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お一人様のお隣さん

うちの団地の私が住む階は「お一人様」のおばさまが多い。
家族世帯はうちを入れて三軒だけ。四名のお一人様がいらっしゃる。

生前母が特に気にしていたのは、お隣のおばあさん。
娘と息子二人居るのだか、殆ど家には来ない。

今日、たまたま下に救急車と消防車、ミニパトが来たので、何だ?ウチの棟か?とベランダに出ていたらお隣さんも出てきて、久し振りやねー、と声をかけてくださった。
母とはよくベランダで立ち話をして、ベランダで育てている植物の話や色々お喋りしていた。

母が亡くなってから初めて会った。もう一年経ちますと話すと
「お母さん、本当に大好きだったのよ。陰で悪口とか言わないし、とても良い人だったわね。」
と。ご近所のオバサン達は他人の家の悪口や家庭環境をグチグチ話のネタとして喋る人が居て、人の良いおばあさんは良く聞かされていた。

そんな人達に怒鳴り付けたのは母だった。
うちの母は喧嘩上等な人だったのと(暴力ではない)面と向かって文句を言うのを躊躇わない人だった。まぁ、耐えられないのもあったと思うけれど。

そんな母が寝込むようになってから、ベランダにも出られなくなって一番気にしていたのがお隣さんだ。

「最近お隣さん静かやけど、居てはるんかな?元気なんかな?」
と、良く言っていた。その度に私はベランダへ出て、お隣のベランダをチラッと覗いて洗濯物が干してあったりすると、私もホッとしていた。
「お隣、洗濯物干してあったから居てはるよ。」
「そっか、お家に居てはるんやね。良かった。」
自分の身を、状況を鑑みずお隣の心配をするのが私の母だ。

その話を今日、初めてお隣さんに伝えた。
「お母さんが私の事を?ほんとに?嬉しいわぁ…」
と言って、少し涙ぐんでいらした。

お歳は今年で89歳。独り暮らしとなると流石に不安にもなるよね。

私も母の血を継いでいる人間なので、やはり心配になる。
またお隣さんに話しかけようと思った。

長屋のような、そんな付き合いも悪くない。

たまにお喋りオバサンに遭遇すると厄介ですけどね。

こんな奴にでも小銭を投げつけていただければ幸いです。 頂いたお金は全て愛猫のご飯代、トイレの砂代になります。何卒宜しくお願い致します。