【読書感想】古野俊幸さんの『あなたの知らないあなたの強み』を読んで
はじめに
初めて書店で見つけた時からずっと読みたいと思っていた本だった。買いたいと思いはじめてから買うまでにずいぶん時間がかかってしまった。
でも、本というのはときどきびっくりするほど「今の自分の悩みを知ってたんじゃないの?」って思うようなタイミングで救いの言葉をくれたりする。
今、読むことができてよかった。
これも出会いだ。一期一会に感謝しなくちゃ。
宇宙兄弟との出会い
この本は宇宙兄弟と古野さんが展開されているFFS理論というのをベースに論じられているので、まずわたしと宇宙兄弟の出会いを語らせてもらうことにする。
宇宙兄弟との出会いは恩師から漫画をもらったことだった。大学時代本当にお世話になった恩師はたくさん本を読んでいて、漫画も例外ではなかった。
その恩師が栄転するとき、本をどっさりくれた。
それはもうどっさり。
医療関係の本って高いからありがたかった。恩師も引っ越しの手間が省けただろう、いわゆるwinwinというやつである。
その中に宇宙兄弟は紛れていた。
わたしにとってはハンバーグについてくる付け合わせのような感じだったけれど、恩師は「苦しい時にいつもこの漫画に救われていたから、君に」と言ってくれて託してくれた。
宇宙兄弟を読んでみて、面白いんだけれど、なんでだか何度も読む気にはなれなかった。
恩師の思いを汲み取りきれず、わたしって失礼なやつだなぁと思いつつ、なんとなく惰性で新刊が出たら買っていた。
なんでだろうと当時を振り返ってみると、
読んでいて少しつらかったからだなと今では思う。
つらかったことは2つ。
ひとつ目は主人公である南波六太(ナンバムッタ)の人間味ありすぎる姿が、あまりに自分と重なってなんだか見るに堪えなかったこと。
だって彼はコンプレックスの塊だ。
弟の日々人(ヒビト)が宇宙飛行士として名声を浴びる中で、自分は無職。
目を背けたくなるほどに劣等感やら虚栄心やら、人間のちょっと弱い部分が丸見えすぎる。自分のコンプレックス集再放送を鼻先に突きつけられて、のたうち回りたくなる。そんな感じで六太の姿を笑いに変えきれず、なんだか重く受け止めちゃって苦しくなるわたしだった。
そして2つ目は、宇宙飛行士になるために競い合っているときの心情がリアルに描かれていること。
書類選考に受かった六太はJAXA(宇宙航空研究開発機構)で更に試験を受けていく。
誰にでもなれる仕事ではない。
リアルな合格率は1%未満だと言う。
でも、みんな宇宙飛行士になりたい。
クセ強の受験者たちばかりで、それぞれ想いの起源は違うけれど、みんな宇宙飛行士になりたくて、数少ない椅子を争う。その想いはテストの点では測りきれないはずなのだ。それぞれのドラマを胸に秘めて、試験に挑んでいる。
もうその空気感というか、みんなに受かってほしいよ〜〜!という思いがありすぎて、なんというか、読むのがつらかった。
そうだ、昔から競争があんまり好きではないのだと、これを書いていて気づいた。
90点以上だったら合格!みたいな絶対評価の試験は好きだけれど、相対評価の試験は怖い。自分が受かるということは、誰かを蹴落とすということだから。
みんながんばったね!ではだめだなんてつらい。この夢に人生の大事な部分を託している人もいるのだと思うとヒヤヒヤが止まらない。みんな選ばれてほしい。ただこれも人生なのだ、と痛感させられる。
しかも受験者同士が関わり合ったのちに競わすなんて。相手がいい人だったとしても嫌な人だったとしても地獄じゃないか、と思ってしまう。
感情移入が激しいわたしは、登場人物みんなの気持ちに洗濯機のごとくぶん回されて、読み終わった後にはしわくちゃのTシャツよろしく消耗した気持ちになってしまっていた。
宇宙兄弟では、主人公の六太だけでなくみんなのドラマをわたしたちに見せるように、回想シーンもしっかりと語ってくれる。
やめてよ、感情移入しちゃうだろ。
読んじゃうけど。
箱根駅伝のダイジェストだけで泣けちゃうわたしには大ダメージなのだった。
だから家にはあるけど、読むのにはパワーが必要で、そこまでお気に入りの本ではなかったというのが最初の思いだったのだ。
『あなたの知らないあなたの強み』を読んで
実は去年引っ越しをしたときに、どうしても40巻近くある宇宙兄弟を置く場所が取れなくて、フリマアプリで売ってしまった。
ごめん恩師。
1万円以上になった。
ありがとう恩師。
今は手放してしまったことを後悔している。宇宙兄弟は、あまり繰り返し読みたくない本から、手元に置いておきたい漫画に立ち位置を変えた。
変えてくれたのが『あなたの知らないあなたの強み』である。
FFS理論とは
古野さんが語るFFS理論とは、
環境や刺激に対する捉え方は人それぞれ違っている。たとえば同じ広さの部屋にいても、広々として心地よいと感じる人もいれば広すぎて不安だとストレスに感じる人もいる。
その捉え方の特性を5つの因子として計量化したもの、それがFFS理論だ。
自分の個性に影響を与えているものが何なのか知ることで、自己理解やコミュニケーションがしやすくなる。
FFS理論には5つの特性がある。
拡散性、保全性、受容性、凝縮性、弁別性。
その5つの因子をどのようなバランスで持っているかを、宇宙兄弟の個性的なキャラクターたちに当てはめて解説しているのだ。
本を買うと簡易版のweb診断がついてくるので是非やってみてほしい。
ちなみにわたしは北村絵名タイプだった。
マイナーらしい。全体の4%くらい。
保全性、受容性が高いタイプ。
読み進めていって、受容性の高いタイプは決断が苦手だと書かれていた。
みんなの意見をまとめるときに、誰かの意見を採用して、誰かの意見を否定することが苦手。
それそれ!!って思った。
まさにそれだ。前述した通り、誰かが勝って、誰かが負けるみたいなのが大の苦手なのだ。(スポーツは大丈夫なんだけど…)
だからマルバツみたいな二元論的な考え方ができなくていつも苦しんでいる。
営業のときもそうだ。相手がこう言ってるのに、わたしの意見を推し進めたら、それは相手を否定することになるんじゃないか?なんて思っては言葉にパワーがなくなっていってしまう。みんなにとっていい、が見つけられなかったとき、果てしなく落ち込んでしまう。
みんなそれぞれに良さがあるのに、ひとつになんて決めれないよ…とヒシヒシと思い、シクシクと泣いている。正解は人の数だけあるのに、わたしの正解を押しつけるのは是とされるんだろうか??って思っちゃって、最終的には相手の意見を尊重しすぎていつも商談は決まらずに終わるのだ。
決められないなら、一緒に導いていけばいいのにね。
バシーって決められなくてもいい。
ギョッとするようなプレゼンで相手を驚かせなくてもいい。
先導して猛ダッシュしなくても、引っ張らなくても、後ろから蹴り上げなくてもいい。
わたしが相手の横を歩みたいなら、歩めばいいのだ。
ガツガツした営業になりきれない自分を責める気持ちを、ふわっと救ってくれる考え方だった。
要するに、だ。
自分でいいのだ。
自分じゃない誰かじゃなくて、自分にしかできないことがあるのだ。なれもしない誰かになれなくて落ち込むなんて、わたしに失礼だ。わたしは精一杯わたしをやればいいのだ。わたしみたいになりたい人がいるかもしれないしね。
みんなが美点と欠点を持ち合わせているパズルのピースで、それをはまるかな?どうかなって合わせようとする作業がコミュニケーションなんじゃないかって思う。
隣同士にははまらなくても、2〜3ピース介してつながることもある。あるべき場所におさまるってこと。
自分というピースの出っぱりと、引っ込んだ部分を知ることができてとても嬉しい。
ピースの形を変えようとしなくていいのだ。はまる場所が絶対にあるから、それを見つけていくだけ。人生はきっとその作業の繰り返しなのだ。
おわりに
わたしの潜在意識が血眼になって宇宙兄弟を探しているみたいで、この本を読んでからというもの宇宙兄弟に関する書籍が目に入るようになった。どうやらチーム論について論じられているものが多いみたいだ。
日本なんて終わってるとか、アメリカの方がいいよねとかって思っちゃうこともたくさんあるし、そんな言葉を口に出したくなるほど未来に不安を感じているのが現状だ。
だけど自分が日本人であることまで否定しなくってもいいのだ。六太ような日本人らしく人間らしい弱いところ、それを丸ごと愛してもいいのだと感じた。なれない自分になろうとしなくてもいいのだ。
この本は、自分が自分であることを否定せず、夢を追いかける勇気をくれる本でした。
あーほんとありがたい出会いだった。
これだから読書っていい。
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