト・モノ・カネそして時間には限界があるからだ。だからこそ、問題としての重要性はどうか、緊急性があるのか否か、単独の問題なのか、それともいくつかの問題が絡まり合っている複合的な問題なのか等々、問題の「重み」づけを行い、取り組むべき問題を取捨選択しなければならない。
 要するに、「重み」をつけるということは、戦略的に重点資源配分すべき問題を明確にすることと言える。

齋藤, 2001, p.230

 方法は以下のとおりである。
感度分析:影響因子が結果に与える振れ幅を評価し、問題に「重み」をつける
パレート分析(20-80ルール):貢献度に応じて扱いをどのように差別化すべきか判断する
ABC分析:重点分野の中で優先順位づけを行う
ピーク分析:ビジネス活動を集中すべきか平等化すべきか判断する
リスク・期待値分析:不確実性の中で意思決定を行う

※ピーク分析…良い説明サイトがなかったので本文を引用

ピーク分析は時間軸で見た場合の量の変化、特にピークの山に着目して、どこに資源を集中すべきかを検討するもので、トレンド分析とパレート分析の変化版である。

齋藤, 2001, p.260




4, Appendix

 「良い問題を解決するためには、まずは良い問題を設定することから。そのためには「現状と目標のギャップを知り、そのギャップを拡がり・深さ・重み(濃淡づけ)を用いて正確に捉えることが重要となる」。これが本書籍の要約かと。

 ただ、問題は発見して解決するまでがセット。そこで、氏が書かれている『問題解決プロフェッショナルー思考と技術』とセットをすることをお勧めする。


 Kindle版がなくて読了、note投稿が大変だった。が、だとしても一読の価値あり。また読みたい、その際はぜひKindle版で!笑


次回は『良い戦略、悪い戦略』に関してnote投稿したい。

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