『考える技術』
1, 初めに
今回は書籍『考える技術』の解説と感想に関して記述している。
・金額
> 紙 :730円
> Kindle:520円
・ページ数:257
・刊行年月:2009年3月
2, 著者
著者は大前 研一氏である。Amazonの著者略歴によると、氏は早稲田大学理工学部卒業、東京工業大学大学院とマサチューセッツ工科大学院で博士号を取得、マッキンゼーに入社して日本支社社長、アジア太平洋会長を努めた。その後、海外の大学で客員教授となり、現在は株式会社ビジネス・ブレークスルーで代表取締役社長を勤めている。
3, この書籍を紹介したい人
この書籍を紹介したい人は以下3つの考えをもつ人。
・ロジカルシンキングを学びたい人
・大前 研一氏の思考法を学びたい人
・n年後の未来予測を立てる力を身につけたい人
4, 解説
本書は氏がコンサルタントとして活躍していた際に用いていた思考法や、そのプロセスに関して言及されている。
目次は以下の通り。
各章、節ごとに解説していく。
「第1章 思考回路を入れ替えよう」では、論理的思考による問題解決の方法について述べられている。
● 1-1, 経営コンサルティングに学ぶ論理思考
この節では問題解決、先見性、直感といったものは論理的思考あるからこそ生まれるものであるということに関して言及されている。
問題解決、先見性は理解できるが、直感も論理的思考が関わっくるとは思っていなかった。しかし、“筋道立てて考える癖をつけるからこそ逸脱した考えにも発展し、一瞬の閃きを生み出せる。そしてその一瞬を見逃さない”ということで直感も論理的思考に紐づいると解釈している。
● 1-2, 科学的思考のすすめ
この節ではマサチューセッツ工科大学(MIT)で学んだロジカルな考え方がビジネスの世界にマッチするということに関して言及されている。
この章で印象に残っているのは次の文言。
「ほとんどの人は、仮説を立てた段階でそれを結論だと思い込んでしまうが、本当の勝負はそこからだ。問題解決力とは、仮説を裏付けていくために労を惜しまない行動力であり、それが絶対に正しいと結論づけられるまで徹底的に考える思考力であるとも言えるだろう。 実際には、あなたが会社の命運を左右するような問題解決の必要に迫られることは、一生のうちにそう何度もないだろう。だが、武士が戦のないときでも剣の腕を磨いていたように、日頃からこうした問題解決のための思考力を鍛えておくことが大切なのだ。」(大前, 2009, p.40)
最近、仮説思考について学んでいる。上手い具合に仮説立てることができたと感じたらそれで満足し、結論を導くことができたという妙な安堵感を得ている。上述した文章にもあるように“本当の勝負はそこから”で、仮説は問題解決のために行うことであるはずなのに仮説すること自体が目的となっていた(※“仮説の量を増やしていく”と2ヶ月前に宣言したので目的化してしまうのは致し方無いかとも思うが、、、)。仮説思考を使う本当の目的は“問題を解決”することである。
仮説立て、その仮説の裏付けのため行動量を増やし、それが絶対的に正しいと主張できるまで徹底的に考える。そうすれば問題を解決することができ、そしてそれが問題解決力であると記述されている。
「第2章 論理が人を動かす」では、プレゼンなど、人を動かす場面でも論理が重要になってくるということに関して言及されている。
●2-1, 人を納得させるための論理構成法
この節では相手を説得させてたいのであれば論理構成だけではダメで、提案にも組み立てが必要であるということに関して言及されている。
相手を納得させてたいのであれば相手の心理までも考えた論理構成を行う必要があり、その論理構成を生み出す思考回路の組み立て方が人を説得させるノウハウであるとされている。
●2-2, 相手の心を動かすポイント
この節では相手を動かすには言いたい順序ではなく相手が納得する順序を重視することが重要であるということが重要であるということに関して言及されている。
この章で印象に残っているのは次の文言。
『そこで私は、マッキンゼーに入社してからプレゼンテーションやインタビューの練習を始めた。録音テープを回し、目の前にクライアントの会社の社長がいると仮想して、問題分析とそれを解決するための方策をしゃべるのである。実際に頼まれてもいないプレゼンテーションを、本番さながらにやってみるわけだ。外国のクライアントの場合もあるので、同じことを英語でも行った。そしてその録音テープを聞いて、説得力がないと思ったら、内容を修正してまたしゃべる。それを納得するまで何度でも繰り返すのだ。』(大前, 2009, pp.70-71)
“相手を動かしたいのなら徹底的な練習をすべし“、ということはわかっているものの、“これくらいで良いか”という心の甘さが出てしまう質の私にはかなり響いた文言である。
●2-3, 総理大臣に提言してみよう
この節では1、2節で人を説得するための論理構成だったり説得の仕方を学んだわけだが、それを小泉純一郎元総理のコンサルタントになったとして、どうやって提言するのかに関して言及されている。
この節は長すぎるので読み飛ばしてもらっても良いかと。
「第3章 本質を見抜くプロセス」では、この章の冒頭に"問題解決における本質を見抜くとは何か?"に関しての言及がなされている。氏曰く、それは"その問題の本当の原因が何かを見極め、正しい解決法を導き出すこととほとんど同義である"。その問題がなぜ起こったのか、とことんまで追求した先に本質の姿を見られるということ。
● 3-1, 問題の本質が見抜けない日本人
この節では日本人は問題の本質を見抜くのが苦手だが、それも毎日の論理的な思考回路をつくる訓練次第でいくらでも変えることができるということに関して言及されている。
問題の本質を見抜くことは“その問題の原因は何かを見極め、正しい解決方法を導き出すこと“、これとほぼ同じ意味であると氏は述べている。やはりネクストアクション(以下 NA)のための解決方法を導き出さなければ、そもそも問題の本質を見抜くことすらも必要がない(意味がない)のだと感じた。
会議をすると、問題の本質を見定め、解決策を決めたが、NAが未確定ということがたまに起きる。それでは問題の本質とその解決策を導き出したことの意味がなくなってしまい、会議自体も無駄なものとなってしまう。
● 3-3, 当たり前のことで日本企業は再生できる
この節ではファクトベースであることの重要性に関して言及されている。問題を解決するには、例え相手が嫌がっていようと、事実に対して忠実になることが大原則であるとされている。
「第4章 非線形思考の進め」では、この複雑化した世の中では線形思考(方程式に当てはめれば正解が得られるという“直線的な“考え方)ではなく非線形思考でいくべしということに関して言及されている。
この章で印象に残っているのは次の文言。
● 4-1, 線形思考では通用しない
この節では人の言うことを間に受けず、常に疑問を抱き、自分なりに咀嚼することが重要であると言うことに関して言及されている。疑問を抱くのは小さなことでもできることだが、自分の中で咀嚼して仮説をもつということは日々の訓練でのみ鍛えられるものであるとこれまで何度も述べられてきた。
● 4-2, 答えのない問題に答えを見つける
この節では答えのない問題に直面した際、どうするか考える癖をつけるべきということに関して言及されている。
この章で印象に残っているのは次の文言。
『ほとんどの人は、いまだに世の中のことをニュートン力学で考えている。ところが実際には、経済そのものはリンゴではなく、葉っぱがどこに落ちるかという複雑系に入っている。だからほとんどの問題に答えがない。こうした状況で学校の果たすべき役割は、答えがないときにどうするかという「考える癖」をつけさせることだ。解のない問題に対して、なぜなのかを考えて自分なりの仮説を立て、それが正しいかどうかを努力を厭わずに証明する。』(大前, 2009, p.149)
特に、最後に記載されている「解のない問題に対して自分なりに仮説をたて、それが正しいかどうかを努力を厭わずに証明する」ということがこの本で継続して主張されていることで、仮説立て、それを証明するために動くということは氏がどうしても伝えたいことなのであると感じている。
「第5章 アイデア量産の方程式」では、
仮説→検証→実行という問題解決のノウハウを徹底的に身につけ、それを繰り返し行うようにすれば、将来に対して予測することができるようになる。私はというと、明確には仮説を立てない(ソリューション・システムのように、瞬時に頭の中で仮説と検証を行っているかもしれないが)。
● 5-1, 新しい発想を生む思考回路
この節では新しい発想というものは自問自答を行い、問題解決法を端的に瞬時に、そしてしつこく頭の中で構成することで出てくるものであるということに関して言及されている。そして素新しい発想の源になるのは“もしかしたら”という思考回路をもつことであるとされている。“もしかしたら”という発想のもと、それに従い仮説立てを行えば新しい発想というものは抽出できると氏は主張している。
● 5-2, サイバー時代の「大前の思考」
この節ではインターネット時代、氏がどのような思考法をしているのかに関して言及されている。良いアイデアを生み出そうという考えは無駄で、日常の中で論理的思考のトレーニングを行う。それこそがこれからの時代も重要であると氏は主張している。
● 5-3, 古い思考パターンから抜け出す方法
この節では従来の思考から新しい思考回路をもつための方法に関して言及されている。それは以下の3つである。
・常に思考し続ける(歩いているときもお風呂に入っているときも同様)
・考える時は常に緊張感を持つ
・仮説をぶつけあえる友人を持つ
個人的には本書で最も面白い章・節であった。ここは何度も読み返す必要がると感じている。
「第6章 5年先のビジネスを読み解く」では、5年後のみならず、n年後の世の中はどうなっているのかを見通す力に関して言及されている。
● 6-1, 未来の予測は誰にもでもできる
この節では未来予測はひらめきや直感によるものではなく、これもまた論理的思考によって生まれるものだとされている。ここは具体例の話が多いので読み飛ばしていいかと思う。
● 6-2, 五年後の世界を見通すための思考回路
この節では5年後(n年後)の世の中の先行きを見通すためにどのような考え方を持っておかないといけないか、そのことに関して幾つかの例題を用いて話を進めている。ここも6-1と同じく、時間のない方は読み飛ばしても良いかと思う。
「第7章 開拓者の思考」では、従来の考え方を飛び越えた考え方を持つための思考力に関して言及されている。
● 7-1, 古いビジネスの壁を突き破る
この節では既存の価値観を突き破るだけのインパクトを生む思考力、ビジネス的に言うと突破力は“開拓者の思考力”を持っており、従来の価値観にとらわれず、発想や先見線を新しいビジネスやシステム改革に活かしていく論理的思考を持ち合わせているということに関して述べられている。
ここでも例題が使われている。“最終章くらい読もうかな、、、”という考えは捨てて、読み飛ばすのも良いと思う。
●7-2, いざ、荒野へ踏み込もう
この節ではこれからの未来は可能性に溢れており、そこを生きていくには“頭脳という拳銃を磨く”必要があるということに関して言及されている。
この章で印象に残っているのは次の文言。
『あなたが否応なく乗り出した新しい世界、見えない大陸は、限りない可能性と希望に満ちてるが、西部の荒野の如く危険に満ち溢れている。だからこそ、日頃から腰につけた拳銃を磨いておくことが大切だ。毎日が訓練であり、誰と会うときでも真剣勝負のつもりで、つねにベストを尽くさなければいけない。これが平素の生活態度になっている人は、いずれ拳銃の名手になれる。このビジネスの世界における拳銃こそ、あなたの頭脳であり、本書で示してきた七つの思考回をなのである。あとは日々の訓練と実践あるのみ。健闘を祈る!』(大前, 2009, p.247)
最後の文言である。世の中に対するポジティブな見解と、そこで生きていくには常に思考力を鍛える必要があるということが述べられている。この文言だけではないが、本書を通して何事に対してももっと思考していく必要があると感じた。
5, 最後に
筆者が主張し続けていたのは以下の3つであると考える。
『企業参謀』を以前読んだが、それはあまりピンとこなかった(響かなかった、私には難しかったのか?)。しかし、今回の書籍は「考えろ、鍛えろ、動け」の3つのメッセージだけだったので非常にわかりやすく、読み進めやすかった。
ちなみに、今回の書籍にかかわらず、大前さんが書く本は脱線が多いのでは?と思う。本筋から逸れてはいないが、それっていま必要?長くならない?というシーンが多いように感じる。
次回は『本物のデータ分析力が身に付く本』に関してnote投稿したい。
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