コンビニ
外はうだるように暑い。
しかし、店内は冷房が効きすぎているようで、寧ろ寒いくらいだった。
調節したいけれど、どこにボタンがあるのか教えてもらっていない。
「450円になりまーす。」
初めから、やる気など無い。ただお金を稼ぐためだけだから。
丁寧な接客などする必要は無い。別に、そんなことしたところで給料が上がるわけでもない。
客に不快に思われたって、どうせ私には関係の無い人だ。
こんなド深夜にも、客は来る。
本当にやめてほしい。売り上げが上がろうと下がろうと、私には関係ないんだし。
だったら、ちょっとでも楽がしたい。給料が同じなんだから、楽した方が得でしょう。
ああ、あと2時間。長い。早く帰りたい…。
そんなことを思っていると、一人の客が入ってきた。
めんどくさ…。
その瞬間。
「おい!手を挙げろ。」
…え?
私は、とりあえず男の言う通りにした。
…まじかよ。
……コンビニ強盗って本当にいるんだ。
私は意外にも冷静だった。
男は、ナイフを私に突きつけながら、
「おい、この鞄に、あるだけの金を詰めろ。早くしろ!」
バサッと、黒い大きな鞄を置く。
だる…。
そう思った私は、物怖じせずに、男に言った。
「…何でここなんすか。もっと金あるとこあるでしょ。こんなところでちまちまやるんだったら、一発ドカンと銀行強盗くらいやったらどうです。ここまでやっといて、そんな度胸無いんですか。」
「……は?…お前、舐めてんのか?ぶっ殺すぞ!」
男は、明らかに動揺していた。あまりにも予想外の返答だったからだろう。小心者。
「別に、殺したかったら、お好きにどうぞ。さあ。」
私は、決して男を挑発するために言ったのではない。
実際、もう死んでもいい、って思ったから。
生きてても面白くないし、さっさと死にたい、とは前から考えてはいた。
ここに来て、思わぬチャンスがやってきたのだ。
自殺より、よっぽど後味がいい。
男は、顔を真っ赤にした。
男にとって、全てが予想外だったのだろう。
滑稽だ。
「う、うわああああああああ!!!」
男は奇声をあげながら、ナイフを振り下ろす。
“ちょっと、味濃くなったかも。どう?味見してみて”
“いや、丁度いいよ、ほんとおばあちゃんの料理大好きだわ~”
“タイムカプセル。10年後、取りに来ようね”
“大学?無理よ。うちにはそんなお金無いんだから。さっさと働いて、お母さんを楽にしてちょうだい。”
……
……うお、
走馬灯って、本当によぎるもんなんだ。都市伝説かと思ってた。
あー、タイムカプセル。どこだっけ。……あと2年後?くらい?
ごめん、一人で掘り返しといてー。
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