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『カスタマーサクセス・プロフェッショナル――顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて』

※CS = カスタマーサクセス

この本をお薦めしたいのは以下3つの考えを持つ人達である。
① CSを学びたい人
② CS組織のマネジメントを学びたい人
③ CSにおける仕事の大枠を学びたい人



1, 書籍情報

簡単ではあるが、以下が書籍情報である。

・タイトル:『カスタマーサクセス・プロフェッショナル――顧客の成功を
       支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて』
・金額
  
 > 紙  :2,530円
  
 > Kindle :2,277円

・ページ数:272ページ
・刊行年月:2021年3月



2, 著者情報

著者は2名、アシュヴィン・ヴァイドゥヤネイサン氏とルーベン・ラバゴ氏である。以下に簡単な略歴を記載する。

●アシュヴィン・ヴァイドゥヤネイサン
カスタマーサクセス企業であるゲインサイトのCCO。
入社前はマッキンゼー・アンド・カンパニーでマーケティング、営業、カスタマー体験のトランスフォーメーションについてのコンサルティングを行なっていた。

●ルーベン・ラバゴ
ゲインサイトのチーフストラテジスト。世界最大のカスタマーサクセス担当職の教育および資格認定プログラムの後継版である「パルス+」を立ちあげ、複数の大学の関連カリキュラム監修にも携わる。カスタマーサクセス担当職の多様性拡大を目的として、ゲインサイトが立ちあげたコミュニティアウトリーチのリーダーも務める。



3, 解説と見解

ざっくりではあるが目次は以下の通り。

第1章 カスタマーサクセスとは何か、なぜそれは素晴らしい仕事なのか
第2部 優れたカスタマーサクセスマネジャーの必須スキル
第3部 カスタマーサクセスの実践
第4部 優れたカスタマーサクセスマネジャーを育成し、流出を防ぐ


各章ごとに解説していく。



● 第1章:カスタマーサクセスとは何か、なぜそれは素晴らしい仕事なのかこの章ではCSの誕生、そしてそれがどんな仕事なのか、導入する意義とメリットは何か、ということについて言及されている。

本章のタイトルである、“CSって何?“と“なぜそれは凄いの?”という2つを説明すると以下の通りである。

CSって何?      ⇨ 企業の根底を流れる精神そのもの。
          具体的にいうと、
リテンション率を上げチャーン率
          下げ、顧客の成長をドライブさせることを目標とする   
          職業。

なぜそれは凄いの?⇨ 顧客が自分にしかない経験だったり価値を創造する
          上で必要な競争優位性を持っているから。

普段、私はインサイドセールス(以下、IS)として活動している。
離脱する顧客を上回る数の顧客を獲得し続けるのは必勝戦略ではない」dであったり、「CSに投資して既存顧客との取引を拡大させる方が新規顧客を獲得するよりもコスパが良い」という考え方に対して親近感を感じた。
ISはデマンドジェネレーションの過程で、限りあるリードを如何にマネジメントできるかが重要である。勿論、新規顧客の獲得も重要ではある。が、“今あるリソースを十分に使っていこう“という発想がインサイドセールスに近いと感じる。


● 第2章:優れたカスタマーサクセスマネジャーの必須スキル
この章では“CSを任される部門のトップがどのようなスキル身に付けるべきか“ということついて言及されている。

必須スキルとしてコアコンピテンシーが挙げられている。
“カスタマーサクセスマネージャーに求められるコアコンピテンシー”は以下の3つ。

①知識レベルの高さ
②課題解決能力
③カスタマーとの関係構築

①知識レベルの高さ②課題解決能力はポータブルスキルで、CSだけでなくどのような職種にも必要とされ、かつ重要視される考え方である。
一方で、③カスタマーとの関係構築はCS独自であるなと感じた。“ヒューマンファースト“な思考のもとに成り立つ職種ならではといった感じがする。そのヒューマンファーストな考えを持ち続けるため、内省を重ね自己認識を高める必要がある。つまり、「何かあるたびにガンガン振り返りをして自分と向き合い、客観視できるメタ認知力を上げる」と私は解釈している。自分と向き合い、客観視する力を向上させることでしかヒューマンファーストという概念を習得することができず、CSのコアコンピテンシーである③カスタマーとの関係構築も習得でき何のではと考える。


 第3章:カスタマーサクセスの実践
この章ではカスタマーサクセスの実践について言及されている。
また、本章はpp.100-228に渡って構成されており、本書籍の中で筆者が最も力を入れたところなのだろう。
「自分はCSではないし実務的なところはとばそう」と考えている方がいれば損をしてしまう可能性が高い。軽くでも良いので読んだ方が良い。

さて、以下3つの言葉は同義語として世の中に認知されている。だがしかし、実際には若干の違いがあって、CSを語る上では定義を明確にする必要がある。

・カスタマーライフサイクル
・ジャーニーマップ
・カスタマージャーニー


カスターマーライフサイクル
特定のカスタマーのマネジメントプロセス全体を意味する。プロセスは全部で6つ。 ※どれもそのままの意味なので説明は省く

①検討または評価
②契約締結
③オンボーディング
④アダプション
⑤契約更新、拡張
⑥チャーン


・ジャーニーマップ
CSが成し遂げたい目標までのマイルストーンで構成されたマップを意味する。このマップはカスタマーライフサイクルの各フェーズで用意する。
カスタマーライフサイクルで作成したマネジメントプロセスの各所にマイルストーンを設置、するとジャーニーマップの完成である。
また、マイルストーンを設置する上でカスタマーとの関係を管理が必要であり、そのためのカスタマーデータは重要である。そして、カスタマーデータを上手く活用するためにカスタマーセグメンテーションを取り入れるべきだと本書籍では主張されている。

セグメンテーションの項目は以下の5つである。

契約金額:シンプル。しかし、これを重視しすぎると、CSに求められる
      ヒューマンファーストの精神に反する。
規模  :単に事業規模だけでなく今後のポテンシャルも加味した上
      での規模である。(現状大きくても斜陽産業であれば減点
      対象となる、など)
業界  :テックカンパニーであれば尚よし。
ブランド:文字通りブランド。仮に自社で取り入れるとするなら
      優先順位は低くなりそうである。
推薦  :他社企業を紹介してくれる可能性があるか否か。

・カスタマージャーニー
作成したカスタマーライフサイクルやジャーニーマップをもとにして実際のカスタマーを当てはめていく作業を意味する。

では実際にどう動かしていくのか?
本書では以下の順に進めていくと述べられている。

①営業チームからオンボーディングチームへ引き継ぎ
②初コンタクト / ウェルカム
③オンボーディングに向けたキックオフ
④実装またはサービスイン
⑤経営層との連携

⑥ヘルススコアを活用してカスタマーの管理
⑦ツール導入でカスタマーをより理解する
⑧アダプションマネジメントがうまくいっているか確認する


● 第4章:優れたカスタマーサクセスマネジャーを育成し、流出を防ぐ

この章ではCS責任者の育成と離職を防ぐことについて言及されている。
これまでは顧客を成功へと導く(離脱させないようにする)話だったが、今回は身内(チームメンバー)を成功へと導く(離脱させないようにする)話。これからCS部署を作ろうとしている企業に必要であろう章であった。

CS責任者の育成と流出を防ぐために必要なことは以下の2つ。

①CSチームの運営を丁寧に行う
②CSでのキャリアパスを作る

①CSチームの運営を丁寧に行う
重要なことは以下の3つ。
 ①-1. 業務量、担当企業のカバー率を管理
 ①-2. インセンティブ制度の設計
 ①-3. レポートとダッシュボードの活用

“①-2. インセンティブ制度の設計”をCSマネージャーが行うには少し難易度が高い。経営層に任せ、CS責任者は①-1と①-2を行う必要がある。


②CSでのキャリアパスを作る
重要なことは以下の5つ。
②-1. CSそのもののを定義
②-2. 仕事内容のレベルを定義
②-3. 各仕事に必要なスキルを定義
②-4. スキルのマッピング
②-5. ロールアウト(運用開始)する



4, Appendix

「あれ、この本、“カスタマー“って書かれて部分を“リード“に置き換えたらインサイドセールスの話になるんじゃね?」と、読んでいて何度も思った。唯一違うのは“アダプションマネジメント“に関するところかと。

また、翻訳が微妙でストレスだった。自分の拙い和訳に苦しんだ高校時代の英語、大学時代のフランス語を思い出した笑


次回は『本物のデータ分析が身につく本』に関してnote投稿したい。


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