本音

それで、私たちって、一体どういう関係だったんだろうね?
偶にこうして会って。近況報告とか、趣味の話とか、そんな他愛もない話をして、それで終わり。
この喫茶店でよく会う。店員さんにも覚えられたかもしれない。
意外と、意外と?学校の中では会わない、大学なんて人でごった返してるんだから仕方ないけれど。
一度見かけたことがあったけれど、数人で仲良く歩いてて、普通の、ごく普通の男子大学生って感じで、そりゃそうなんだけど、何でか複雑な気分になった。良くも悪くも、ちゃんと友達がいるんだな、なんて。
私は特に仲良くしてる人はいなくて、だるいからサークルも入らなくて、何のために大学に、まあ社会人になりたくなかったからだけど。
そもそもどういうきっかけだったっけか。それももうハッキリしてない。
珍しく喫茶店じゃなく居酒屋に入って、私は軽く酔って、ネガティブなことばかり言ってごめん。貴方は、私を慰めてくれて、そのままでいい、十分素敵だ、なんて、素敵なことを沢山言ってくれてありがとう。でも、何だろ、私が本当に欲しかったのは、そういう言葉たちじゃなかった。本当は、本当は、……何だろうか。何が欲しかったんだろうか。
考えても、上手く言語化が出来ない。
今日は、お昼にたらこスパを食べた。実はあまり好きではない。だけど、何か、たらこスパ。が目に入ったから。
好きな食べ物は?というこの世で一番つまらない話をした時に、貴方が言った、たらこスパ。何で覚えてるんだろうか。
この間会ったのが、結局最後だった訳だ。もう、私たちは離れる、もう学生ではなくなる、でもまだ大人になったつもりはない。最後まで大した話はしなかった。じゃあ、またいつか。って、絶対そのいつかは訪れないことは分かっている。私たちは、別々の社会を生き、貴方は良い人だから、良い人に出会って、幸せな暮らしを送るんだろう。
私たちは、最後まで大した話はしなかったし、いつも通りの別れ方をした。いつも通り。
本当は、この後"何か"が起こればいいな、って、ちょっとだけ期待してしまっていた。本当は。

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